大ヒット中の低予算映画を監督 上田慎一郎(うえだ・しんいちろう)さん
09/23
予算300万円、撮影8日間の映画「カメラを止めるな!」を監督した。口コミや、会員制交流サイト(SNS)で評判となり、東京都内の2館から始まった上映は全国300館以上に拡大。海外にも反響が広がりつつある。「こんな漫画みたいな成功物語、想像もできなかった」。アハハッと笑う。
映画はノーカットで撮影した37分のワンシーンから始まる。山奥の廃虚で、ゾンビ映画の撮影隊に、死体からよみがえった本物のゾンビが次々襲い掛かるという設定。実はこのワンシーンが、がらりと変わる後半部分の伏線になっている。
「100年後に見てもいいと思える作品を目指した」。幾重にも張り巡らせた仕掛けで見る者を引きずり込む。笑いながらもうならされる、「虚実がない交ぜになる瞬間の高揚感」が本作の醍醐味(だいごみ)。「出演者は途中から、登場人物として走っているのか、自分自身として走っているのか分からなくなっている」
ほぼ無名だった前半部の俳優全員に見せ場ができるよう脚本を書いた。「『最高に面白いものができた』という喜びをみんなで味わえたことがうれしい」
少年時代は映画を「浴びるように見ていた」。自主映画や短編作品を経て、長編デビューとなった今回の作品が大ヒット。次作への期待もかかるが「自分にしかできない作品を作りたい。映画作りがつらいと思ったことは一度もないので」。滋賀県出身、34歳。(共同)