教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

本当にあった日本の技術力の空洞化

2017-01-18 22:27:16 | 科学
「製造業の空洞化がおきている」。
これは80年代から言われており、いまさらあえて言うようなことではない。
もはやこれは日本ではなく中国で発生している問題でしかない。

ただ昨今では、ビミョーにニュアンスが違う似たようなことが言われている。
「製造業の空洞化により製造ラインが日本国内からなくなることにより、モノ作りの現場の技術力が低下している」
という説だ。

これはどうなのか?

わたしは9割がた無関係なことだと思っていた。

なぜか?

科学が進歩すれば、どんどんオートメーションで製造できる範囲が広がるし、それによって工場からライン工が減るのは当然だ。
家内制手工業においてのモノ作りの現場のノウハウは忘れ去られても問題ないケースはどんどん増えている。

たとえば、真空管を製造する際のグリッドを巻き付ける自動巻線機の使いかたのノウハウなど、いまや日本では誰も必要としていない。
SAWフィルタが実用化されたいま、体積100倍でしかも調整を必要とするヘリカルフィルタの需要は30年前の1/1000にも満たないだろうし、その調整ノウハウがどれだけ役に立つかという話になってくる。
つまりそういうことだ。

製造業の空洞化と、技術力の低下は、たいがいは無関係である。
いやむしろ、ライン工がほとんどいなくなり、ライン工の人件費のほとんど発生しない、完全自動化工場が日本に帰ってくるときがきつつあるのだ。

…そう思っていた。

しかし!
大変残念ながらそうではなかったのだ!!



うちの会社にLSIの設計部隊がいる。
だがうちのうちの会社でLSIを製造しているわけではないので、バックエンド設計は他の得意な会社にアウトソースしている。

このバックエンド設計を投げた会社は、かつては自前で半導体を製造していたというどころか、トップグループにいたところ同士が合併してできたシステムLSI専業メーカーで、それだけ見ればドリームチームと言いたいようなところである。
だが今は自前で半導体を製造してはいない。
ルネサスではない。これだけ言ってしまうとわかる人にはわかってしまうと思うけど。

かつて10年前のまだ半導体工場を自前で持っていたころ、バックエンド設計を投げた向こうの担当者と話をすると、
「こんなレイアウトで〇〇まで性能出るわけねえだろ! せいぜい〇〇がいいところだ! こうやんだよ、よく見てろ!」
なんて、めっちゃふてぶてしいが腕利きの玄人衆がいて、めっちゃ頼りにしていたようだ。

しかしだな。
今は違うらしいのだ。

同様に担当者にいま話をしにいくと、
「それ、レイアウトしにくいからしたくないんですが…」
としか言わないらしい。
ここのレイアウトを変更するとどういうふうに性能が変わるから絶対ダメだと言っても、それを理解する知識がない。
どうやら高卒採用でツールの使い方だけ叩きこまれて仕事しているだけの派遣らしく、こちらの言ったことをそのまま言ったとおりに実行させる以外にLSI設計を任せられる状況ではないらしい。
もう次は頼むのをやめようかと言っている。

これがトップグループにいたところ同士が合併してできたシステムLSI専業メーカーのドリームチームの末路だよ!?



そしてうちの会社でもこれは同じことがおきていた。

わたしはときどきプリント基板を設計していて、うちの会社はバックエンド設計を専門部隊に任せている。
そしてそこには、むかしは
「この部品配置はうちの会社の設計ルールに違反するけど、うちのあのマウンタなら実装できるから問題ない」
と製造装置の性能まで見切ってやってくれる超有能なヤツとか、
「ここは高周波のパターンですから、こっちのパターンは避けておきました」
とエンジニアのミスを勝手に修正してくれる超有能なヤツとか、
「回路図を見たらこの部分が心配なんですが、本当にこれでいいんですか?」
と我々研究開発チームのやってることにまで踏み込んでくる超有能なヤツとかいたものだ。

だが、もうそんなヤツはほとんどいない。
高卒採用でツールの使い方だけ叩きこまれて仕事しているだけの派遣だ。
「うちの課のルールですから」
としか言わない。
なるべく自分たちの裁量が発生しないように、なるべく自分たちに責任がかぶらないように、なるべく言われたとおりにしか仕事をしないようにしている。
残念ながら外注のほうが頼りになるのだが、さらに残念ながら社内事情でそうもいかないという。
いまではこの部署に良い印象を持っているエンジニアを社内で見たことがないほどにまでなっている。

なぜこうなったのかという分析は難しいが、何度か来た不況のたびに非線形に状況が変化したことだけは間違いない。



かつて高い人件費で雇っていた超有能なヤツらは今どこに勤めているのだろう。
なぜいま日本のメーカーは新興国に押されているのだろうね…。