東京電力福島第1原発事故から7年。避難生活を送る住民らの中には今も、心の不調を抱える人が多い。福島で支援を続ける医師らは、自宅や仕事などの生活基盤が失われたままの現状が背景にあるとみて、「生活が安定しなければ問題は続く」と訴える。

 政府の集計によると、福島県内で震災関連とみられる自殺は昨年12月までに99人に達し、宮城の53人、岩手の48人を上回る。2016年は7人で初めて10人を割り込んだが、昨年再び増えて12人になった。

 詳細を分析した丹羽真一・福島県立医大特任教授は「一家の大黒柱である50〜60代が目立つ」と話す。避難など住居の変化、失業など職業の変化、家族が分かれて暮らすなど家族の変化を経験した人が多いという。

 丹波史紀・立命館大准教授らは昨年、原発が立地する双葉郡に事故当時住んでいた世帯を対象にアンケート調査を実施。4割に当たる約1万世帯から回答を得た。

 報告書によると、県内外で避難生活を続ける人に加え、避難先で自宅を再建した人や元の住まいに戻った人が増え、状況は多様になった。しかし、心の不調を抱える人の割合は56.5%と高止まりしている。

 避難先で自宅を再建しても、快方に向かうとは限らない。双葉郡の北に位置する南相馬市に拠点を置き、心の問題を抱える人の訪問相談にあたる「相馬広域こころのケアセンターなごみ」によると、再建を機に症状が治まった人がいた半面、不調を訴え始めた人もいる。スタッフは「ふるさとを諦めるのは苦しい判断」と話す。

 一方で、避難指示が解除された地域への帰還にも懸念の声が上がる。「ほりメンタルクリニック」(南相馬市)の堀有伸医師は「生活が安定すれば心も落ち着く。だが、避難生活で無理を続けた状態で、病院も店もなく変わってしまった土地に戻るのはリスクがある」と指摘する。

 7年がたち、被災者への支援が打ち切られる動きが強まっている。なごみの米倉一磨センター長は「なごみにつながった人は、多かれ少なかれ回復に向かっている。問題を抱える人に、誰かに頼っていいと思ってもらうことが大切」と、継続的な支援の重要性を訴えている。 

早いもう7年もたつなんて