そろそろDVDを返しに行こうと
レシートを見たら
返却期限がとっくに過ぎてた。
「しまった!!」
思わずDVDのケースを押入れに隠した。
するとカッパさんが
「今日あたりDVDを返しに行こうか」と言った。
ギクッ!!
カッパさんはアスピーなので
DVDの返却期限を過ぎて延滞金を払うなど
この世にあってはならない恥辱行為だと信じている。
カッパさんはそう言う過ちを犯すと、
ものすごく傷ついて落ち込んでしまうのだ。
立ち直るのに1週間はかかる。
メンタルの弱さ、ハンパねぇ。
この延滞事件が発覚したら
私はここ2,3日はなじられ続けるだろう。
もう、おそろしいおそろしい・・・。
もちろん、私だけの責任ではない。
なんせレンタルDVDの店は車で10分ほど距離がある。
カッパさんの運転で一緒にDVDを借りに行ったのだから、
連帯責任のはずだ。
しかし、こういう管理は私の仕事だと
カッパさんは決め付けている。
以前もうっかり1日過ぎてDVDを返却したときは
私に色んな罰則を与えた。
例えば、当分友人と会うこと禁止とかね。
ひどいよね?
また今回もイザベラちゃんとの食事会を
中止させられたらどうしよう・・・。
隠蔽することにした。
「DVD、散歩の途中で返しとくわ」と私は言った。
確かに遠いけど、歩いていけるかもしれない。
「えーーーあそこまでーー?めっちゃ遠いぞ?」
うん、めっちゃ遠いね。
「車で行こうやー」とカッパさんが言う。
「じゃあ、さっと自転車で行ってくるわ」
「いや、車で10分やからさっと行って返してこ」
今日はやけに親切だ。
「帰りにどっかでお昼食べよ♪」カッパさんが提案する。
ますます、怪しい状況になってきた。
私は苦し紛れにこう言った。
「じゃあさ、今日もDVD借りていい?」
カッパさんは
「う・・・ん、また借りるの?」と渋る。
「あ、そういえばカッパさんの観たがってたヤツ、
準新作で一週間借りられるよ」と適当なエサで釣ってみた。
そもそも観たがっていたDVDなど知らん。
「えーーー♪ほんま?」
どうやら、喰いついてくれたらしい。
さてレンタルDVDに着いた。
店を入るとすぐ返却ボックスが口を開けて待っている。
ここに放り込むのを、カッパさんが見ている。
私は携帯が鳴った振りをして、足を止めた。
カッパさんに店の奥を入るよう、手振りした。
鳴っていない携帯に出て、喋る振りをする。
カッパさんが受付そばのアニメのDVDの棚に見入っている。
なぜ、奥の棚に進まない!?
イライラしながらも目でカッパさんを追う。
ようやくカッパが奥に消えた。
私はすぐさま受付に走りよって
延滞料金を払おうとした。
すると店員が
「延滞2点で、料金が480円になります!!」
とでかい声で叫びやがった!
ひええーーーー!!
カッパに聞こえるではないか!!!
投げるようにお金を払い、
小走りで奥の棚にすべりみ
「ずっとここにいましたけど」ってなテイをよそおった。
任務完了。
とうとう秘密の工作をやり遂げた。
すごい達成感だ!!
きっと脳みそ汗かいてる。
そしてカッパさんが嬉しそうに
内容の薄そうなB級冒険活劇DVDを2枚、
「これ、借りよっかな♪」
と持ってきた。
いつもの私なら難癖つけて却下するのだが、
今回は違う。
「いいよ、借りなよー」と答えた。
「フクちゃんも観るよね?」
「うん・・観る観る」
「じゃあ帰って一緒に観よう」
家に帰って、
全く面白くないDVDを2枚、
観させられた。
拷問だった。
これが隠蔽工作の代償か・・・。
工作員も大変だな。
でも、なってやってもいいかな
と思ったりもした。
とにかくドキドキハラハラ、
刺激的な1日だった。