山岳ガイド赤沼千史のブログ

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冬晴れの安曇野界隈

2014年01月18日 | 安曇野の暮らし

 

 安曇野を離れ、東京や大阪な雪の降らない地域へ行った時、そこで出会った人達に安曇野は雪が沢山降るんでしょ?と良く聞かれる。今どのぐらい積もってますか?とか。でも実際の安曇野は、そんなに雪が降る地域ではない。長野県イコール雪国というのは誤解で、北部は確かに豪雪地帯を抱えるが、中部から南部は意外と雪の量は少ないのだ。僕の住む安曇野市有明界隈は現在の積雪は数センチだ。我が家から大糸線沿いに北へ三十キロほど行くと、そこは白馬村や小谷村だが、雪の量は極端に多くなる。

 頭の中に北アルプス周辺の地図を思い浮かべてほしい。白馬村の西側には後立山連峰や白馬三山が連なっているがそのさらに西には高い山は見あたらない。そして、富山湾から北へ斜上する海岸線はぐっと北アルプスに近づいている。要するに白馬の裏側には、すぐそこに日本海は広がって居る。だから、海を渡ってきた冬の季節風がまともにぶち当たるから、降雪がハンパ無く多いのだ。

 それに対して、安曇野の西側を辿っていくと、前山である常念山脈の西側には、槍穂高連峰や裏銀座の山々がどんと連なり、さらにその西側に黒部五郎や北ノ股岳などが控えている。そして、そのさらに西側には低山といえども分厚い山並みが幾重にも連なり、能登半島の付け根辺りでようやく日本海に到達する。白馬岳辺りから日本海までの距離は四十キロほどだが、安曇野は百二十キロほどあるだろう。北の方と同じように季節風雨が流れ込んだとしても、そういった西側の地域に雪をドンドコ降らせてきた湿った季節風も、いよいよ最後の常念山脈を越える頃には乾いたからっ風になってしまうのだ。だから、冬型の気圧阿配置の日、安曇野から見る北アルプスに輪郭のぼやけた雪雲がフワッとまとわりつ居ていたとしても、安曇野や松本上空から東側は晴れている事が多い。そして晴れて放射冷却が起こると、気温がグングン下がり、マイナス10℃以下という日も珍しくはない。

 新たな雪が白馬辺りに降ると、僕はいそいそと新雪滑りに出かける。あれやこれやのスキー道具は車に摘みっぱなしだ。我が家から八方まではだいたい車で四十分ほど。雪かき無しに、ゲレンデに立てるわけだ。対して、白馬に住んで居る友人達は、降ったその日の朝は先ず雪かきというお努めから始めなくてはならない。そうしないと、出かける事もままならないし、よしんば家から出られたとしても、そこら辺カットすると奥さんたちはいい顔をしない。それでは新雪を楽しんだ後の帰り道が遠くなると言うもんだ。

 長野県北部にはこういう言葉が伝わる。

「一里一尺」・・・・・・一里北へ行くと一尺雪が増えると言うこと。

「どうせ倒れるなら、南へ倒れろ」・・・・・・・人生に於いて何か退っ引きならない事になったとしても、少しでも南に行けと言うこと。

 今はそれほどでもないとしても、雪国の暮らしは過酷なのだ。僕の住まいが安曇野で、ほんとよかったと思う。

 

冬晴れの安曇野そして木崎湖界隈