責任を下に押し付ける安倍・麻生の醜態
朝日新聞の3月2日のスクープが引き金になって再燃した森友学園問題。スクープ通り、森友学園への国有地売却に関する14の決裁文書が300か所以上も改ざんされていたことが明らかになった。一連の問題にまつわる言葉を振り返ってみたい。
財務省近畿財務局の職員
「自分の中の常識が壊されてしまった」
NHK NEWS WEB 3月15日
財務省近畿財務局で森友学園への国有地売却を担当し、自殺した男性職員が言い残した言葉が次々と明らかになっている。男性職員が書き残したメモには「勝手にやったのではなく財務省からの指示があった」という主旨のことや「このままでは自分1人の責任にされてしまう、冷たい」という記述があった。また、「資料は残しているはずでないことはありえない」という財務省側の答弁に疑問を投げかける内容も書かれていたという。
◆
安倍晋三 首相
「行政全体の信頼を揺るがしかねない事態であり、行政の長として責任を痛感している。国民のみなさまに深くおわびを申し上げたい」
毎日新聞 3月12日
安倍晋三首相は12日、決裁文書改ざん問題について陳謝したが、「なぜこんなことが起きたのか、全容を解明するため調査を進める。麻生財務相にはその責任を果たしてもらいたい」と麻生太郎副総理兼財務相の辞任は必要ないとの認識を示した。
◆
麻生太郎 副総理兼財務相
「佐川の国家答弁に合わせて書き換えたのが事実だ」
毎日新聞 3月13日
政府側は文書の改ざんに関与していないと主張している。あくまでも財務省の「理財局の一部の職員」が佐川宣寿前国税庁長官(当時、理財局長)の答弁に合わせて改ざんしたものだというのだ。もともと佐川氏の答弁を「冴えているね」と絶賛していたのは安倍首相で、「極めて有能」と持ち上げていたのは麻生氏だ。佐川氏は1人で勝手に暴走したとでもいうのだろうか?
また、財務省の問題ならば、そのトップである麻生氏の責任は免れないはずだが、麻生氏は一貫して責任を取らないと主張。なかにはこのような言葉も報じられた。
小泉元首相は「忖度したんだよ」と断言
麻生太郎 副総理兼財務相
「自分が去ったら内閣が持たない」
FNNニュース 3月12日
たしかに麻生氏が閣外に去れば、安倍政権は大ダメージとなる。それにしても自分たちの責任逃ればかりが目につく。人が1人死んでいるというのに。
◆
安倍晋三 首相
「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」
一連の報道では、昨年2月17日の安倍首相のこの答弁が再び注目を集めた。財務省が文書を改ざんしたのは、佐川氏の答弁ではなく、安倍首相の答弁との整合性を保つためだったのではないかと野党側が指摘しているからだ。実際、決裁文書の改ざんは2月下旬から4月にかけて行われた。
小泉純一郎元首相はBSフジのニュース番組で、「総理が『私や妻が森友学園に関係あったら、総理も国会議員も辞める』と言った。総理の答弁に合わせないといけないということで、この改ざんが始まったと私は見ている。忖度したんだよ」と断言した。官僚が政権に忖度するのは、官僚の幹部人事を首相と官房長官が握る「内閣人事局」が2014年にできたからだ。
安倍晋三 首相
「名誉校長に安倍昭恵という名前があれば印籠みたいに恐れ入りましたとなるはずがない」
朝日新聞デジタル 2017年3月6日
改ざんされた箇所には安倍晋三首相の妻、昭恵夫人の名前があった。決裁文書からは昭恵氏が問題の国有地を「いい土地ですね」と語ったなどとする籠池泰典氏の発言などが削除されていた。実際に籠池氏の発言どおりに昭恵夫人が言ったかどうかはわからないが、安倍首相の言葉を引けば、完全に財務省は「恐れ入りました」状態だった。昭恵夫人の名前は明らかに「印籠」だ。
もともと森友学園問題は、昭恵夫人が教育勅語を園児たちに唱和させるような籠池前理事長の愛国的な教育理念に涙を流して感激し、新たに建設する小学校の名誉校長を引き受けたところから始まっている。安倍首相は籠池氏の教育方針について「素晴らしい」「私の考え方に非常に共鳴している」と感銘を受けていた。籠池氏は昭恵夫人の名前を利用して小学校建設に乗り出し、近畿財務局は右往左往させられた。籠池氏の国会招致が実現し、佐川氏の国会招致も実現するなら、次は昭恵夫人となるのが当然だ。
◆
森山 裕 自民党・国対委員長
「参考人の対象には全くならない」
共同通信 3月12日
野党は安倍昭恵首相夫人の国会招致を求めているが、自民党の森山国対委員長は断固として拒否の姿勢を見せている。一方、佐川氏の証人喚問は認める方針なのだという。昭恵夫人はダメで、佐川氏はOK。この判断基準は何なんだろう? なお、森山氏は当初、佐川氏の招致に関しても「一般人だから」という理由で難しいと言っていた(朝日新聞デジタル 3月9日)。じゃ、籠池氏は一般人じゃなかったの?
自民党内からも安倍政権批判の声
村上誠一郎 自民党・元行政改革担当相
「来年度予算、予算関連法案という問題があるわけだから、そろそろ大所高所の判断をすべき時期に来ているのではないか」
時事ドットコムニュース 3月13日
自民党内からも安倍政権に対する批判の声が高まっている。村上氏が言う「大所高所の判断」とは内閣総辞職のことだ。村上氏はほかにも「はっきり申し上げて、全部出発点は安倍さんだと思っている」(朝日新聞デジタル 3月13日)、「部下がやったことに責任を持つのがトップだ」「もうそろそろ終止符を打った方がいいのではないか」(ブルームバーグ 3月16日)と安倍首相を激しく批判している。
◆
小泉進次郎 自民党・党筆頭副幹事長
「自民党は『トカゲのしっぽ切り』と言われるような、官僚だけに責任を押しつけるようなことをする政党ではないという姿を見せないといけない」
朝日新聞デジタル 3月11日
小泉氏は「この問題は行政だけではなく政治全体の問題と受け止めなければならない」とも語っているが、安倍首相はあくまで「行政の長」として陳謝したに過ぎない。今後、小泉氏が自身の発言をどう実行していくかにも注目したい。
安倍首相の総裁選挙の3選と、安倍首相の宿願である憲法改正にも暗雲がたちこめてきた。時事通信が3月9日から12日にかけて行った世論調査では、安倍内閣の支持率は前月比9.4ポイント減の39.3%と急落した。支持しない理由の最多は「首相を信頼できない」の25.2%だった(時事ドットコムニュース 3月16日)。昨夏、安倍内閣の支持率が急落したときと同じ理由である。そのときは北朝鮮のミサイルと「国難突破解散」で乗り切ったが、今年はしばらく飛んでこなさそうだ。
◆
籠池泰典 森友学園・前理事長
「すべてが安倍さんを守るために動いてる」
現代ビジネス 3月15日
ジャーナリストの伊藤博敏氏は、昨年7月に籠池氏にインタビューした折、籠池氏から次のような言葉を聞かされたという。「すべて(の組織)が、安倍さんを守るために動いている。自分自身が濁流のなかにいるから、それがよくわかる。『ワルは籠池』で終わらせようということ。だが、それで済むはずがない」。なんとも意味深な言葉だ。はたして、籠池氏の予言どおり「それで済むはずがない」のだろうか? 1日3億円かかる国会は空転を続けている。昭恵夫人にはすべてを明らかにする義務がある。