What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

初野 晴 『惑星カロン』(角川書店)

2015年10月26日 13時45分24秒 | 図書館で借りた本
 作者の初野 晴(ハツノ セイ)さんのお名前の読み方が、いつまでたっても覚えられません、あほだ。

それはともかく、待ちに待った「ハルチカ」シリーズの最新作『惑星カロン』を、二週間ちょっとの図書館の順番待ちをへて、ようやく借りて読むことができました。今作は、主人公のチカちゃんとハルタが二年生となり、コンクールに参加するあいまに持ち上がる騒動を描いた短編が四作納められていました。

 イントロダクション (書き下ろし)

・チェリーニの祝宴 -呪いの正体- 
・ヴァルプルギスの夜 -音楽暗号-
・理由(わけ)ありの旧校舎 -学園密室?-
・惑星カロン -人物消失- (書き下ろし)

浪漫でいうなら、「チェリーニの祝祭」から「惑星カロンへ」の流れ。はらはらわくわくどきどき感でいうなら、音符を暗号として解読する「ヴァルプルギスの夜」。ほのぼのするなら「理由ありの旧校舎」という感じです。

いつもどおりに吹奏楽部への想いがあふれかえっているのと、独創的で奇想天外な発想をする世間では変人扱いの個性豊かな生徒たちへの暖かい眼差し、いきものや弱者や無機物たちへの包み込むような愛情、そしてなによりもリアルタイムな高校生の、単純で永遠の命題的な恋愛の悩みから、子どもから大人へ移行していく年齢特有の危うい悩みが、何層にも重なって描かれていくさまが、読んでいて心地よくてたまらないです。

とくにかく、チカちゃんの愛すべき人柄が好いんですよね~。シリーズ五作目にして、ようやく王子様的存在の草壁先生(吹部の顧問)が、自分から行動してくれたし(贖罪への一歩扱いですが、そもそもの「罪」が何故に犯されたのかは、まだ不明)この後は、たぶん三年生となってコンクールに参加~卒業式くらいまでは、このシリーズを書いて下さるんじゃないかなぁと期待しています。

何度も読み返してしまう、青い春たちの軽やかな物語は、胸がすっとして、ギュッと切なくなって、たまらんです。


↓プロの書かれた「ハルチカシリーズ」の説明はこちらをどうぞ♪

★「web本の雑誌 【今週はこれを読め!エンタメ編】 〈ハルチカ〉シリーズ最新刊『惑星カロン』登場!」
( http://www.webdoku.jp/newshz/matsui/2015/10/14/132953.html )
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S・キング 『ドクター・スリープ』 読後感想

2015年07月07日 09時49分23秒 | 図書館で借りた本
 救済を描いたお話でした。上・下巻の厚さがまったく気にならないサクサク進むお話なのですが、やっぱり繰り返して読んじゃうのが、S・キング作品(笑)

いわゆる「続編」を望むときの理由に、登場人物たちの幸せな終わりを見たいという気持ちはありませんか?なので、このお話を単独で読んだ時に、『ローズ・マダー』や『恐怖の四季』のような、怒涛の恐怖や重い人間関係を期待しないほうが賢明です。これはあくまで『シャイニング』の「続編」です。

私は軽めのS・キング作品が好きなので、十分にキング作品ならではの味わいを堪能しました。自分が救えたかもしれなかった子供への後悔に苛まれ、アルコール依存と懸命に戦い、同じ”シャイン”の能力を持つ少女を救い導いていく主人公。子どもの時には見えなかった、理解できなかった事が、さんざん痛い体験をし、他人と関わっていく中で、徐々に主人公に見えていくさまが、いいおばちゃんになった自分に共感できた部分でした。

歴代の大統領の紹介の仕方(うっかり笑う)とか「導尿パックがいっぱいになっても施設の廊下に放置されている老人」とか、短いセンテンスでも人の心を叩く文章を読めるのが、私がS・キング作品が大好きな理由のひとつです。

あと「暴力への衝動(癇癪)を抑えられない」ことが、この作品でも書かれたことに、それほど制御できないことに苦しみを抱えている人が多いのだろうかと、いまさらですがうすら寒くなりました。
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S・キング 『ドクター・スリープ』 上・下巻 (文藝春秋)

2015年07月03日 18時33分25秒 | 図書館で借りた本
 久しぶりに市の図書館に入った新刊をチェックしていたら、S・キングの『ドクター・スリープ』上・下巻が入っているじゃありませんか♪さっそく予約を入れたら、あっという間に用意されて借りる事ができました。

ウキウキしながら、まずはあとがきを読むべし~♪(賛否があるとは思いますが、私は本編を愉しむ前に、まず周りから攻めていくタイプです)と下巻を開いたら、嬉しいニュースが書かれていました。

以前ここで、2013年度のブラム・ストーカー賞の長編部門に、S・キングと息子のジョー・ヒルの作品が、同時にノミネートという話題を書いたのですが、結局はS・キングの『ドクター・スリープ』が受賞したそうです。

ちなみにこの『ドクター・スリープ』は、あの『シャイニング』の続編で、惨劇を生き延びた息子・ダニーが成長し、ホスピスの職員として不思議な能力を使って、穏やかに暮らしていたのですが、同じシャイニングの能力を持つ少女を救うために、悪の一族と戦うというお話です。ふふふ、さぁ、じっくり読書を愉しもう!
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アベナオミ 『まんぷく仙台』 (メディアファクトリー)

2014年11月07日 16時02分12秒 | 図書館で借りた本
 次男が学校の図書室のお知らせを、毎月見せてくれるのですが、そこに「今月購入の新刊一覧」が載っています。で、この本いいなぁと赤ペンで丸をつけておくと、次男が借りてきてくれるという、夢のシステムがうちにはあります。(笑)それで読んだ本の感想を二つ。

○アベナオミ 『まんぷく仙台』 (メディアファクトリー)
帯裏から引用
「ようこそ牛たんパラダス!/名物ずんだ&絶品スイーツ/圧倒的三陸魚介の底力 めくるめく寿司・海鮮/旬の野菜の滋味に酔う/その味プライスレス 仙台テイクアウトの名店」

 それぞれのテーマごとにお店が三軒くらいづつ紹介されているのですが、画像&コミックエッセイが、もう見事に胃袋を刺激して、地元民なんだけど!食べた事あるんだけど!読んでいると、お腹がぐーぐー鳴りました(笑)まったく仙台をご存じない方でも、巻末に地図も載っていて便利なガイド本だと思います。なにより、どのお店も地元民も納得のラインナップした。

↓発売元のHPを見たら「まんぷく広島」や「まんぷく名古屋」も発売されているようです。

★「メディアファクトリー / コミックエッセイ)
( http://mediafactory.jp/Form/Product/ProductList.aspx?cat=025 )

○ヨナス・ヨナソンの「窓から逃げた100歳老人」(西村書店)

 新聞の広告を読んで、面白そうなタイトル&あらすじだ、読んでみたい!と思っていたお話だったのですが、読んでもさっぱり楽しめなかった自分にがっかりしました。これは確実に自分の心に余裕が無いせいなんですが、虚構と現実が入り乱れるギャク(?)を、愉しめませんでした。映画化が決まっているそうで、このお話を映像化したらば面白いだろうとは思います。

震災当時より、だいぶ小説を読めるようになったなぁと自分では思っていたんですが、まだまだ創作を愉しむちからは全快していないようです。
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マイケル・ブース 『英国一家ますます日本を食べる』 (亜紀書房)

2014年11月01日 21時45分42秒 | 図書館で借りた本
 イギリス・サセックス生まれのトラベル&フードジャーナリストのマイケル・ブースさんと、奥様&二人のお子さんたちの日本美食旅行記の第二弾です。たぶん、いろんなところで、すっごく面白い!という書評が溢れていると思うので、肝心の食リポとまったく関係の無い部分なのに、この本の中で私が一番心打たれた文章を書き出します。

☆P95~「9 失われた魂の森 高野山・精進料理」より引用

 これほどまでに落ち着かない落ち着かない場所を訪れたのは初めてだったが、子どもたちが不穏な雰囲気を感じ取り始めたのがわかったので、楽しそうな顔をしておくしかなかった。森の中ほどまで進んだところで、リスリン(奥様)の顔をちらりと見た。彼女も同じく何食わぬ顔をしていたけれど、足元を照らすろうそくの揺らめく光で、彼女の目が真っ暗な下生えの草むらをじっと見ているのがわかった。命を失くした子どもの石のように表情の無い顔が、揺れる光を浴びてこっちを見つめ返す。

 そのときだ。エミル(次男君)がそばにいないことに気がついた。

(中略)

 ようやく見つかるまでに、1年が過ぎたかと思えるほど長い間捜し続けたが、実際は5分足らずのことだった。それほど遠くへは行っていなかった。エミルはお地蔵さんの頭に手を置いてしゃがみこみ、話しをしていた。

「なんて話しかけてたの、エミル?」僕は、努めて明るくそう訊いた。

「一緒にお話していただけだよ」息子はそう答えた。「あの女の子ね、寂しいって」

 最後に渡る御廟橋の手前には、参拝者が水をかけて溺死した赤ん坊や水子を供養する水向地蔵があり、橋を渡って奥へ行くと灯籠堂があって、そのさらに奥には弘法大師の入定したという御廟がある。

(中略)

そばを流れる川の水音以外、何も聴こえなかった。僕らは灯籠堂を簡単にのぞいただけで、大急ぎで引き返した。走らないようにと、必死でこらえながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

30年も前の話ですが、高校の修学旅行で京都へ行きました。そのなかで、化野の念仏寺を訪れたんですが、まったく霊感の無い私でも、ここは入ったらいけない場所だと直感しました。全身の毛が総毛だつ感じ。他国人のマイケルさんも、きっと同じ感覚だったんだろうと思います。マイケルさんの日本食の感想を読んで、とても親近感を抱くのは、こういう「畏れ」への感覚に共感したからでしょうね。


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冲方 丁 『はなとゆめ』 / F・シーラッハ 『罪悪』

2014年02月21日 15時26分58秒 | 図書館で借りた本
○ 冲方 丁 『はなとゆめ』(角川書店)

 図書館で予約していた本が入りました~と、職員さんからこの本を手渡されて、思わず「薄!」と心の内で思ってしまいました(笑)歴史三部作というからには、『天地明察』や『光圀伝』と同じくらいの厚さなんだろうなァと勝手に思っていたのでした。うん、なんというか他の二作品よりは凄くあっさり書いた、「枕草子」の副読本みたいでした。

以前ここで、このお話が発刊されると知った時に、『はなとゆめ』というタイトルは、もしかして少女マンガ雑誌「花とゆめ」にかけてるのかな~と思ったと書いたんです。女性にとっての永遠の夢とか理想とか綺麗な物好きとか、そういうものすべてをひっくるめているんじゃないか予想してたら、やっぱりそうでした。

『七姫幻想』という大好きなお話があるんですが、その中の一作に登場する清少納言のその後っぽい老婆もそうですし、作家さんもタイトルも失念してしまったんですが、大昔に読んだ清少納言を主人公にした小説も、清少納言の中宮定子が象徴する女性の持つ美徳への強い憧憬というか愛情が、清少納言の創作の源なんだろうと。そういう想いを中心に描いたお話でした。

う~ん、なんだか冲方さんにしてはちから半分?な印象が残っちゃいました。


○ フェルディナント・フォン・シーラッハ 『罪悪』(東京創元社)

 震災以来、登場人物が辛い目に遭う描写に耐えられなくて、ミスタリーになかなか手がだせませんでした。でも、ふと図書館の本棚にこの本があって、前作の『犯罪』も素晴らしかったし、短編集だから読めるかもと思い借りてみたら、読めました。

ノン・フィクションみたいだというと、語弊があるかもしれませんが、人に軽々しく話す事じゃない、地方紙に小さく掲載されるような事件って、案外身の回りに無いですか?同じ地域に住む初老の男性が、スーパーの駐車場に止めてあった車のフロントガラスを何台も割ってまわったとか。近所の家の二階のボヤは、その家の次男が自分で火をつけたとか。そういう話を茶のみ話に聞かされた気分になりました。

作者さんの筆致が「静謐」なんですわ。しんしんと寒くなるような静けさ。余分なモノを削りとった、そんな言葉が伝える人間の心の深い暗い底の部分が、余韻となって何度も読み返させる、そういうお話ばかりでした。
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久々な、本の感想。 『死神の浮力』&『検事の死命』

2013年11月06日 08時29分31秒 | 図書館で借りた本
○ 伊坂 幸太郎 『死神の浮力』(文藝春秋社)

 読み始めて全体の3分の1くらいにきた辺りから、あ~これはきっと映像化されるだろうなと思いました。それくらい、文章から映像(人の表情や風景)と音楽が鮮明に浮かび上がってきます。同じく伊坂さんの『ゴールデンスランバー』も、読んですぐそう思ったら映画化されたので、あると思いますよ♪(私的に、犯人役は香取 信吾さん、死神役は松田 龍平さんが良いんだけど)

伊坂さんの作品としては、珍しくすっきり犯人が罰せられていると思いました。(ワニ仕事しろ)だから、その後のエピソードの余韻がすごく深い。映画のエンドロールを観ているようでした。

あ、死神の全力な自転車漕ぎシーンは、想像するとそういうシーンではないんですが、愉快でたまらなかったです。

前作『死神の精度』を読んでいなくとも、すっと伊坂ワールドに入れます。勿論読んでいれば、同業者さんとの会話とかが愉しめて、好い事には違いないです。

 

○ 柚木 裕子 『検事の死命』(宝島社)

 『検事の本懐』に続く、佐方検事のお話。四つの短編が収められていますが、どれも味わい深くて、繰り返して読みました。本のタイトルになっている「検事の死命 刑事部編/公判部編」は、スリリングな駆け引きと、事件の真相がクズ!だったことのカタルシスがたまらんかったです。

私的に二話目の「業をおろす」は、佐方さんとお父さんの気持ちはわかるけど、わかるけど、おじいさんおばあさんが負った13年分の心の痛みを想うと、ふざけんなー!と叫びたくなりました。人には自分では予想もしない繋がりがあって、自分だけが背負っていると思いこんだモノが、他の人を苦しめる。自責の念で針のむしろだった13年間の暮らしを、想像しただけで苦しくて辛くて気の毒で泣けてきました。生きている人が、死んだ人のせいで幸せになれないのは嫌いです。

このシリーズを、柚木さんにはどしどし書いて頂きたいです。佐方さんは出世していくのか?タバコは減らせるのか?おじいさんたちに結婚の報告はできるのか?(どんどんハードルが高くなる)あ、一話目の「心を掬う」の冒頭、お酒を飲むシーンには要注意です。読むと絶対にのど乾いてくるから(爆)
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『坂木 司リクエスト! 和菓子のアンソロジー』

2013年05月01日 10時06分45秒 | 図書館で借りた本
 今日から五月ですね~。連休の中間ですが、お休みの人もお仕事の人もいろいろおられるんだろうなぁ。

うちでは、主人がとうとうカレンダーどおりに休めるようになりました。ずっと仕事が多忙で土・日も祝日もナニソレ?状態が続いていたんですが、震災から二年が過ぎてだいぶ状況が落ち着いたなぁと、実感しました。だからって、温泉や行楽地に行けるわけじゃないんですけど(苦笑)

次男は、お休みの間も相変わらず部活がずっとあるんですけど、長男が今年ある高校の吹奏楽部のOB&OG演奏会の打ち合わせに、明日帰って来る事になって、ウキウキしています。三日は居るそうなんですけど、寝る場所が無くて~。実質「廊下」状態の部屋に寝るのは私なんで、カーチャン的には凹。ようやくストーブをしまっても大丈夫そうな気温になったんで、そのへんは良いんですけど、みんなトイレに行く時に、寝てるカーチャンを踏まないでね~。



 前置き長くなりましたが、本題の『坂木 司リクエスト! 和菓子のアンソロジー』(光文社)の感想を♪

巻末を読んでわかったんですが、これは2012年に「小説宝石」に連載されたお話をまとめたものだったんですね。普段、小説誌をほとんど読まないのでまったくのノーチェックでしたが、こんなに面白い短編が掲載されるんだもん、今度は図書館で小説誌も借りてみようと思います。

・坂木 司 『春告げ鳥』

 待ってましたー!『和菓子のアン』の続編なお話。主人公のアンちゃんこと杏子ちゃんの成長のお話でした。この勢いで、どしどし続編を書いて下さい坂木さん!

・日明 恩 『トマどら』

 性別にかかわらず、カッコイイ、男前、漢、な人物造形には間違いのない日明さん。このお話も、なかなか複雑なお話なんですが、にやにやしてしまいました。でもごめん、「トマどら」は私には無理です。

・牧野 修 『チチとクズの国』

 今回いちおし!なお話。単に、私が牧野さんの既読作品から、どんなお話になるかまったく想像できなかったんで、良い意味で裏切られた!と感動したんです。読み終えてみれば、やっぱりな牧野さんワールドでした~(笑)幽霊(とかじゃく「死霊」と書きたくなるのが牧野作品)との会話での、言葉の選び方がやっぱり巧い。

勝手な妄想ですが、私も死んだらすぐには成仏しないだろうと思っています。だいぶ前に、心配のあまり様子を見にウロウロすると思うんだ~と子どもたちに言ったら、すっごく真剣に嫌がられました(爆)

・近藤 史恵 『迷宮の松露』

 近藤さんの書かれるお話には、熱風と乾燥と砂が良く似合うと思います。

・柴田 よしき 『融雪』

 この作家さんの作品は未読でしたが、昭和の作家さんの作品の様な巧さを愉しみました。献立を考える描写は、あ~、判る判る!この今ある食材を工夫する感じ!まったくレベルの違う(笑)料理を作る身ですが、お菓子作り以上に共感しました。

・木地 雅英子 『糖質な彼女』

 この方も作品は未読な作家さんでしたが、あぁ、なるほど、そういう事かとお話のテンポよい流れを愉しみました。

・小川 一水 『時じくの実の宮古へ』

 小川さんの短編がすっごく好きです。恒川さんもそうですが、一瞬で異世界に飛ばされ、飲み込まれる感覚がたまらんです。「宮古」ですが、最初勝手に脳内で、「岩手県宮古市」をイメ-ジしてしまい、失われた宮古をめざす?→あぁ「都」をめざすか!と、まったくお話の本筋を誤解していました(汗)

・恒川 光太郎 『古入道きたりて』

 しめった草の匂い、黒土の匂い、かそけく響く鳥の声、月光に照らされて浮かぶ深い森。一瞬でお話に飲み込まれる心地良さ!さすがの恒川さんなお話です。作中「あんころもちが喰いてぇだ(by まんが日本昔話)」というナレーションが頭の中に聞こえます(笑)デビュー作『夜市』のような純日本の空気、最近の沖縄を題材とした小説の描く空気、どちらも凄く表現が巧い作家さんだと思います。

・北村 薫 『しりとり』

 安定の北村作品。格調高いです。

・畠中 恵 『甘き織姫』

 『しゃばけ』などで人気の作家さんですが、私はまったく読めないんです(苦笑)今回の人物設定(男性も女性も)が、微笑ましい関係を狙って書かれているのはわかるんですが、ウザッ!と感じてしまう。たぶん、合う人には気持ち好いんだろうとは思います。
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お久しぶりの「図書館で借りた本」カテゴリーの話。

2013年04月25日 14時46分25秒 | 図書館で借りた本
 なんとまぁ久しぶりの「図書館で借りた本」カテゴリーの話ですよ!(笑)


ペンタさんのところで、素敵なお話を紹介されていたので、読みたくてやもたまらずに図書館に予約をいれました。そうしたら、幸運なことに直ぐに入荷(?)連絡がきたので、足取り軽く図書館へ行ってきました。


2月の末に行ったきりだったので、当時は蕾だった紅梅も白梅もすっかり咲き終わって、葉が目立つようになっていました。でも、桜は満開! 誰も居ない駐車場で、晴れた暖かい水色の空に咲き誇る白い桜の花をゆっくり眺めていたら、心がじわ~じわ~と満たされました。


 肝心の読みたかった小説、坂木 司さんの『坂木司リクエスト! 和菓子のアンソロジー』(光文社)だけを借りるのももったいないので、『ダイム』や『きょうの料理』や『オレンジページ』に『本の雑誌』などの、そこにあった最新号をどさっと借りて、あとは次男の為にラノベを何冊か借りました。私もなんですが、次男も自分の本をダンボールに詰め込んじゃった結果、現在読むものが手持ちに無いんですよ(涙)なので、ちょっと古くなってしまいましたが、鈴木 鈴の『吸血鬼のおしごと』と、雨木 シュウスケの『鋼殻のレギオス』を、どちらも三巻まで。気に入ったら、続刊もあるので、まぁ、試しに読んで貰えれば好いかなと思います。


話もどりますが、『和菓子のアンソロジー』は短編集なんですね。その執筆陣が、もろジャストミートォ~!(笑)

>小川 一水、木地 雅英子、北村 薫、近藤 史恵、坂木 司、柴田 よしき、日明 恩、恒川 光太郎、畠中 恵、牧野 修

小川 一水さんや北村 薫さんはうんうん、と思ったんですが、あのホラーの帝王・牧野 修さんが和菓子がテーマなお話?どうなっちゃうの??と、久しぶりに「小説を読む前のわくわくした気持ち」が溢れてきて、あぁ、この感覚とすっかりご無沙汰になっていたなぁと、思いました。

我慢できずに、巻末の坂木さんの編集後記的な「塩をひとつまみ」を読んだら、坂木さんの書かれた「空の春告鳥」は、気になってしょうがなかった「和菓子のアン」の後日談だそうで、ますますブラボォー!!あぁ、読むのが愉しみで、もったいなくて読めな~い(苦笑)

あ、ちなみに日明 恩さんはタチモリ メグミさんとお読みします。皆さん、一発で読めました?(笑)私は無理でした。作品は『ロード&ゴー』という救急車をめぐるリアルタイムサスペンスを読んだだけですけど、運転手さんのプライドが熱かったお話でした。以前、有川 浩さんとペンネームの話で盛り上がった対談を読んだんですけど、これがまた面白かったなぁ。


ところで、このアンソロの最後に『近藤史恵リクエスト!ペットのアンソロジー』と『大崎梢リクエスト!本屋さんのアンソロジー』という、これまた面白そうな既刊が紹介されていました。おいおい、これも読むしかないだろ~
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続・「他人に面白い本を勧める」のは難題

2013年02月28日 09時45分52秒 | 図書館で借りた本
 図書館から借りた本の貸出期間が終わったので、「全部返してくるよ、次はどうする?」と主人に訊いたら、また何か借りてきて欲しいというので、今度はバラエティー重視にしてみました。しかも新旧混ぜてみたので、どれかは気に合うものもあるだろうと思います(笑)

 伊集院 静 『ガッツン!』 (双葉社)

 真梨 幸子 『殺人鬼フジコの衝動』 (徳間文庫)

 坂木 司 『和菓子のアン』 (光文社)

 大森兄弟 『犬はいつも足元にいて』 (河出書房社)

 倉知 淳 『猫丸先輩の空論』 (講談社)

 日本推理作家協会編 『ULTIMATE MYSTERY 究極のミステリー、ここにあり』 (講談社文庫)

 三浦 しをん 『ふむふむ おしえて、お仕事!』 (新潮社)

 黒井 勇人 『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』 (新潮社)

 松本 人志 『怒 赤版』 (集英社)

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前回のラインナップでは何が面白かった?と訊いてみたら、結局全部は時間が無くて読めなかったけど、『のぼうの城』が面白かったそうです。その理由が、時代は違えど、主君や家臣に挟まれた、のぼう様の中間管理職的な苦労が、主人は凄く共感できたからだそうです。へぇ~~~、そういう読み取りもあるんだ、面白いなぁと思いました。私と主人は、なにごと真逆なので(笑)私とまったく違う物の見方、受け取り方をする主人が、面白いです。
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「他人に面白い本を勧める」のは難題。

2013年02月13日 15時07分37秒 | 図書館で借りた本
 昨夜の深夜→雨ふり、朝方→みぞれ交じりの雪、午前中→吹きすさぶ雪のち一瞬の晴れ間、午後→快晴なれど風強し。

お天気の神様は、何をしたいんでしょうか・・・



 さて、そんな荒れたお天気の中、ひっさびさに図書館に行ってきました。お気づきになったかもしれませんが、ここしばらく「図書館で借りた本」の更新をしていません。何故かしらねど、さっぱり読書欲が湧いて来ないんです。読みたくてたまらない時には、三冊同時進行という荒行もやってしまうんですが、いまはさっぱりです。人間の欲望って不思議(苦笑)

ところが昨夜、ここ最近、主人が早く帰って来てまして(当家比)なにか本を読みたいので、図書館で見繕ってきてくれと言われました。難題勃発です。私と主人の趣向は真逆です(苦笑)いままで私の勧める本は、さっぱり主人の好みに合わなかったので、この問題はハードルが高い!

図書館をしばしうろついて、主人の「短編か連作のミステリー」という希望に添いつつ、普段本を読まない人でも読めそうな、とっかかりの良いお話を、現代もの&歴史もの&海外ものと借りてきました。

雫井 修介 「犯人に告ぐ」 上・下(双葉文庫)

相場 英雄 「偽計 みちのく麺食い記者 宮沢賢一郎」 (双葉文庫)

和田 竜 「のぼうの城」(小学館)

北村 薫 「ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件」(東京創元社)

「2011 ザ・ベストミステリーズ 日本推理作家協会 編」(講談社) 

「暗闇を見よ 最新ベストミステリー 日本推理作家協会 編」(光文社)

「天外消失 世界短編傑作集 早川書房編集部 編」(ハヤカワミステリ)

「51番目の密室 世界短編傑作集 早川書房編集部 編」(ハヤカワミステリ)

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 「2011 ザ・ベストミステリーズ」のトップは、深水 黎一郎さんの『人間の尊厳と八00メートル』なので、ここは外せないだろうと思いチョイス。

「天外消失」と「51番目の密室」は、そもそもが「世界ミステリ全集」の第18巻「37の短編」を三分割したうちの二冊だそうで、残る一冊も早く出して下さい(笑)以前「天外消失」を読んだ時にも書きましたが、ブレッド・ハリディの『死刑前夜』とフランク・R・ストックトンの『女か虎か』は痺れますよ~。

さて、全滅か、はたまた引っかかるお話があるもんだか、主人の反応はいかに。
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『0番目の事件簿』 (メフィスト編集部・編) 

2012年12月17日 09時47分36秒 | 図書館で借りた本
★『0番目の事件簿 (メフィスト編集部・編)』 (講談社)

 いまは第一線でキラ星のごとく活躍されている作家さんたちの、デビュー前の作品を収録した短編集ですが、面白かった!綾辻 行人さんがあとがきで、

>どんな作家でも「デビュー前」があり、ごく少数の例外を除いて、その時期に手探りで書いた作品は力足らずで荒削りで瑕だらけなものである。しかしながら、だからこそ往々にして、そこにはその作家本来の資質や志向性がくっりきと刻まれているものである。

と書かれているのですが、まさにそのとおりな、勢いと才能あふれるお話ばかりでした。掲載作品の後に、それぞれの作家さんのエッセイがあるのも、とても愉しいです。

村崎 友さんと汀 こるものさんのお二人は、作品未読なんで比較できないんですが、あとの作家さんたちのなかでは、初野 晴さんと綾辻 行人さんの作品が、特にすでに今のスタイルがもう出来てると感じました。西澤 保彦さん特有の「嫌らしい人」の造形は、最初からずっとあるんですねぇ。(苦笑) 


☆「密林 / 『0番目の事件簿』 (メフィスト編集部・編)内容紹介」より引用

有栖川有栖 「蒼ざめた星」 同志社大学推理小説研究会時代に執筆した江神シリーズ作品

法月綸太郎 「殺人パントマイム」 京都大学推理小説研究会時代に執筆した犯人当て

霧舎巧 「都筑道夫を読んだ男」 駒澤大学推理小説同好会会誌に収録された作品

我孫子武丸 「フィギュア・フォー」 京都大学推理小説研究会時代に執筆した犯人当て

霞流一 「ゴルゴダの密室」 ワセダミステリクラブ時代に執筆したデイリースポーツ懸賞付き犯人当て

高田崇史 「バカスヴィル家の犬」 中学時代に執筆した作品

西澤保彦 「虫とり」 SF同人誌に収録された作品

初野晴 「14」  第38回オール讀物推理小説新人賞に応募した初投稿作品

村崎友 「富望荘で人が死ぬのだ」 大学時代のミステリークラブ機関紙に収録された作品

汀こるもの 「Judgment」 追手門学院大学文芸部の卒業記念誌に収録された作品

綾辻行人 「遠すぎる風景」 京都大学推理小説研究会時代に執筆した『人形館の殺人』原型作品

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 綾辻さんが、作品の後にあるエッセイで、この「遠すぎる風景」が掲載された会誌「蒼鴉城(そうあのしろ)」の内容を書かれているんですが、ひ~~となるようなお名前が並んでいて、当時、相当ハイレベルな研究会であったと想像がついて、くらくらします。綾辻さんご本人も「なかなか凄い」と書いちゃってるのが微笑ましいです。

>手書きオフセット印刷で刷られた「蒼鴉城」のこの号は、今こうして眺めてみるとなかなか凄い。

 拙作のほかにも法月 綸太郎の「二人の失楽園」(長編『二の悲劇』の原型作品)、我孫子 武丸の「ディプロトドンティア・マクロプス」(同題名の長編の原型作品)、巽 昌明の評論「ひとり遊び」といったタイトルが当たり前のように並んでいる。編集長は法月。表紙は扉の文字のレタリングは小野 不由美。-うむ、やはりこれはなかなか凄い。思い返すだに、ああ青春、ですな。


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冲方 丁 『光圀伝』

2012年11月02日 13時56分50秒 | 図書館で借りた本
 腰が痛~い!751Pのいっき読みをやってしまったせいで、腰がばりばりいってます(苦笑)

○ 冲方 丁 『光圀伝』(角川書店)

 実家の父が揃えた、山岡 宗八の『水戸黄門』を読んでいるので、だいたいの光圀の生涯というものは頭にあったせいか、「水戸黄門は、実はやんちゃで暴れん坊でびっくり!」と、ネットのどこかで紹介で書かれてたほど、本作の光圀の人物像にはびっくりはしなかったです。

山岡さんの小説の、現代口語版を読んだ感じでした。一冊に収めた冲方さん美事!もちろん、冲方さんらしいダイナミックさと、男が惚れる男たちの切磋琢磨っぷりが、読んでいて心地良かったです。特に光圀の父、徳川頼房を含む徳川御三家初代たちの生粋の悪童ぶりったらね~(笑)俺たちは家康の息子だぞ!という矜持っぷりは凄いものがあったんだろうなぁと、しみじみ思いました。

『天地明察』のキャラクターたちも登場して、光圀という人間の生涯とともに、江戸の歴史や人物を360°いろんな角度から見れたなという、俯瞰の気持ちが堪能できました。

読んでいて特に、光圀の正室の泰姫が亡くなるくだりは悲しかったです。私、この女性が好きなんですよ。史実でも小説でも、必ず「才色兼備」と謳われるお姫様で、亡くした光圀は辛かっただろうなぁと思います。小説の冒頭と最後に渡って描かれる紋太夫の処分は、光圀が見い出して育てて末を期待した家臣を、自身で始末するという「上に立つ者の責任」が、ずしりと重く感じられました。


 お話の中盤で、大火で江戸城も城下も膨大な被害をこうむる大火の場面がでてくるんですが、すごく震災の時の私の気持ちと重なる文章がありました。

>日本橋から富士と並んで眺めることのできる巨大かつ荘厳なる天守閣が、地に下りた太陽のように燃え盛っている。その明かりは市中を照らし、まさにこの世の終わりを告げるかに思われた。

>光圀は自分が悲憤に震えているのか、無力感に怯えているのかもわからなくなった。

>これほどまでに激しい思いを抱いたことはなく、同時に、これほど感情を抑えつけて、現実的になさねばならないことを思考し続けたことはなかった。

>果たして、このような体験をした人間は、昨日までの自分と、同じ人間であり続けられるのだろうか。そう思われるほどの、壮絶なる大火の光景であった。


「これほど感情を抑えつけて、現実的になさねばならないことを思考し続けたことはなかった。」

震災からしばらくは、本当にこのとおりでした。嘆くとか辛いとか、そういう気持ちよりも、いまある食料でなんとしても家族を食べさせなきゃいけないという気持ちばかりで毎日を過ごしていて、その反動というのか「昨日までの自分と、同じ人間であり続けられるのだろうか」と、あとからだんだん思うようになりました。

ここでも書きましたが、半年くらいは本が読めなくて。今考えると、非現実の創作が受け入れらないくらい、くたびれていたんでしょうね。家にあった川原 泉さんの漫画を最初に読んで、それからほんとうにぼちぼちと小説が読めるようになりました。あの頃は「本の読めない自分」が怖くて、私は壊れたんだなぁという気持ちがどこかにあったんですけど、いまこうやって時間がたつにつれ、壊れてもまた新しく作られていくんだという実感が持てるようになりました。時間の流れが持つちからは凄いですよね。

一冊で、水戸光圀という”巨人”の生涯をまとめているので、駆け足でお話が進んでいくのがもったいないエピソードがいっぱいあるんですが(幕府がず~っと伊達家を恐れていた話とかね・ふふふ)逆に、登場する豪傑や歴史の教科書で名前しか見たことなかった人たちを、もっと知りたいと思うようになるお話だと思います。ちなみに、今作は「第三回 山田風太郎賞」を受賞しましたから、図書館で予約殺到すると思います、借りて読もうと思ってる皆さんはがんばれ!
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中山 七里 『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』

2012年10月06日 10時09分53秒 | 図書館で借りた本
 いまさらですが、「なかやま ななり」さんと読み違えてました恥ずかしい(凹)本当は「なかやま しちり」さんです。

○ 中山 七里 『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』 (講談社)

>密林から引用

 どんでん返しが止まらない! 怒濤のリーガル・サスペンス!!大森 望氏、推奨!
封印された過去が、新たな「罪」へ。「正義」と「贖罪」の意味を問う驚愕のミステリー。「このミス」大賞作家による新たな傑作誕生!

弁護士・御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄した。死体を調べた警察は、御子柴に辿りつき事情を聴く。だが、彼には死亡推定時刻は法廷にいたという「鉄壁のアリバイ」があった――。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 さくさく読めます・・・・以上。三~五話連続放送のドラマになったらばっちりだと思います。

大森さんは好きな書評家さんだけど、推奨は無いなぁ。デビュー作『さよならドビュッシー』ほどのハイレベルでは無いです。そして、この密林のあらすじを引用したのは、本作にまったく関係ないとは言わないけど、主軸をなんら表現していないのが凄いわ~と思ったから(苦笑)

「鉄壁のアリバイ」なんて、お話の進み方には全然重要じゃなくて・・・なんですよ。この作品を手にとってもらう作戦として、御子柴弁護士というキャラの「異端」を読者にアピールするには良いし、お話の主軸はこの御子柴さんの「異端」な理由が重大な意味を持つので、こういうあらすじを書いたんだと思うんです。これで中身をもっと詳しく書いたら、売りにしている「どんでん返しが止まらない!」の味が落ちるんだろうし、ミステリー本の紹介って難しいですね。



 小説のタイトルに「ソナタ」とつく作品で、私の内では一等なのが、SF作家オーソン・スコット・カードの短編集「無伴奏ソナタ」です。本のタイトルもこれが使われているので、(たぶん)作家さんご本人も一等だと思っているんじゃないかしら。読み終わると、言葉もでなくなるほど圧巻の「音楽を題材にした小説」です。このお話を読んだ後、きっと外を移動する時に、イヤホンで音楽聴いているのがもったいなくなると思う。それくらい、自分の周りにあふれている「音」を大事にしたくなります。

私が持っているのは、昭和60年発行のハヤカワ文庫だから、古本屋さんで探しても、もう置いていないかもしれませんけれども、頭のすみにタイトルをメモして、もしも見つけたらぜひ読んでみて欲しい逸品です。


☆ネットで見つけた、素晴らしい一文。

「街のすべてが打楽器になる。」 from 雨を愛したくなるコピー
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ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部 Q Pからのメッセージ』

2012年09月30日 15時41分22秒 | 図書館で借りた本
 シリーズ三作目は、またしても読み応えたっぷりの内容でした。


○ ユッシ・エーズラ・オールスン 『特捜部 Q Pからのメッセージ』 (早川書房)

>内容紹介

 「特捜部Q」――未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。今回「Q」のカール・マーク警部補と奇人アサドのコンビが挑むのは、海辺に流れ着いたボトルメールの謎。瓶から取り出された手紙の冒頭には「助けて」との悲痛な叫びが。書き手の名前の頭文字はP。しかし、手紙の損傷は激しく、内容の完全な買得は難航した。Pはどうやら誘拐されたようなのだが……。過去の記録に該当する事件は見当たらない。北欧を代表するミステリ賞「ガラスの鍵」賞に輝く著者の最高傑作。人気の警察小説シリーズの第三弾

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 最初にお話の終わりをまず書くのもなんなんですが、全576ページは、ラスト3ページの為にあったんじゃないかという、圧巻の終わり方。救いようのない犯人の歪みが生み出した残虐な犯罪の被害者たちが、犯人はけっして手の及ばぬであろう魂の救済を迎えるのを読んで、満足のため息が出ました。

今作のもっとも巧みな部分は、「特捜部 Q」の三人のメンバーの、人間臭い弱みとか悩みとかが存分に描かれ、それと対照的に、宗教の異様な教えにがんじがらめになって息もできない大人や子どもたちが描かれることによって、自身の宗教観や社会観を考えさせられるところでしょう。

犯人は・・・同情の余地も無いと書くと、あんたどれだけえらい人間なのさ?と言われそうですが、文中で犯人が、

>神の名を語れば、他の誰よりも自分が上でいられると思っていられるやつは、みんな地獄へ堕ちろ。そんなやつらが憎かった。そんなやつらを全員、この世から消し去りたかった。 

と語るのを読むと、宗教って人間を救うものじゃないの?という、根本的な疑問が頭をもたげてきます。こういう人が日本のゆるさを体感したら、カルチャーショックというか、もう頭にくるよね、きっと(苦笑)「なんで日本は、キリスト教の布教率がこんなに低いんだ?」と海外の人たちが語るスレを読んだこともありますしね。私は八百万の神様がおいでという考え方が、とっても好きですけど、一神教は大変ですよねぇ。


巻末解説に、四作目の内容がちらっと書かれていて、嬉しくなりました。長く続いて欲しいシリーズですけど、このハイレベルな品質でどこまでいけるかしらとも思います。
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