ボリショイ劇場が『白鳥の湖』『眠れる森の美女』などの映像を、公式YouTubeで配信することを発表しました。この試みはボリショイ劇場が初めて行うもの。ウラディーミル・ウーリン劇場総裁は「(この配信で)芸術を愛する方々の心が少しでも晴れやかになり、心地よく過ごしていただく一助になれば嬉しいです」と語っています。
(Japan Arts)
今週末はワタクシも大人しく引きこもり生活をしております。といっても、もともと劇場通い以外はインドア派なので、いつもの週末と大して変わりないのですが。
先ほどこのブログのアクセスでボリショイの白鳥の記事が上位にきていたのでなんでかな?と思ったら、ボリショイ劇場が昨夜から24時間限定でザハロワの白鳥の湖をyoutubeで配信してくれていたんですね 映像は2015年1月にモスクワで収録されたもので、私が2014年11月に東京で観たのと同じキャスト。嬉しいありがとう、ウーリン総裁!久しぶりにバレエを観て(最近はクラシック音楽ばかりだったので)、バレエはやはり総合芸術なのだなあと改めて感じました。
しかしモスクワも劇場閉鎖かぁ…。私の人生の中で地球規模で劇場どころか大都市が次々封鎖になる事態が訪れようとは…。
シフは無事に帰国できたのかな…。イタリアに帰国していてもイギリスに帰国していても心配だけれど、といって日本にいるのが安全なわけでもなく…。あのリサイタルから一週間。ほんの少し前までは米国ツアーが無事に行われますようにと祈っていたのに、その米国が中国もイタリアもスペインも抜いて感染者数一位の国になるとは誰が想像したろう。一週間後の日本の状況がどうなっているかだって、全く想像できない…。
とはいえコロナウィルスとの闘いは長期戦。不安がってばかりいても仕方がないので、ワタクシの引きこもり生活の過ごし方の第一弾は、これまでの演奏会で聴いたアンコール曲の振り返りです
演奏会って予習はしてもゆっくり振り返る時間はあまりとれていなかったので、次の舞台鑑賞の予定もなく時間だけはたっぷりある今、いい機会だなと。
Schubert: 4 Impromptus, Op.90, D.899 - No.3 in G flat: Andante
先日の演奏会のアンコールで、シフが最後にもう一度舞台に戻って弾いてくれたシューベルトの即興曲op.90-3。
シフはインタビューの中でこんな風に言っています(例によってワタクシ訳です)。
「シューベルトの即興曲はとても親密な作品で、大勢の聴衆へ向けられたものではありません。シューベルトはそれらを居間で親しい仲間のために演奏しました。ですからたとえ今日(こんにち)大きなホールで演奏する場合でも、私達はその場所を小さな空間へと変容させなければなりません。彼の即興曲は無言歌であり、告白であり、恋愛詩のようなものです。しかし、その根底にはいつも自然があります。シューベルトは音楽を部屋の中から外の自然へと連れ出した作曲家であると私は思います。彼の音楽にはいつも森の囁き、吹く風、そして必ず水の、小川のせせらぎが聞こえます。シューベルトはオーストリアの国内を旅しましたが、そこから外へ出て海を見たことはありません。これは伝記的にとても興味深いことです。シューベルトの音楽や歌曲集『美しき水車小屋の娘』などで聴こえる水の音、即興曲の中でも多く聞こえる水の音は、小川を流れる水です。それより大きな川でも、ましてや海では決してありません。」
シューベルトは音楽を部屋の中から外の自然へと連れ出した作曲家だと。先日シフがこの曲を演奏し始めた瞬間、彼の周りに小川が見えました。米国ツアーのキャンセルが既に決まっていたこの夜、私達がこれからどのような生活になっていくかを感じていたシフが、最後にこの曲を私達にプレゼントしてくれたのかな、というのは考えすぎかな。でもあの夜のこの曲の音色を思い出すだけで、私は部屋の中にいても小川のせせらぎや吹く風や木々の囁きを感じることができています。ありがとう、シフ。
Schubert - Impromptu op. 90, no. 3 G flat
レオンスカヤが2018年の東京文化会館でのシューベルトチクルスの最後に演奏してくれた、同じくop.90-3。シフのこの曲が小川のせせらぎなら、レオンスカヤのこの曲は春風に揺れるアネモネの花
4月に聴けるはずだったレオンスカヤのブラームス、ベートーヴェン、モーツァルト、聴きたかったなあ。いつかまた聴ける機会があるだろうか…。
東京・春・音楽祭もラ・フォル・ジュルネも、全公演が中止になってしまいましたね…。オケもソリストも招聘会社も、この事態が終息するまでなんとか持ち堪えてほしい…。ていうか政府もなんとかしなさいよ!!
ちなみにop.90-2もシフとレオンスカヤはそれぞれアンコールで弾いてくれています。
Schubert: 3 Klavierstücke, D.946 - No.2 In E Flat (Allegretto)
ピリスが2018年の最後の来日の時に、サントリーホールの第二夜のアンコールで弾いてくれたシューベルトの3つのピアノ曲D946-2。
シューベルトが死の半年前に作曲した曲。彼が亡くなったのは1828年、31歳の時。その後40年間忘れ去られていたこの曲を1868年に匿名で編集し出版したのが、ブラームスでした。匿名というところがブラームスらしい。
あの日サントリーホールでピリスのこの演奏を聴きながら、ピリスもシューベルトも最後まで私達にこの世界の美しさを教えてくれるのだな、とそんな風に感じていました。
ピリス、ときどきFBを覗きますが、お元気そうですね シューベルティアーデの演奏会、とても素敵。着々と夢を実現されているんですね。今も時々大きなホールでも演奏されているようだけど、来日は…やっぱりもうないのだろうなあ…。
と、久しぶりに彼女のFBを覗いたら、Deutsche Grammophonが今日(28日)を”#WorldPianoDay #StayAtHome”としてyoutubeでライブストリーミングをしてくれている…!ピリスやトリフォノフやチョ・ソンジンやキーシンがそれぞれの自宅から出演。カナダのカルガリーのヤン・リシエツキの部屋が素敵だ…。ピリスはポルトガルのbelgaisから?ですよね。このお部屋もとっても素敵(YAMAHAのピアノだ)。ピリスは「ベートーヴェンは信念の人であり、希望の人であり、正義のために闘った人であり、沢山の思いやりと純粋な魂をもった人で、それは彼の音楽に表れている」と。「彼の音楽は私達の現在と未来にために多くの大切なことを教えてくれる」と。そして最後のトリフォノフの姿に、いま世界が対峙している現実から目をそらしてはいけないことを思い知らされる。こうして世界中のアーティストが繋がって、助け合っているのだなあ。。。今は皆が助け合うとき、というシフの言葉を思い出す。kajimotoのシフのライブストリーミングへもシカゴやベルリンやイタリアの人達が感謝のコメントをしていた。ザルツブルクのシフ夫妻の友人らしき人達も「彼らが近くにいるように感じられて嬉しい」と。
コロナが原因で街から人が減って空気や水が綺麗になって、自然から見たらウィルスは人間の方だったのではないかというtwitterの呟きに頷いてしまうところもあるけれど、やっぱり人間も美しいね。。。そう思わせてくれる人達と音楽に感謝。
なおシフも3年前のアンコールでこの曲を演奏してくれていて、そちらも素晴らしかったです。
Maria Joao Pires Beethoven, Chopin & talk about piano competitions
0:57~。ピリスが最後の来日の時にサントリーホールの第一夜とNHKホールの協奏曲の後のアンコールで演奏してくれた、ベートーヴェンの『6つのバガテル』Op.126-5。ベートーヴェンの晩年に書かれた最後のピアノ曲。
またピリスの演奏を生で聴きたいなあ。たぶん無理なのはわかっているけれど…。ピリスのピアノの素直な音が大好きです。
ちなみにシフは3年前のアンコールで『6つのバガテル』からOp.126-4を弾いてくれて、そちらも最高に素敵だった。
こんなことをしていると外出自粛も全く苦じゃないというか、忙しいときにはできなかったことが色々できる時間ではあるけれど。
本当に、日本も世界も、これ以上犠牲者が増えないでほしい。。。こんな状態は悲しすぎるし、辛すぎます。。。
なお上記のDeutsche Grammophonのライブストリーミングは今日から3日間視聴可能とのこと。そんな優しさでさえ今は沁みる。。
※真央君もおうちから。この飾らなさがいいねえ
コンサートや音楽祭の中止が続きますが、感染が拡大する事なく安心できる日々が戻って来ることを祈るばかりです。おうちでコンサートしてみました😄
— Mao Fujita 藤田真央 (@DeBay1128) March 28, 2020
シューマン:子供の情景より第12番「眠っている子供」#おうちで真央 pic.twitter.com/PotgZ1ORTg
※3月23日のポゴレリッチからのインスタメッセージ
"I always prefer to communicate to my audience with music rather than words but at this moment it seems to be impossible. I am here safe at home in Switzerland and I would like to address this message to the audiences of Bern, Munich, Paris, Taranto, Jaén and Essen, cities where I was supposed to play. I know that many of you were looking forward to attending these concerts and I am very sorry that they could not take place due to the current situation. These concerts are being rescheduled and I truly believe we will see each other very soon. This is a difficult and severe situation, something that we have not yet experienced. I would like to emphasise that we have to stay optimistic and positive as this will end one day. Please above all keep safe and look after yourselves and your families. Sincerely, Ivo Pogorelich”
「私はいつもは言葉よりも音楽で聴衆とコミュニケーションをとるのを好みますが、今の状況ではそれが不可能です。私はスイスの自宅で無事です」と。よかった!そしてポゴレリッチも欧州ツアーがキャンセルになっていたんですね・・・。シフと同じく、あのラヴェルを日本で聴けたのは本当にぎりぎりだったのだな・・・。あの頃はまさかヨーロッパが今のような状況になるなんて思ってもいなかった。たった1ヶ月前の話なのに。日本もどうなってしまうのだろう・・・。
でもポゴさんもシフと同じように「I would like to emphasise that we have to stay optimistic and positive as this will end one day.」と仰っている
落ち着いて、前向きに頑張ろう!