山岳ガイド赤沼千史のブログ

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BSTBS日本の名峰シリーズ甲武信岳放映です。

2014年01月10日 | テレビ出演

昨年11月末にロケが行われた、甲武信岳がいよいよ明日、

1月11日(土)午後9時~

放映です。今回は甲武信小屋の小屋締めに密着する2時間スペシャル。オーナーの徳さんと一緒に徳ちゃん新道を登り、小屋締めのお手伝いを・・・・・・・いや、邪魔しに行ったようなものだけど、支配人の北爪君も良く付き合ってくれました。北爪君とぼくのブルースセッションもちこっとフィーチャーとの噂です。他のお客さんがいないことを良いことに、夜中の1時まで大騒ぎしてしまいましたからね。

是非ご覧ください。

BSTBS「日本の名峰絶景探訪シリーズ 甲武信岳」

 

BSTBS 日本の名峰シリーズ 甲武信岳ぶろぐ



元気をだして

2014年01月10日 | 雑感

 1月8日に下北沢のライブハウスlown(ラウン)にて、東欧系のジプシー音楽を奏でるカツラマズルカとのライブを終えた後、ぼくはひとり小手指の友人N宅に泊まらせてもらった。その友人とは翌日一緒に共通の友人に会う事になっていたのだ。その「共通の友人」とは、ぼくの山のお客さんで、ぼくのツアーに何度も参加して下さっていた方だが、彼女は今、重い病気を患っている。だから一時退院中にお見舞いを兼ねて、お茶でも飲もうと言うことになった。

 僕らは東京駅の南口ドーム下で待ち合わせた。新装されから初めて行った東京駅は、古い物を上手く使って、とてもシックでモダンな佇まいだった。周りがオフィス街だから、待ち合わせの10時頃には意外に行き交う人も少なく、新宿や渋谷なんかとは全く別な落ち着いた雰囲気の場所なんだと感ずる。

 少し遅れてそこに現れた彼女は、幾分痩せたように見えたが、思いの外元気そうだった。思わず笑顔がこぼれる。お目にかかるのは若しかしたら2年ぶりぐらいかも知れない。

 目の前の道を渡って、向かいのビルの喫茶店に入る。いかにもビジネスマンが好みそうなカチッとした店内は天井が高く落ち着いた雰囲気の店で、客も僕らの他は数人だったから、ゆっくりと話ができた。病気のこと、入院の事、そして一緒に行った山のこと。今、彼女が夢中になって居る事、そして、これからのこと。いろんな事を話した。病気なのだから、実は具合が悪かったのだとは思うが、たわいもない話に微笑む彼女の笑顔がとても可愛らしかった。

 

 ぼくは、山岳ガイドという仕事を得て、沢山のお客さんと出会う事が出来た。本来のぼくは、山岳ガイドなどという社交性を必要とする商売など全く向かないタイプの人間だと思うのだが、ツアーのガイドだけでなくて、公募ツアーを企画してからは、ただのお客さんと言うよりは、もっと親密な関係の中で仕事をさせてもらっている様な気がするのだ。他の職種や、この世界の様々な人がどんな気持ちで自分とは別の人達と関わって居るのかは解るわけも無いし、僕らの世界が特別だとかでもないのだが、山は人と人の心をいつの間にか深く繋ぐ場であると、ずっとぼくは思っているのだ。古くからの山の友人は切っても切れない関係にある。何人かの山の友人達は、いつも繋いだザイルの先にいて、そこで何が起ころうと、そのザイルを切ったりはしない。・・・・・・・そんな風に感じさせる友人達がぼくには何人か居る。そして、そんな友人達に負けるものか!とも思うのだ。

 それは、共に辛く危険な山を乗り越え、同じ釜の飯を食べてきたからそうなるのだろうし、山が見せてくれる美しいもの達や、風や雨や雪が僕らの心の扉をいつしか開いてくれて、素の自分のままで周りと関わりを持つ事になるからなのだと思う。そうなることが、全く自然に、いつの間にか・・・・・・そうなる。それが山の魔法である。

 

 二時間ほど四方山話に花を咲かせて、ぼくが信州へ帰らなければならない時間になってしまった。再び三人で道を渡って、南口ドームへ着いた別れ際、ぼくはたまらず彼女を抱きしめていた。友人Nも。頑張ってね!と、応援しているからね!と、そんな気持ちを込めて、彼女をギュッと抱きしめた。彼女も華奢な体で精一杯ぼくを抱きしめてくれた。その時彼女の強さも弱さも、優しさもしっかりとぼくに伝わって来たのだ。それがガイドとお客さんと言う関係であっても、僕らは確かに友人として、繋がって居たのだとぼくはこの時初めて気づいた。僕らは既に山の魔法に掛かっていたのだ。

 新宿から特急あずさに乗って松本に向かう。甲府辺りまでは青空が広がっていたが、南アルプスが見える頃から山には特有の輪郭のぼやけた雪雲がかかり、小淵沢辺りからは車窓の外は雪が降り始めていた。この日一面雪景色となった松本の街も山も、目に染みるように美しかった。

Nんちの らんちゃん