ⅭⅩ「ファミリー・ネスト」を見る聴く、 『エイガニッキ』 SASHI-ハラダ 2022/4/20
社会主義国ハンガリーの共産主義圏解体前の現実、だが、今日の現実でもないか、貧しい生活、両親の部屋に住まう息子たち、長男の嫁と娘、次男、叔母さんは、妻の妹か、大家族、今もって、相変わらずの家父長の姿、どこが社会主義だ、民主主義だ、自由だ、平等だ、経済は、生活の貧しさしか見えてこない、長男は徴兵制で兵隊に、嫁は一人、娘とともに、待つばかり、始まりのシーンは、その妻の出勤風景、道を歩き、ごみをあさるカラス、バス、そして、仕事場、組織もなにも、傲慢ボス、支払い、賃金は如何に決められているのか、雇用も、法律も、全てが曖昧、これが計画経済、お役人世界の数字合わせ、皆が集まって、札束を分け合う愚かしい現実、残業は、労働は、時間は、何やら、全てが曖昧、危うい最中に、義理の両親の部屋に帰って、部屋の主人、夫の父親の傲慢、確かに、それなりの労働者なのだろうか、部屋を持てて、それでも、冴えない食事、今日も同じシチュー、しかし、その父親の賃金でみなが生活しているのだ、カメラは、彼らをドキュメントの様に、捕える、アップで、姿、表情、作り事と思えない、場、間、まさに、現実なのだろう、徴兵から戻る長男、妻と娘と抱擁、父親も良く戻ったと、弟ともども、酒、酌み交わし、だが、妻が友人を連れてきた、この狭い我が家にさらに住まわせるのかとばかり、罵る父親、いたたまれず、居場所が無くて帰っていく娘、後を追いかける、次男、そして、長男、闇の中、路地に誘って強引に抱く兄と弟、なんとも切ない現実、若者は、犯し、犯され、それでいて、ともに酒場に、互いに、何所か、こんなことしかできないのだ、恋愛など、結婚など、出来ない、生活できない、それでいて弟には子供が出来た、父親は、知って、しっかりしろと、責任を取れと、満足に働きもせずに、責任も負う気のない弟、成るようになるさとばかり、この女もまた、路地で犯したのかもしれない、仲間内で乳繰り合って、部屋に戻った長男と抱き合う若い妻、今他の娘を犯してきたとも知らずに、だが、父親は、戻った息子に、お前の妻は浮気していると、あんなものは、追いだせとばかり、戻った長男もまた、仕事はあるのか、怪しい、働くのは妻ばかり、だが、その金の使い道を詰る義理の父、浮気に使っているのだと、父の言葉に、信用してしまう長男、不信、妻のいらだち、故に、ここから出ていきたい、彼らの部屋が欲しい、だが、公団は全くらちが明かない、アパートが足りないのだ、拒むばかり、彼ら役人もまた、いかんとも出来ないのだ、絶対数が足りないのだろうから、遣る瀬無い現実、若い妻、金は、実の母に仕送って、独白、項垂れ、涙で、悲しみで、誰も信用してくれなくて、働かなくてはいけなくて、義理の父に詰られ出ていけと、子供はおいて出ていけと、やっとのことで娘を連れて外に、空き家にもぐりこんで、でも、それは、一時のこと、差し押さえられて、外に、子供は取り上げられて、若い夫の独白、項垂れて、妻を疑ってしまった、確かに、徴兵でいなかったのだから、義理の父に毎日詰られ、触られ、他の男に優しさを求めても仕方ないのだ、何とか部屋を探して、離れなくてはしかし、そのためには金が、仕事が、こんなさなか、父親は、クラブで美しい夫人に声を掛け、誘う、己のものになれとばかり、金はある、車はあると、傲慢、強引、此の厭らしさに、溜らず、拒む夫人、しかし、この夫人は、義理の娘の母に似ていないか、義理の娘のことを利用して、抱こうというのでは、こんなあまりにだらしない、生活の最中を、ドラマではない、それぞれの姿を、表情を、声を、言葉を、視線を、目つきを、口つきを、捕えて、此の間、場、素晴らしい、カサヴェテス、空気、陰影、まさに、これこそが、映画の力、部屋の中、食事、応接、狭い最中の人々、カフェ、バー、始まりの工場、仕事場、路地、バス、空気、町、通り、鍵を壊して、空き家に入る若い妻、役所の男、同じことの反復、申請、却下、いつまでたっても、近代の失敗、これは社会主義国家ばかりではないのだ、その後の旧東諸国ばかりではない、欧米諸国も、日本もまた、同様なところに居ないか、家庭内の暴発の中に、世界はあるのだ、