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ヒルビリー・エレジー―アメリカの繁栄から取り残された白人たち
ヴァンス,J.D.【著】〈Vance,J.D.〉/関根 光宏/山田 文【訳】
価格 ¥1,944(本体¥1,800)
光文社(2017/03発売)
ヒルビリー・エレジーとは、直訳すると(アメリカの)田舎者の哀歌となるようだ。
この本のオビには
> トランプを冗談候補としてあざ笑っていた政治のプロたちは、彼が予備選に勝ちそうになってようやく慌てた。都市部のインテリとしか付き合いがない彼らには、地方の白人労働者の怒りや不信感が見えていなかったからだ。そんな彼らが読み始めたのが、本書『ヒルビリー・エレジー(田舎者の哀歌)だ。』
とある。
つまりこの本は、トランプを当選させた人たちの日常について書かれたものだ。
・・・という触れ込みだが。
しかし!
わたしはこれを実際に読んでみて、別のものをそこに見た。
それは何か?
わたしの地元に近いものをそこに見たと言いたい。
もちろんわたしの地元では、いくらなんでもこの本にあるようなヤク中やアル中がそこいらに必ずいるような状況にはない。
だが似ている。
どこぞの大企業が建てた大工場と運命共同体のバナナ共和国な地方自治体。
バブル以降全く変化のない、日本の製造業の終わりの始まりとともに始まっていたゆっくりとした長期的衰退。
東京でやっていることは俺たちには関係ないという断絶感。
人生において成功や金持ちを夢見ることは不道徳であり、与えられた小さな幸せに感謝すべきという、イケてない現在を無理やり自己肯定しようとする宗教観にすがり、自分で何とかしようとする気概の全くない教育。
政府が何とかしてくれる。してくれなかったら政府が悪い。
読んだ人ならわかるだろう。
ヤク中がいるかどうかという細部は全く異なるが、そこにあるヒルビリーのエレジーという全体像はわたしが見たものと同じなのだ。
この本の作者のJ.D.バロンス氏は地元への愛着を文に記している。
それが本音なのか、それともポリティカルコレクトによるものなのか、それはわからない。
だが少なくともわたしには地元への愛着などない。
そこだけは全く違う。
しかし、大学で地元を脱出できていなかったら今ある生活水準は絶対維持できていないと心底思っていることは共有する。
もしあなたがこれを読んで
「アメリカの田舎ってすごいところなんだと衝撃を受けました」
というのであれば、あなたは子供時代を恵まれた環境で過ごしたのであろう。
アメリカであればカリフォルニアやニューヨークのようなヒラリーが圧勝した地域に住んでいる人たちに近いであろう。
だがこれはアメリカの田舎に限定された話ではない。
オビには
> トランプ支持者の実態
> アメリカ分断の真相
などと書いてあるが、人によっては実態や真相などと大仰に書くような内容ではなかったということだ。
まあ少なくともわたしには、これがベストセラーとか意味わからんという話である。