栃木県那須町のスキー場付近で発生した雪崩事故で、高校生ら9人が雪に埋まり、半径約5メートルのくぼ地でまとまって発見されていたことが29日、捜索に当たった救助隊員の話で分かった。数百メートル離れた斜面から崩れた雪に一気にのみ込まれたとみられ、うち8人が犠牲となった。

 那須山岳救助隊の副隊長高根沢修二さん(67)によると、県警から救助隊の担当者を通じ連絡があったのは27日午前9時半ごろ。「3人くらい雪崩に巻き込まれた」。吹雪で視界が悪い中、先発隊として警察官らと共に約10人で現場に急行した。

 生徒らのいる場所が分からず、「おーい」と声を掛けながら第2ゲレンデを登って行くと、コースから200〜300メートル外れた林の中に手を振る人影が見えた。急いで駆け付けると、開けたくぼ地に、負傷した生徒らが座り込んでガタガタと震えており、周囲には埋まっているとみられる数人の顔や手足が雪の上に出ているのが見えた。

 急いでスコップで掘り返したが、いずれも唇は変色しており、声掛けにも反応はなかった。さらに周囲を掘ると、次々と顔や体の一部が見えてきた。「こんなにいるのか」と驚きながら捜索を続けていると、雪の中から「うー」「あー」とうめき声が聞こえた。

 「生きてるぞ!」。1メートルほど掘ると、生気を失った男子生徒の顔が見えた。眠りそうになるとほほをたたき、「眠っちゃ駄目だ」「頑張れ」と声を掛け続け、5、6分で引き上げた。「奇跡だと思った」。生徒の体をブルーシートで包み、5人がかりで医師の待機するロッジに搬送。重傷の生徒らも次々と運んだ。

 約45年前から救助隊に参加し、30〜40回は出動したという高根沢さんだが、「ここまで悲惨な現場はなかった」と振り返る。「若者の死に顔を見るのは忍びない。それも1人や2人ではない。誰か声を出してくれと願いながら雪を掘っていた。残念としか言いようがない」と声を落とした。