遥か遠い時代の出来事や古典を題材にした五つの短編が、万城目さんの筆によって、なんとも見事に生き生きとした情感を持って迫ってきます。読んで「面白かった~」と心から言える作品に出会えるって、本当に嬉しいです。
・「悟浄出立」 「西遊記」の沙悟浄(&八戒)
・「趙雲西航」 「三国志」の趙雲(&張飛)
・「虞姫寂静」 虞美人(&関羽)
・「法家孤憤」 始皇帝暗殺未遂事件の頃 京科(&荊軻)
・「父司馬遷」 司馬遷が罰を受けた頃 娘・榮(&司馬遷)
後半の三作は「史記」というか中国の歴史が題材なのですが、小説を読んだり歴史の授業でちょっと齧っただけの私でも面白いと思いました。なので、お好きな方はたまらんと思います。(ごめん「三国志」も横山 光輝さんの漫画を読んだだけです)
★「新潮社 / 波 【万城目学『悟浄出立』刊行記念インタビュー】万城目 学/ずっとこんな話が書きたかった 」
( http://www.shinchosha.co.jp/nami/tachiyomi/20140728_01.html )より引用
万城目:「中学生で読んだ吉川英治の三国志や水滸伝から始まって、高校に入ってからは陳舜臣さんにはまりました。中国ものに限らず、中高生のときの読書は七、八割が歴史小説でした。中学一年生のときに骨折して、山岡荘八の『徳川家康』二六巻を一ヶ月かかって読んだこともあります。」
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同志!と声をかけたくなってしまいました(笑)私も確か万城目さんと同じ中学生の頃に、実家の父の集めた『徳川家康』や『水戸光圀』や『伊達政宗』を読みました。この年ごろって、長編を読破するエネルギーがあるんでしょうね~(笑)
同じくインタビューの中で万城目さんが、女性の主人公(『虞姫寂静』と『父司馬遷』)を書くにあたって、
「今回の二人は――特にこの時代の女性ですから――いい意味での視野の狭さがあるのかなと思います。目の前に一人の男がいて、その男しか見えず、ただぶつかっていくという気持ちで書きました。」
というお気持ちを伺って、なるほどと思いました。
古代に生きた女性の(それゆえの哀しさもあるんですが)健気で、熱くて、美しい心根に触れた清々しい読後感に、とても胸が満たされました。私は特に、虞美人を題材にした『虞姫寂静』が一番好き。一瞬風かと聴き間違えるほどの低い声で歌われる「楚の歌」が聴こえてくるから冒頭から、項羽と虞美人の過ごした時間と知らされる衝撃の事実。勝利を願う男たちの歌と舞いが終わった時の虞美人の最期の表情まで、読んでいて映像が観えるかのようでした。「その男しか見えず、ただぶつかっていくという気持ち」・・・・虞美人は、真に美しい女性だったに違いないです。
ところで、この本の帯にある「俺はもう、誰かの脇役ではないのだ」(表)「なぜか「主役」になれない人へ」(裏)という言葉は、好きじゃないです。五つの作品すべての登場人物が、素晴らしい作品なのに、帯の言葉にケチつけられるって、まさに本末転倒(苦笑)
* おもいっきり横道 *
「悟浄出立」は、本当は万城目さんが”中島敦の小説『わが西遊記』から着想を得た”と仰っておられる、まじめなお話なんですが、「最遊記」愛読者としては、天蓬元帥(八戒)が如何に凄い軍師だったかと語られる文章がでるたびに、ニヤニヤが止まらなくなりました。捲簾大将(悟浄)がもんもんと悩む場面も同様。このお話を峰倉 かずやさんが漫画化したら、いまのシリーズまんまでいけると思います(真顔)愛読者の方は、ぜひ脳内変換してみて下さい。
・「悟浄出立」 「西遊記」の沙悟浄(&八戒)
・「趙雲西航」 「三国志」の趙雲(&張飛)
・「虞姫寂静」 虞美人(&関羽)
・「法家孤憤」 始皇帝暗殺未遂事件の頃 京科(&荊軻)
・「父司馬遷」 司馬遷が罰を受けた頃 娘・榮(&司馬遷)
後半の三作は「史記」というか中国の歴史が題材なのですが、小説を読んだり歴史の授業でちょっと齧っただけの私でも面白いと思いました。なので、お好きな方はたまらんと思います。(ごめん「三国志」も横山 光輝さんの漫画を読んだだけです)
★「新潮社 / 波 【万城目学『悟浄出立』刊行記念インタビュー】万城目 学/ずっとこんな話が書きたかった 」
( http://www.shinchosha.co.jp/nami/tachiyomi/20140728_01.html )より引用
万城目:「中学生で読んだ吉川英治の三国志や水滸伝から始まって、高校に入ってからは陳舜臣さんにはまりました。中国ものに限らず、中高生のときの読書は七、八割が歴史小説でした。中学一年生のときに骨折して、山岡荘八の『徳川家康』二六巻を一ヶ月かかって読んだこともあります。」
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同志!と声をかけたくなってしまいました(笑)私も確か万城目さんと同じ中学生の頃に、実家の父の集めた『徳川家康』や『水戸光圀』や『伊達政宗』を読みました。この年ごろって、長編を読破するエネルギーがあるんでしょうね~(笑)
同じくインタビューの中で万城目さんが、女性の主人公(『虞姫寂静』と『父司馬遷』)を書くにあたって、
「今回の二人は――特にこの時代の女性ですから――いい意味での視野の狭さがあるのかなと思います。目の前に一人の男がいて、その男しか見えず、ただぶつかっていくという気持ちで書きました。」
というお気持ちを伺って、なるほどと思いました。
古代に生きた女性の(それゆえの哀しさもあるんですが)健気で、熱くて、美しい心根に触れた清々しい読後感に、とても胸が満たされました。私は特に、虞美人を題材にした『虞姫寂静』が一番好き。一瞬風かと聴き間違えるほどの低い声で歌われる「楚の歌」が聴こえてくるから冒頭から、項羽と虞美人の過ごした時間と知らされる衝撃の事実。勝利を願う男たちの歌と舞いが終わった時の虞美人の最期の表情まで、読んでいて映像が観えるかのようでした。「その男しか見えず、ただぶつかっていくという気持ち」・・・・虞美人は、真に美しい女性だったに違いないです。
ところで、この本の帯にある「俺はもう、誰かの脇役ではないのだ」(表)「なぜか「主役」になれない人へ」(裏)という言葉は、好きじゃないです。五つの作品すべての登場人物が、素晴らしい作品なのに、帯の言葉にケチつけられるって、まさに本末転倒(苦笑)
* おもいっきり横道 *
「悟浄出立」は、本当は万城目さんが”中島敦の小説『わが西遊記』から着想を得た”と仰っておられる、まじめなお話なんですが、「最遊記」愛読者としては、天蓬元帥(八戒)が如何に凄い軍師だったかと語られる文章がでるたびに、ニヤニヤが止まらなくなりました。捲簾大将(悟浄)がもんもんと悩む場面も同様。このお話を峰倉 かずやさんが漫画化したら、いまのシリーズまんまでいけると思います(真顔)愛読者の方は、ぜひ脳内変換してみて下さい。