竹心の魚族に乾杯

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渓流釣り技法(4)[ドリフト編]

2020年03月22日 23時21分54秒 | 用語集
渓魚達は毎日毎日、流下する虫を見ていますから、虫の流され方のパターンを学習しています。ですから、気象条件、水況、場所、季節などの状況によって渓魚が反応してくれる餌の流し方があります。ルアーフィッシングでいう「パターン」と同じですね。

どんなに正確にキャストが決まっても、ドリフトがまずければスレた魚に口を使わせることはできません。また、あしらいのテクニックをたくさん持っていても、魚を掛けなければ宝の持ち腐れです。まさにドリフトは渓流釣りの明暗を分ける技術と言っても過言ではないでしょう。


実を言うと、もともとは、ナチュラルドリフトといえばドラグを極力回避して流すことを指していた訳ですよね。それが今では「ドラグドリフトはナチュラルドリフトの発展形」?、、もう意味分かんない!!

ですがですが、ドラグ=悪ではなくて、ナチュラルに流して反応のない魚がドラグを掛けたら食ってきたりとか、あるいは水中糸にドラグを掛けることで水の抵抗を減らしたりとか、そういうメリットも状況によってはあるということなんですね!
もちろんポイントの形態とか、底の状態に合わせたドリフト方法もありますので、一見すると「これ明らかに矛盾してない?」っていうようなドリフトもある、そういうギリシャ神話の神々みたいな状況に今、渓流ファンは直面しているというわけ。


さて、そんなわけで渓流釣りのドリフトにはいくつかの種類がありますが、ここに代表的なものをまとめてみました。



Jライン釣法


難易度		★★★★
ロッド適性		凌、刀翠ZE硬調など
水中糸適性		ナイロン、ポリエステル0.25〜0.5号
空中糸適性		ナイロン、ポリエステル0.3〜0.8号
フック適性		V長良LTR、カッパマタギ

命名者:荻野成基さん※1。まさに「線の釣り」の代表選手のような流し方で、次項のコブクロドリフトと似ているが常に餌先行で空中糸は弛ませる。オモリは軽めに調整。水中糸と空中糸の双方に微かな弛みを作り、釣り合いを維持しながら流し込んでいく。仕掛けの弛みを常に確保して流すことで、胴震いする竿・重い竿・穂先の硬い竿でも安定したドリフトが可能となる。目印はこの弛みの部分に複数分散して付ける。
水中糸とハリスの成す角度がL字にならず一直線に近い状態で食わせていくため早合わせが可能であり、ハエ竿やヘラ竿でもフッキングが甘くなることはない。ただし合わせを入れる角度が前方になるため「タチ」(=針先)の短い針を使わないと掛からない。またこの釣り方は出るアタリが小さいという欠点がある一方、捕食する様子がとても良く把握でき、向こう合わせで掛かる確率が低いため、きわめてゲーム性の高い釣法である。
手尻の長い仕掛けを軽いオモリで飛ばさなくてはならないため、竿のセレクトがとても重要である。使用する仕掛けもただ全長が長いだけでなく、天井糸、空中糸、水中糸、ハリスと段落としになっていることが特徴で、一般的な通し仕掛けに比べ、キャスト性とドリフト性を重視した作りになっている。
それでも仕掛けが流れに馴染まない場合、空中糸をあえて太くしたり、目印※2に水を含ませて重くするという裏テクがある(目印を水中に入れてしまう訳ではない)。遠山の北澤さんはゴム管を使用しているらしい。かの恩田俊雄さんは目印の位置を下から1 mに固定され動かさなかったという逸話がある(5.4m以下の短竿に限られるが、目印移動式の方が浮かせ釣りに容易に移行できるのでオススメ)。
なお初めてこの釣り方に挑戦する方や、目印の調整がうまく行かない方は、空中糸にフロロカーボンの0.6号を使うとラインの重みで張らず緩めずの状態を作ることができる。日中の釣り、急流に効果あり。

コブクロドリフト


難易度		★★★
ロッド適性		流翔、本流スーパーゲームML
水中糸適性		フロロカーボン、ナイロン0.15〜0.3号
フック適性		カッパマタギ

命名者:岡崎孝さん。投入後はブレーキを掛け餌先行で沈ませる、その後、水中のフクロに引っ張らせオモリ先行でドリフト開始する。アタリの取り方はドラグドリフトと同じ。フクロが大き過ぎると遅合わせになる。オモリはナチュラルドリフトと同じか軽め。1投目はナチュラルドリフトで流して目印の位置を調整しておく。Jライン釣法に比べると若干アタリがモヤッとしているが水深のあるポイントに向く。
参考:
オーナーばり公式チャンネル #002 陽春のいざない 渓流の山女魚を求めて (19:20より)

釣り人:天野勝利さん
「流し始めに糸ふけをくれる。馴染んだと同時に糸に張りをくれる」。


デッドドリフト


難易度		★★★
ロッド適性		粋我硬調、輝
水中糸適性		ナイロン、フロロカーボン0.25〜1号

エサ先行で空中糸は張って流す。オモリは重めに調整。流心をまたいで流すことが多い。マヅメ時や遡上タイミングに効果あり。

ドラグドリフト


難易度		★★★
ロッド適性		旭仙翠硬調、煌、本流スーパーゲームML
水中糸適性		フロロカーボン0.125〜0.3号

オモリ先行で空中糸は軽く張る。手尻は長めに取る。オモリは流心の手前を釣る時は軽めに、流心の向こうでは反対に重くする。ドラグドリフトには大きく分けてイマージングとスイミングの2つのパターンが存在する。竿はどちらかといえばキックポイントがあり、穂先がふらふらした竿の方が適しているが、仕掛の調整次第で胴調子の竿でも対応可能である。ただし硬すぎる竿や仕掛けがプルプルと細かく振動してしまうような竿ではスレた魚を掛けるのはまず無理である。日中の釣りに効果あり。

[解説]


糸を弛ませず張った状態で流す場合、びびりの多い竿(=外層にカーボンシートやカーボンテープを巻いた高弾性低レジンロッド)だとグリップ力が低下しすぎ仕掛けがヒットゾーンを通過する前に浮いてきてしまう(注:バス釣りのミドストと同じ理屈。例外的なケースではこれが逆に誘いとなりバイトしてくることもある)。
そこでソリッド穂先の中弾性ロッドを使用し、リグのグリップ力を維持したまま竿操作と水中糸に掛かる流水抵抗(=ドラグ)による揚力で仕掛けを持ち上げるようにする。この状態で中層で食わせていくのがイマージングのパターンである。反対に、底層で仕掛けの流下が加速しテリトリーから外れようとする瞬間に食ってくるのが典型的なドラグドリフトのパターン(スイミング)である。イマージングが群れ山女魚に有効なパターンである一方、スイミングは縄張り意識の強い居着き山女魚(特に雄山女魚)に有効なパターンである。このような理由から放流の盛んな河川でのイマージングの釣りは避けるべきである。
イマージングの釣りを成立させるためにはそのエリアでのメインベイトがチラカゲなのかエルモンヒラタなのかヒゲナガなのかを見極めることが必要になる(群れ山女魚は個体ごとの選好が異なることは稀なため)。チラカゲやエルモンヒラタの場合はイマージングの釣りが成立する一方、ヒゲナガの場合は成立しにくい。フラッタリングなどの他のパターンで臨むことが必要になる。
竿がチューブラー穂先であっても、スイミングであればパターンを成立させることは可能である。この場合オモリと針の間隔を通常より長くとる必要がある。こうすることでびびりを相殺させリグのグリップ力を確保する。また複数付けた目印の一部を水中に入れて流す(=水中目印釣法)ことも有効である。

ナチュラルドリフト


難易度		★★
ロッド適性		流翔、本流スーパーゲームML
水中糸適性		ナイロン0.1〜0.2号

基本となるドリフト方法である。オモリは底がかりしないぎりぎりの重さに調整。空中糸はやや弛ませて流す。仕掛けの流下速度を遅くするためには、水中糸を細くして調整。竿先はチューブラーでよく、手尻も短めで良い。ただしあまりにも竿に高弾性と高感度を求めると果てしなく細い糸が必要になり、最終的には複合メタルさえ必要となってしまう。竿が高弾性の場合、僅かに風が吹いただけでも魚は餌への関心を失うからである。目印がフワフワ流れている状態をどれだけ維持できるかが成否を握る。

ぶら釣り


難易度		★★
ロッド適性		がまはえ長継、純世紀別誂瀬田、がまへら
水中糸適性		ナイロン0.3〜0.6号

岡山県旭川を中心に発達した川漁師の釣法。専用の竿を使い、オモリ先行・目印先行で道糸は弛ませて流す(対象魚は白ハエ、アマゴ)。オモリはナチュラルドリフトと同じで良い。目印は着けない、あるいは輪ゴムなどを使用。浅瀬に魚が出ている時に有効なドリフト方法である。竿が柔らかいため、振り込みは必然的に回し振りとなる。

ブレーキングドリフト


難易度		★★★
ロッド適性		本流竿9mクラス
水中糸適性		フロロカーボン0.6〜1.5号

千島克也さん考案(たぶん)。長竿を使い「遠くを」というよりもむしろ「長く」流すドリフト法。詳細はDVDで。




水中糸0.3号、ハリス0.25号程度の仕掛でも、ナチュラルドリフト以外であればかなりのドリフトテクニックがカバーできると言ってよいかと思います。
その一方で、これらの全てをカバーできる渓流竿は存在していないと思われます。特に穂先から穂持、さらに4節辺りまでの竿の調子に着目してその釣り場で使う竿の選定をしてみてください。


※1 参考:斎藤邦明『釣聖 恩田俊雄』つり人社、1995年、pp.175–182
※2 ナチュラルドリフトでもドラグドリフトでも、最近の軽いカーボンロッドでしたら目印だけちょっとずつ動かすキモチで竿先をやや下流側に保持します。その方が魚が食ってきます。反対に、和竿やグラスロッドだったら目印は先行でも後行でも構いません(なぜそうなるかは今後実験してみます)。

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