例によって、会期終了ギリギリに行くワタクシ。
ダヴィンチ以外の作品も多く展示されていましたが、自分用記録として、主にダヴィンチによる作品をここに残しておきますね。
以前にも書きましたが、私は画家の体温を身近に感じられる素描というものが大好きでして。今回も沢山展示されていて、幸せでした
レオナルドは、時間の経過とともに移り行く美の姿を、長くとどめることができるものこそが絵画であると考え、人間や自然の観察を行い、何千枚もの素描に描き留めました。「素描は極めて卓越しているのでそれは自然の作品を研究するだけではなく、自然が生み出す以上の無数のものを研究する。」(『絵画の書』133)と述べています。(公式HPより)
レオナルドは「絵画は、詩や音楽や彫刻に勝る最上のもの」と考えました。ミケランジェロと対照的です(そして二人は犬猿の仲であった)。
レオナルドは『絵画論』のなかで、彫刻は肉体労働であり、土にまみれて不潔だと書き、その反対に絵画は頭脳労働で清潔、優雅な作業だと述べている。対するミケランジェロは、絵画は浮彫りに近ければ近いほど良く、しかし浮彫りは絵画的になればなるほど悪くなる、と述べている。(池上英洋 『ルネサンス 天才の素顔』より)
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《羊飼いの礼拝のための研究》 1478-1480年
紙、金属尖筆、ペンと褐色インク
7.4×9.8cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《ユダの手の研究》 1495年頃
赤い地塗りをした紙、赤チョーク、鉛白によるハイライト
20.8×16.1cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
『最後の晩餐』のユダの右手。あのもととなった素描かと思うと・・・(興奮)
またイタリア行きたいなぁ。。
しかしこういう絵は美大生などが見るとさらに楽しめるのでしょうね~。
レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子 《手の研究》 1495年頃
赤い地塗りをした紙、赤チョーク、白チョーク
20.8x16.1cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
上が弟子で、下がレオナルド・・・?
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《子どもの脚の研究》 1502‒1503年
赤い地塗りをした紙、赤チョーク
13.5×10cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
可愛い・・・
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《子どもの研究》 1502‒1503年
赤い地塗りをした紙、赤チョーク、鉛白による
28.5×19.8cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
「聖アンナと聖母子」のイエスの習作。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《花の研究》 1504年頃
紙、銀の尖筆、ペンと褐色インク
18.3×20.1cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《受胎告知の天使のための左手と腕の研究》 1505年頃
紙、金属尖筆、赤チョーク、白チョーク
22.3×16.2cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
この絵の完成形である「受胎告知」は今はないそうです。
「洗礼者ヨハネ」の左手の習作ともいえる作品。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 『鳥の飛翔に関する手稿』第10紙葉裏と第11紙葉表 1505年
紙、ペンと褐色インク、赤チョーク、21.3×15.4cm、トリノ王立図書館
人間の飛行の実現のため鳥の飛翔を観察したレオナルドの直筆研究ノート。左利きのレオナルドは、すべて「鏡文字」で書いています(※買い物メモを除く)。左頁には赤チョークで男性の顔のデッサンが。レオナルドは思いつきでどこにでもデッサンしたのだそうな。当時は紙が貴重だったのもその理由?
しかしこの手稿が、ノートの形でそのまま目の前に展示されているという事実が夢のようです。500年の時を超えてそこに50代のレオナルド本人がいるようでたまりません。
Theメインというように展示されている糸巻きの聖母と違い、こちらはめっちゃサラリと展示されていました。しかし横にはしっかりガードマンが。見ている人も少なく、目の前で見放題でした。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 《糸巻きの聖母》 1501年頃
油彩・板、48.3×36.8cm、バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト
遠く将来を見つめているようなイエスの眼差し、そんなイエスを見つめるどこか寂しげなマリアの眼差しが、しっとりと美しいです
「糸巻きの聖母」という主題は、1501年に修道士ピエトロ・ダ・ノヴェッラーラがマントヴァ侯妃イザベッラ・デステに宛てた手紙の中で、レオナルドがフランス国王ルイ12世の外交官フロリモン・ロベルテのために取り組んでいた作品として言及されています。その手紙にある作品の描写と本作の構図が完全には一致しないため、研究者の中で議論が続いています。しかしながら、現在の研究では、背景は後世に加筆されたが、構図の中心である聖母子および前景の岩の描写は、レオナルド本人の手になるという意見が多数になっています。…前景の岩は、レオナルドにしかなしえない高度な技術で描かれています。時間の経過とともに変化する地質学の研究成果が表現されており、科学者、自然の観察者としてのレオナルドを思い起こさせます。また、遠近法を応用した歪み像のような聖母の顔、幼子イエスの、斜めの軸を中心に回転しているかのような体の描写に卓越したものを感じます。
(公式HPより)
素人の私などは、真作でも贋作でも美しければいいように思ってしまいますけども。
赤外線調査によるとマリアの左奥の岩の辺りには、聖ヨセフが赤ん坊用の歩行器を作っている様子が描かれていたそうです。完成版では塗りつぶされています。
レオナルド派(スペイン人フェルナンド周辺?) 糸巻きの聖母(スティーヴンソン・バルンの聖母) 1501-1525年
スコットランド・ナショナル・ギャラリー
作者が当時レオナルドのフィレンツェの工房で見た準備素描をもとに描いたと推定される作品(これも今回展示されていました)。左奥に歩行器が見られます。
しかし今回の展示を見て、レオナルド・ダ・ヴィンチという人は本当に「天才」というか「多才」という言葉がピッタリな人だったのだなぁ、と改めて思いました。
何にでも「なんでだろう?」と疑問を持ち、するとその先を追究しないではいられないようで、その思考方法もイチイチちゃんと現実的(その良い例が鳥の飛翔の手稿)。宮殿や橋の設計をしたと思ったら、機械仕掛けのライオンを作ったり、それらが同時進行だったりするのですから(しかし自分の中で納得すると?製作途中で投げ出してしまう^^;)、私のような怠け者は年表に書かれた出来事の多彩さを眺めているだけでクラクラです(@@)。その67年の人生の中身の濃いこと。
「立派に費やされた1日が快い眠りを与えてくれるように、立派に費やされた人生は快い死を与えてくれる。」 (レオナルド・ダ・ヴィンチ)
レオナルドには遠く遠く遠く及ばなくとも、自分なりにそういう一生を生きたいものであるなぁ。(と、願望形で書いてる時点で・・・)
レオナルド・ダ・ヴィンチ『鳥の飛翔に関する手稿』 江戸東京博物館「レオナルド・ダ・ヴィンチ ─ 天才の挑戦」
レオナルド・ダ・ヴィンチ《糸巻きの聖母》 江戸東京博物館「レオナルド・ダ・ヴィンチ ─ 天才の挑戦」