駅からとーっても遠かったですけれども、頑張って行ってまいりました、猿之助の襲名披露巡業。
2階席が2500円というお値段は、巡業ならではですね。
ちなみに、私にとって初の澤瀉屋メインのお芝居です。
演目も、2つとも初見。
【毛抜】
はっきり申しますと、、、とても退屈でございました。。。
もしかしたら、私には荒事の魅力を感じ取る感性がないのかもしれん。。。
大声で笑っているお客さん達は、本当にあのお芝居を面白いと思っているのだろうか。
一度でいいから、気持ちの醒める暇もないほどわくわくする荒事芝居に出会いたいと切に切に思います。。。(助六は大層楽しかったですが、あれは少し和事ミックスですよね)
右近さん。
とても上手な役者さんだと度々耳にしていたので楽しみにしていたのですが、お上手・・・なのでしょうか・・・。
決して下手だとは感じませんでしたが、鼻にかかったようなお声なので台詞がとても聴きずらく、正直とてもストレスでした。。。
ただ次の口上は、声量があり堂々としていて、カッコよかったです。
猿弥さんは、おそらく旧歌舞伎座で観た『天守物語』以来だと思いますが、あまり当時と印象は変わらず。
全く悪いところはないのだけれど、無難な感じだなぁ、と・・・。
【口上】
やはり襲名披露の口上というのは、普段の口上と違い、特別な感じがするものですね。
今日は巡業の千穐楽だったので、猿之助がそれについても触れていました。
「巡業というより強化合宿のようでした」とも、笑。
一か月間、おつかれさまでした!
そして梅玉さんの口上にあった、今年に入って何度聞いたかわからない「これからも歌舞伎をよろしく」の言葉。
歌舞伎役者の方々の危機感がひしひしと伝わってきて、さすがにこれだけ聞き続けると寂しくなってきます。。。
私は見捨てないよ!!!
と言いたいけれど、先ほどの『毛抜』でちょっとくじけそうになりました。。。
いや、もちろん歌舞伎は観つづけますけれど!
【義経千本桜~四の切~】
猿之助の狐忠信、さすがに上手ですね。
この役に、ものすごくぴったりだなぁと思いました。
顔から体つきから声から身体能力から、現在の歌舞伎界でこれほどこの役が似合う役者は他にいないのではないでしょうか。
ただ、これでもだいぶ余分な力がとれたとの評判ですが、私にはまだ「演技の巧さ」(俺、巧いでしょ?的な…)というのが表に出てしまっているように見えました。
それでも彼のような勢いと才能とカリスマ性のある役者は歌舞伎の未来には不可欠だと思うので、これからも応援していきたいと思います。
なにより、彼がお芝居に対して全力なのが伝わってきましたから。
今日のお芝居全体の感想としては、『毛抜』でも『四の切』でも、演目は古典でも役者さん達の空気がひどく現代的に感じられ、観終わった後、なんだか無性に“歌舞伎らしい歌舞伎”が観たくなってしまいました・・・(何をもってそう感じるかは、人それぞれだと思いますが)。
芸の技巧や理屈を超えた、“のんびりとした歌舞伎らしい空気”とでも言いましょうか。
そういう空気が、懐かしくなりました。
だからかもしれませんが、今日は梅玉さんの義経の存在にひどくほっとしました。
この舞台にいてくれてありがとう梅玉さん・・・って思った。。
門之助さんの静御前も、情が感じられる優しい静で良かったと思います。
次回の歌舞伎は、来月の竹三郎の会。猿之助は竹三郎さんにとても懐いていて、この会にも自ら出たいと名乗りを上げたとのことですので、女團七をどんな風に演じてくれるのか、とっても楽しみです。
そして、十月の歌舞伎座の義経千本桜も、ますます楽しみになりました(こちらは音羽屋型ですよね?)
※追記:
いま気付きましたが、私、何年も前に澤瀉屋メインのお芝居を一度だけ観ておりました。
主役は海老蔵でしたが、『伊達の十役』です。
ちなみに、これまでに観た全ての歌舞伎の中で、最も印象に残っていない舞台です・・・(海老蔵の早変りしか記憶にない・・・)。
今思うと、人生3度目の歌舞伎鑑賞だった『天守物語』で「いいな」と思ったのが、門之助さんの舌長姥、吉弥さんの薄、そして我當さんの桃六でしたから、人の好みって変わりませんね。歌舞伎など全く見慣れていなかったにもかかわらず、可笑しくなるほど今と好みが同じ。
《インタビュー》
・猿之助が語る「松竹大歌舞伎 東コース」
今月の歌舞伎座は、夜の部『東海道四谷怪談』のみの鑑賞です。
7月は四季やらバレエやら松竹座やらと色々あったため、楽直前での鑑賞となりました。
久々の花形。
先日の仁左衛門さんのような「すごいの見た…」という感動はさすがになかったものの、初見の演目だったのでとても楽しめました♪
四千円でこれはお得。
3階最後列でも七三がはっきり見えるのが、つくづく有難かったです。
染五郎の伊右衛門。
染五郎の舞台をまともに観るのは実は初めてなのですが、声も仕草も幸四郎さんにそっくりで驚きました。血ってすごいなぁ。
でも幸四郎さんだけじゃなく、何か違うものが混ざってる・・・これは何だろう。
と一幕目でモヤモヤしていたところ、幕間の隣のおばちゃん達の会話であっさり解決。
「幸四郎よりも吉右衛門に声がそっくりね~」
「叔父と甥だからね~」
それだ!
声だけじゃなく台詞の言い回しも、時々吃驚するほど吉右衛門さんにそっくり!
染五郎は吉右衛門さんにも稽古をつけてもらったりしているらしいですが、それにしても似すぎてる。
つくづく、血ってすごいですねぇ。
彼にはぜひこの路線をつき進んで行っていただきたい。
さて、今回の伊右衛門。
なかなか良かったと思います。
色気も思っていたよりはありましたし、いかにもお梅のような子が好きになりそうなタイプの美形。
しつこさのない軽い伊右衛門なので、お岩を捨ててお梅にあっさりと乗りかえるところに説得力がありました。お岩の着物から蚊帳まで全部持ち出そうとするところの身勝手な男の演技、よかった。
幸四郎さんの演技にある一種の“クサさ”が彼にはないのも、私には好印象でした。
これからもっともっと磨いて、素敵な伊右衛門を作り上げていってほしいな。
菊之助のお岩/与茂七/小平。
こちらも可笑しくなってしまうほど父親そっくりの美貌&声の良さ。
登場した瞬間、やっぱり菊ちゃんは華があるな~と感じました。
与茂七がすっきりとカッコよくて絶品!
あいかわらず女形よりも立役の方が色気がある菊ちゃん^^;
主君の仇討ちのために身をくらませて奔走していても、売春宿には行っちゃいます。
直助からお袖を守るようにさっと動くところ、スマートで惚れ惚れした。
そして、地獄宿を去るときに直助に投げる超イヤミな捨て台詞。
「雨が降らないといいがな。なんせ今夜は振られ男がいるからなぁ」
菊ちゃん、こういうのほんと上手いね笑!
先月の助六の「ざまぁみやがれ!」を思い出すわ~。
そして悔しがる直助にお袖ちゃんとのラブラブっぷりを思い切り見せつけながら、花道を去る菊ちゃん。最高でした^^
小平。
やたらと美しく立派な小平で、どうなのかなぁ?と一瞬思いましたが、考えてみれば小平は昔の主君のために自分の命に替えても薬を手に入れようという心意気のある男なので、これくらい立派でも案外いいのかも。
と思おうとしてみましたが、やっぱり下男にしては少々華がありすぎるかな・・・^^;
お岩。
武家の娘らしい凛とした雰囲気がとてもいいと思いました。
また、毒で顔が崩れた後も、菊之助は若くて美しいので、客席に横顔を向けたときに左右の違いが際立っていて、大層見応えがありました。
お岩は死んでからというよりは、実質的には髪梳きの場面で恨みが爆発し、幽霊となったのですね。なるほどと思いました。
ただ、菊ちゃんのお岩は伊右衛門に対する愛情(執着)がとても希薄で、父親の敵討ちという目的のためだけに一緒にいるように見えるので、伊右衛門に裏切られたときの“悲しみ”はあまり伝わってこなかったです。どんなに激しく嘆いていても、淡々と見えてしまう。この淡々さは玉さまのお稽古のタマモノかしら。。
だったら幽霊になった後も玉さま譲りだとよかったのですが、こちらはオドロオドロしさが全然で・・・(怒りは全開だけど)。
思えば5月の花子も、妖しさは皆無だったものなぁ、菊ちゃん。あのときは玉さまが妖しさ担当だったから無問題だったが。。
さらにこの感覚、先月の土蜘の菊五郎さんに感じたのとまったく同じ。。。そうか、このオドロオドロしさ皆無はお父さん譲りか。。。そんなところまで似なくてよいのに。。。
松緑の直助。
染五郎の伊右衛門とともに、「ワルい男達がつるんでる」雰囲気がよく出てました。
花道での悪巧みが可愛かった笑。
台詞まわしが一本調子に聞こえましたが、菊之助&染五郎とまた違った個性で、三人三様で舞台のバランスがよかったです。
梅枝のお袖。
とってもよかった。気が強くて可愛い、でもしっかり者のこの役にぴったりでした。
地獄宿での与茂七とのケンカが可愛かった。
松緑の直助&菊之助の与茂七と3人で、三角屋敷をぜひ観たいです!
右近のお梅。
好きになったらただ一筋、全く悪気がないからこそひじょ~にハタ迷惑な若い女の子の雰囲気がよく出ていました。
亀三郎の庄三郎。
菊ちゃんに劣らず、通りのいい声ですね~。
与茂七と二人の場面、まったくストレスなく観られました。
それと、小山三さんのお色。
92歳というご年齢がどうこうでなく、あの「味」、とてもいい。
この方のおかげで、地獄宿の場面に面白味と深みが増していました。
いつまでもお元気で頑張っていただきたいです。
三十年ぶりという「蛍狩(夢)の場」は、私はとてもいいと思いました。
四谷怪談って濃縮したドロドロ内容なので、ここだけストーリーが進まない綺麗なだけの時間に、ほっとする。
それに、二人にもこんなときがあったのだという光景を描くことで、現在の物語をより厚みをもって観られるようになると思うのです。岩はもちろん、伊右衛門にも伊右衛門なりの岩への愛情はあったろうし、なにより二人だけが知っている時間や分け合ってきた思い出が、確かにあったのですよね、この二人にも・・・(もっとも菊之助の岩は伊右衛門への愛情が希薄なので、この夢の場を見てもそういう機微はあまり伝わって来ませんが^^;)。
時間も長くないし、毎回やればいいのに。
菊ちゃんの舞踊も見られて満足。
もっとも染五郎の殿様というより平安貴族のような化粧は、夢の世界を演出したのだと思いますが、伊右衛門に見えず違和感。。
そしてこの夢の場でとくに思ったのですが、染&菊ちゃんは、カップルとしてはいまひとつしっくりこないように感じました。気になるほどではないのですが、たとえば『喜撰』の三津五郎さん&時蔵さん、『杜若~』の亀鶴さん&福助さん、『毛谷村』の愛之助&壱太郎のときのような「この二人ピッタリ!」という感じは受けませんでした。
「戸板返し」、「提灯抜け」、「仏壇返し」。
まんまと驚かせていただきました。楽しかった!
「堀の場」のだんまりは、“だんまり”だと気付くまでひどく時間がかかりました^^;
先日の松竹座の“だんまり”はやっぱりうまかったんだなぁ、と再確認。
最後は、伊右衛門と与茂七がぱたりと闘いをやめ、刀を置いて、客席に背を向けて正座。
そして、改めて客席に向き直り、「まず、今日はこれぎり」の挨拶。
きっぱりとスマートな幕切れで、歌舞伎らしくてよかったです。
染五郎も菊之助も見目がいいので、目の保養。
まさかのストレス解消系のラストに大満足でした♪
あとこの夜は、毒を飲む場面の客席の静寂と緊張感がすごかったです。
4月の盛綱の首実検を思い出しました。
歌舞伎座はハコが大きいので、あれだけの人数が静寂になると迫力ありますね。
まあハコが大きいので、普段は緊張感がなくなり、私語も多くなるわけですが。。
でも菊ちゃん、ちょっと引っ張りすぎじゃない?
来月は、仁左衛門さん&竹三郎さんの四谷怪談です!
ああもう、楽しみすぎてどうしよう(><)
無理してチケットとってよかった!!
今月の筋書。
「花形の未来を思わせる元気な朝顔」と紹介されておりますが・・・。
今月の演目のせいで、私には「血の中に咲く朝顔」にしか見えませんでした^^:
現代的でいい感じ♪
《インタビュー》
・「東海道四谷怪談」尾上菊之助
ここ数年は恒例のように海外へ出ておった私ですが、今年は観劇にお金を使いすぎてしまったため、行けないのです。。
そんななか、先ほど坂東彌十郎さんのツイッターを読んでしまい。
旅に出たいーーー(><)!!!
な気持ちでいっぱいになってしまいました。。。
もともとが、中毒レベルの旅行好き。
日本も大大大好きですが、日本の中に一年くらいいると、海の外に出たくて仕方がなくなるのです。
そんな衝動のままに、会社帰りに航空券を買ってしまったことも、一度ではありません。
さて、突然ですが皆さま。
このお城↓、ご存じでしょうか?
もちろんご存じですよね。
おそらく世界で最も有名なお城。
狂王ルートヴィヒ2世の夢の城、ノイシュヴァンシュタイン城でございます。
でも私は、“この城を”見るよりも、“この城から”見る景色の方が何倍も好きです。
この城がこんなに起伏にとんだ美しい場所に建っていることを、私はここに立ってはじめて知りました。
王が眺めていたのも、この景色。
彼が幼少期を過ごしたホーエンシュヴァンガウ城も、眼下に見ることができます。
上の写真よりも、ずっとずっと素敵な景色だと思いませんか?
城のすぐ麓にこんなに静かな美しい湖があることも、行ってはじめて知りました。
自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の肌で感じて、初めてわかるものがある。
旅は、そんな当り前なことも思い出させてくれます。
歌舞伎座と違い松竹座は昼の部が終わると一旦外へ出されてしまうため、松竹座から歩いてすぐの『今井』で夕食も兼ねて夜の部の開場待ち。
関西風のきつねうどんと、白蜜のわらび餅が大変美味どした~。
こういう美味しいお店をみつけると、また松竹座に来たくなりますね(キケンキケン)
【曽我物語】
昼の部では、松嶋屋の次男さんと三男さん。そして夜の部では、ご長男の我當さん。
我當さんは私は杮落しの盛綱陣屋の印象が強かったので(あの時政は素晴らしかった)、今回の曽我兄弟長男役の意外な若々しさ(失礼)にびっくり。お元気そうでよかったです。
今更ですが、松嶋屋のご兄弟って三人三様の個性で素晴らしいですね。
今回は東&西成駒屋のご兄弟、松嶋屋三兄弟と、三つのご兄弟を堪能させていただきました。
皆さん、なんて芸達者なご兄弟でしょう!
『曽我物語』は、何と言うこともないストーリーですが、歌舞伎初心者の私には五郎&十郎の他の兄弟が見られて、良かったです。
五郎役の進之介さんは今回長い台詞を話されているところを初めて拝見しましたが、、、、どうなんでしょう・・・。正直、ちょっと吃驚しました^^;
【一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)】
「阿呆を演じても品を失ってはいけない難しい役」とのことですが、仁左さまが演じればどんな役でも好むと好まざると品は滲み出てしまうので無問題。
しかし噂で聞いてはおりましたが、仁左衛門さんの大蔵卿の可愛いこと可愛いこと!
初めの出から全開のほんわぁオーラで、一瞬にして客席中を撃沈しておられました。
お歯黒の半開きのお口で、ぽけ~~~~~な笑顔。
下手で孝太郎さん達が色々しているのに、上手では――
床几からコケて、それがシーソーになると気付いて、シーソー遊びをはじめちゃうニザさん。
虫を楽しげに追うニザさん。
自分で舞を所望しておきながら、飽きちゃったのか心地よくなっちゃったのか、こっくりおねむなニザさん。
舞の足踏みの音ではッと目を覚まして、一生懸命孝太郎さんの振りを真似して、ご機嫌なニザさん(座ってるのに、足までちゃんと動かしてる)
帰るときに、靴を片方忘れたまま、トコトコ歩いていってしまい、御付の鳴瀬さん(吉弥さん)に履かせてもらうニザさん。吉弥さんのヌル~イ視線がたまらん。
花道で傘持ちの家臣に、なぜかきちんとお辞儀をするニザさん(なぜだ、笑)。
差しかけられた傘に吃驚し、ぱっと顔を輝かせて、傘にぴょんぴょん飛びつくニザさん。
これでもか!の可愛い攻撃にこっちはもうクラクラですよ。。。
吉田屋の伊左衛門と比べて、アホさも5倍増し、可愛さも5倍増し。
そして花道でふっと素の表情に戻るところ、鮮やかでした!
後半は、凛々しくカッコいいバージョンの大蔵卿がご登場。
ラストで何度か披露される「作り阿呆⇔素を一瞬で使い分ける」演技は恐らくさほど難しい演技ではないとは思いますが、「この上なく可愛い!」⇔「この上なくカッコいい!」の極上の転換を客に見せてくれる役者は、仁左衛門さんをおいて他にいないのではないでしょうか。
だからといって決してイロモノにはならず、最初から最後まで大蔵卿の心の芯がはっきりと通っていて、最後はその生き様に胸が熱くなる。
素晴らしい。。。
橋之助さんの鬼次郎と孝太郎さんのお京もとてもよかったです。
常盤御前は、秀太郎さんでした。
【杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)】
この演目はもう、ザ・福助さんな演目でした。
福助さんの舞台で最初から最後まで気になるところが一つもなかったのは、今回が初めてかもしれません。高く張り上がる声も今回は全然気にならず(張り上がってはいるのだけれど、役的に気にならなかった)。
福助さん演じる、蛇使いのお六。
いやー、きっぷがよくて、カッコよかった!
心から満足&感動させていただきました。
特に最後の衣装がすごくお似合いで、素敵でした。
扇雀さんの八ッ橋。
昼の立役と夜の女形。一日に両方観られてお得な気分でした♪
立役もステキだったけど、やっぱり女形もいい!
そして『籠釣瓶~』と同じく、やっぱり八ッ橋は次郎左衛門に殺される運命なのですね。。
橋之助さんの願哲。
個性的な役柄の割には、なぜでしょう、あまり印象に残りませんでした^^;
でも、福助さんとは相変わらず安定のコンビで、安心して観ていることができました。
亀蔵さんの釣鐘弥左衛門。
八ッ橋が来るのをおふとんの中で待ってる姿が可愛かったです、笑。
翫雀さんの佐野次郎左衛門。
昼間のインパクトが強すぎて、次郎左衛門に見えずに困りました^^;
亀鶴さんの伝兵衛に長持に入れられて匿われてるところが可愛かったです、笑。
亀鶴さんのお守り伝兵衛。
予想外な大活躍で嬉しかった!
福助さんとの夫婦がとってもイイ。
女王さまキャラな福助さんと、おおらかで優しい、でもいざとなると頼りになるカッコいい旦那の亀鶴さん。
大好きだー。
お芝居の途中で、福助さんのご紹介による、片岡松十郎さん&中村橋吾さんの名題昇進披露。
こういうのは初めて見ましたけど、いいですね。客席からの拍手も暖かくて、ちょっと感動しちゃいました。
橋吾さん、お顔もお声もすっきりとしていて、いいなと思いました。
そしてそれぞれが口上を終えた途端、「さっさと出て行きな!」と芝居に戻る福助さん。カッコよすぎ、笑。
この演目、他にも見所がたくさんで、福助さん、翫雀さん、橋之助さん、亀鶴さんによるだんまりの場面も、皆さんお上手なので、楽しかった!
あと、なんといってもラスト。
夕立が上がって(暗幕が落ちて)、明るい田園風景がぱぁっと現れるところ、すごく綺麗でした。
客席から「わぁっ」って声が上がってた^^
雨に本水を使っていたので、雨上がりの田畑に太陽がきらきらと光る様が目に見えるようで。
なんか、ものすごいストレス解消!
一日の最後がこの演目で良かった!!
こんなに昼も夜も充実しているのに、どうしてチケット売れてないんだろう~。
私が関西に住んでいたら、絶対にもう一回観に行くのにな。
それと松竹座。
とてもいい劇場ですね!この日は大向こうも素晴らしかったです。
音響も照明も歌舞伎座よりずっとしっくりくるし、なによりサイズが歌舞伎にぴったり。
三階席からも舞台がとても近く、役者さんを近くに感じることができました(もっとも、一列目のガラスは最悪ですけれど)。
ところで、前日に知ったのですが、この日は祇園祭の宵々山の日でした。
たまたま京都にホテルをとっていて、京都駅に着いたのが22時頃だったので、せっかくだから祇園祭でも覗きに行くかと四条まで出て、すぐに後悔いたしました。。。
もはや現代の祇園祭に「風情」を期待してはだめなのですね。。。
真夏の湘南ビーチのごとき雰囲気でした。。。八坂神社の方へ行けば少しは風情があったのだろうか。。。
まっすぐホテルに帰って、舞台の余韻に浸っていればよかったです。。。
道頓堀『今井』のわらび餅。
甘すぎず、ぷるっぷるで美味しかった♪
祇園祭(の人混み・・・)
のぞみで2時間。
行ってしまいました、松竹座の七月大歌舞伎。
一昨年のロンドン以来、人生二度目の観劇遠征です。
仁左衛門さんの生『保名』がど~~~~しても!観たく。。。
代わりに、歌舞伎鑑賞教室の超良席を手放しましたが・・・(すまねぇ、時蔵さん!)
それでも手放したチケット代と遠征費用はまったく釣り合っておりませんが・・・
でも、でも、後悔しておりませんよ!
この七月大歌舞伎、昼も夜も、もっっっのすごく楽しかったのですもの!
思いきって遠征して本当によかったです!
【柳影澤螢火(やなぎかげさわのほたるび)】
宇野信夫作の新作歌舞伎。
「37年ぶりの上演」などと言うから、一体どれだけつまらん演目なのかと思いきや。
面白いじゃないですか!
どの役も一癖も二癖もある役ばかりなので、観ていて実に楽しかったです。
翫雀さんの綱吉。
女の子よりも能と男の子が大好きなマザコン将軍。
もう、お犬様(=すばらしくリアルな動きの狆)を抱っこしてる姿が可愛すぎて!!!
これを見るだけでも大阪まで行く価値がある!
秀太郎さんの桂昌院。
若い美青年が大好き♪なエロいの年増のお役が、これほどまでお似合いとは。
橋之助さんの吉保にねっとりと迫るあの淫靡さ。
にもかかわらず漂う、権威者の気品。
これを見るだけでも大阪まで(以下略)!!
いやほんとに、最高でした。
こういう秀太郎さん、もっと観たい!
扇雀さんの隆光。
立役は初めて拝見しましたが、低くてよく通るいいお声!
吉保との口喧嘩シーンは、聞き惚れながらもニマニマしちゃいました。
最後に明かされた真実に吃驚。
孝太郎さんのお伝の方。
一見大人しげで、綱吉のお気に入りであり続ける強かさ。
けれど茶室で恋人の数馬(薪車さん)とともに殺されるときに見せる弱さ。
その好演に目が釘付けでした。ブラボー!
児太郎くんのお美代の方。
悪意がなくのんびり育ちのいい感じが出ていて、よかったです。
亀蔵さんの権太夫。
酔っ払いぶりがお見事。
花道から落っこちちゃうんじゃないかとハラハラいたしました。
吉弥さんの金吾。
吉保の腹心の家来。
こちらも立役は初めて拝見しましたが、いいですね!
声も姿もすっきりとしていて、素敵でした。
薪車さんの数馬。
この方はたぶん初めて拝見したのですが、とても女性に人気があるのですね!
客席のあちこちから「薪車が・・・」「薪車が・・・」という嬉しげな女性達の囁きが聴こえて面白かったです^^
とっても爽やかな方ですね。
爽やか過ぎて少々物足りない気もいたしましたが、昼も夜も役がそうだったせいかもしれません。
来月の竹三郎の会の四谷怪談で直助を演じられるようなので、楽しみ♪
橋之助さんの吉保。
素晴らしい熱演でした!
この熱演を見るだけでも大阪まで(以下略)!
冷徹な吉保が最後に浮かべた涙にぐっと来た。。。
ちょっと安易に人を殺し過ぎ(=思慮の足らない男)にも見えたけれども^^;
福助さんのおさめの方。
こちらも、橋之助さんに負けない熱演でした!
もっとも、吉保と並ぶ主役なので少し辛めに言わせていただくと、序幕であれほど可憐だった女の子が綱吉の側室になった後は性格まで悪くなってしまったとしか思われない変わり様(“強か”とは違う、イジワルな感じ)は、いかがなものかと。。
吉保の方は序幕の段階で「桂昌院様に紹介してやる」と言われて喜んでいる様子から既に単なる善人ではないことがわかるので、父親が殺されて綱吉に取り立てられた後の変貌も、まぁさほど不自然には感じないのです。
ですがおさめは、序幕では「お兄さま。さめはお兄さまとこうして一緒にいられるだけで幸せです」とそれは健気な女の子だったはずなのに、その後色々あったとはいえ、茶室でお伝の方に向かって浮かべる底意地の悪い笑みなど「あの女の子がこんな笑みを浮かべるようになるものかなぁ」と思ってしまいました(あるいは最初から、愛する吉保以外に対してはそれほど健気な子でもなかったということか?)。
ただ、それほどまでに変貌しても、桂昌院と吉保の関係を目の前で見せられそうになると激しく動揺したり、吉保に会ったときに心から嬉しそうに「吉保さま!」と笑ういじらしい姿に、じぃんときた。。。
大詰。
夕暮の六義園の庭に咲く萩。おさめの衣装の青紅葉に交じる赤紅葉。一転して暗闇の中、柳の間を飛び交う蛍。
最初から最後まで吉保を心から愛し、吉保のために生きて、そんなおさめの最後の決着のつけ方に泣きました。。。
今回の発見。
東&西成駒屋ご兄弟、とてもいいですね!!
そうそう。
関西の劇場で、関西弁の方々に囲まれて、「駒込」とか「六義園」とか聞き慣れすぎた地名を聞くのは、なんだか妙な感覚でした^^;
せっかくなら関西が舞台の演目が見たかったなぁとも思いましたが、逆に杮落しであの素晴らしい吉田屋が観られたのは東京で関西の演目をやってくれたおかげですから、勝手なことばかり言ってはダメですね。
【保名】
真っ暗な世界に、ゆっくりと浮かび上がる春の野辺。
一面に咲き乱れる菜の花と満開の桜の木。
やがて花道に登場する保名。
その立ち姿に、やっぱり思い切って一階席をとってよかった!と思いました。
今回は前から4列目中央の席だったので、それはそれは贅沢な時間を過ごさせていただきました♪
仁左衛門さんの保名は、観る前はナヨナヨふわふわした雰囲気なのかと勝手に想像していたのですが、美しいなかにも意外な男性らしさも感じさせる保名でした。
さばき髪で亡き恋人の形見の小袖を肩に掛け、花道をさ迷い歩く保名。その目を見ただけで、正気を失っていることがわかります。
基本的に踊りの間は悲しみをたたえながらもどこかに心を置いてきたような表情なのですが、花道の七三で、二匹の蝶を扇子ではらうような戯れるような踊りのなか、一瞬、蝶を見て浮かべた微笑にどきっとしました。
これが見られただけでも大阪来てよかった!と本日数回目にして最も強く感じた、綺麗な綺麗な微笑。
まるで天国のような春の野で、かつて恋人と過ごした時間を踊る保名。
清元がやんで無音になると、急に落ち着かなげに辺りを見まわし、何かを探すような仕草を見せ、床に落ちた小袖を見つけて、清元とともに踊りを再開します。
そして最後は、再び訪れた喪失感のなか、小袖を抱き締め蹲って泣き沈む保名の姿で幕。
保名が深く悲しめば悲しむほど、その美しさは増していく、そんな踊りでした。
25分間は本当にあっという間で。
幕が切れた後は、まるで美しい白昼夢を見ていたような心地がいたしました。
ずっとずっと、あの世界に浸っていたかったなぁ。。。
しかし仁左衛門さんは、想像していたとおり、保名にぴったりですね。
高貴な品と、儚さと、美しさと、でも凛とした男性らしさと。
乱れた長い黒髪に、薄水色と薄ピンクのパステルカラー&グラデーションの入った紫の衣装が恐ろしいほど似合う69歳。
途中、客席から扇子で顔が陰になるような振りのとき、扇子越しに見えた目を伏せた横顔が色っぽいのなんのって。
ほんと奇跡のようなお人だ。。。
保名の唯一の台詞「なんじゃ恋人がそこへいた どれ どれどれ エゝまた嘘云うか わけも無い事云うは ヤーイ」も、仁左衛門さんのはんなりとした柔らかな声にぴったりでした。
観られてよかった!!
そうそう。この日はロビーに仁左衛門さんの奥様がいらっしゃいました^^
※七月大歌舞伎~夜の部~
《インタビュー》
・仁左衛門が語る「七月大歌舞伎」
・歌舞伎俳優・片岡秀太郎(上)(下)
本日は仕事を早退し、英国ロイヤルバレエ団の『白鳥の湖』を観てまいりました。
お目当てはコジョカル&コボーだったのですが、直前でキャスト変更があり、オデット&オディールがサラ・ラム、ジークフリートがスティーヴン・マックレーでした。
さて、感想ですが。
なんというのか、、、不思議なほどオデットと王子の間に愛が見えない『白鳥の湖』であった。。
何よりラムが始終驚くほどクールで、特に2幕のオデットはジークフリートに対する恋愛の情が伝わってこず。。。見目は儚くて、いい感じなのだが。。。
マックレーも、無邪気なぼんぼんっぷりがカッコ可愛いのだけれど、初めて恋をした高揚感が希薄で、オデットに向ける表情も固いのが気になってしまった(でも二人の踊りの息はぴったりだった笑)。
と、前半で下がりまくった私のテンションでしたが、休憩後の3幕で浮上
舞台セット&音楽の派手さや、ラムがオデットよりもオディールの方が似合っていたせいもありますが、何よりこの幕では主役二人の技巧がソロで如何なく発揮されるからです。
ラムも素晴らしかったですが、マックレー!あんな超高速クルクルクルクル回転・シェネ、初めて見た!すごい!
表現力でも感動させてくれれば言うことなしでしたが、テクニックだけで感動してしまうレベルの超絶技巧とキレの良さを惜しみなく見せてくれたので、やっぱり今夜観に来てよかったと思いました。
つづく4幕は、2幕よりは二人の間に愛を感じました。跪いて許しを請う王子の頬にオデットがそっと両手をあて、その手に顔を埋める王子。ここはたっぷりと魅せてくれました。シルエットも美しかった。
とはいえ2幕の恋愛の情があまりに薄い二人が記憶に残ってしまっているので、最期の場面でも胸が締め付けられるということはなく。。。
それよりも、二人が湖に身を投げた後、チャイコフスキーの主旋律がどんどん盛り上がっていって、ロットバルトが白鳥達に取り囲まれていく様子に大層ゾクゾクいたしました。怖くて綺麗だった~。
今夜は、オケもちょっと気になりました。派手なパートはガンガン派手で良かったのですが、静かなパートの演奏が妙に淡々と流れてしまって、しっとりとした情緒に欠けているように感じました。そこにクールなオデットが踊るものだから、それはもうアッサリサッパリな雰囲気一直線で。。。
にもかかわらず、条件反射のように鳥肌が立ってしまうチャイコフスキーの旋律。天才ですね。
時代を中世ではなく、チャイコフスキーの生きた19世紀に設定したダウエル版の舞台装置と衣装は、なかなか良かったと思います。賛否両論あるようですが、私はこれはこれで嫌いじゃありません。王子の軍服もキリッとしていてカッコいいし、白鳥達のロマンティック・チュチュも、さらさらと揺れるスカート部分が白鳥の羽根のように見えて素敵でした。
ディズニーランドのような、あるいは童話の世界のような夢のあるセットも、わくわくしました。なのに決して安っぽくないところはさすがロイヤル。ラストの二人が乗っている羽根の船は、youtubeで観たときは思わず噴き出してしまったのですが、実際に見たらとても繊細な作りでキラキラと品よく輝いていて、素敵でした。この場面の二人が一番ラブラブに見えた、笑。
他のダンサーについて、手短に。
三幕のナポリの踊り(ラウラ・モレーラ&リカルド・セルヴェラ)、速いこと速いこと!なのにキレもあってすごい!見応えありました!楽しかった!
ジークフリートの母役のジェネシア・ロサート、ロットバルト役のギャリー・エイヴィス、家庭教師役のフィリップ・モズリー、ベンノ役のベネット・ガートサイド。みなさん、役にぴったりで、品があり、素晴らしかったです。
全体の印象としてロイヤルの演出って、良くも悪くも、とっても“わかりやすい”ですね。
こういうところ、Kバレエと似ている気がします。熊哲がロイヤル出身のせいでしょうか。
秋のKバレエの『白鳥』も楽しみ^^
涙さえ凍りつく 最果ての白い野に
つながれた我が友よ 明日を信じよう
音もなく降り積もる シベリアの雪の原
魂は彷徨いつ 異国の丘に
苦しみの果てに 儚く消えた 名もなき命
祈りつづけた 愛する人の明日の幸せを
国破れて 山河あり
父母を敬い 兄弟結ばれ 妻を愛し
友を信じ 幼きを守れ 愛しき者たちよ
時はうつろい 生命果てても
いつかは届け 我が心の声
いつの日か蘇る 故郷の青い空
妻よ子よ 父母よ 燃ゆる想いを・・・
(異国の丘/明日への祈り)
今日は、劇団四季のミュージカル『異国の丘』を観てきました。
私は四季の洋物ミュージカルは苦手なのですが、昭和三部作のような和物や『ハムレット』のようなストレートプレイは四季独特の発声法は気になるものの割と抵抗なく楽しめるため、ときどき観に行きます。
中でもこの『異国の丘』は大好きな作品で、今回は数年ぶり3度目の鑑賞です。
この作品は輸入物のミュージカルが多い中で“日本人にしか演じるのことのできない”そして“日本人が演じなければならない”特別な作品であることはもちろんですが、それを抜きにしてもミュージカルとして非常によくできた作品だと思います。
まず、現在のシベリアの場面と過去のニューヨーク・上海・東京の場面を行きつ戻りつする演出が秀逸。
白色と灰色だけのシベリアの景色と色彩豊かな過去の風景との対比により、主人公秀隆の悲劇が自然に強調され、その切なさに胸が苦しくなる。
そして、音楽がとにかく素晴らしい。
特に最初と最後に歌われる『明日への祈り』は、何度聴いても胸が締め付けられます。
「父母を敬い 兄弟結ばれ 妻を愛し 友を信じ 幼きを守れ」
こういう言葉にまず拒否反応を起こしてしまうのが、私達戦後世代です。
ですが今日この歌詞を聴きながら、なんて強く、なんて暖かい言葉だろうと、そんな風に感じました。
もちろん国家から強制されるべきものでは絶対にありませんし、また個人により事情も異なるでしょう。
その上で、「自己を犠牲にしてでも愛する人を守りたい」、そんな風に生きられたらどんなに幸福だろうかと、そういう価値観からしか生まれない幸福(もちろん不幸もですが)をきっと戦前の日本人は現代の私達よりずっと当り前に持っていたのだと思い、少し羨ましくなりました。
独身の私だから、よりそう感じたのかもしれません。
キャストについて。
九重秀隆役の荒川務さん。事前にご年齢を知り不安いっぱいに臨んだ当日でしたが、歌舞伎ですっかり役と実年齢のギャップに慣れてしまっている私には、この程度はまったく問題ありませんでした、笑。
正直なところ歌唱力はもう少しどうにかならないだろうかとは心底思いましたが(聴いていてハラハラしました・・)、普通の台詞の声はとても若々しく気持ちのいい声をされていて、良かったです。
姿や雰囲気も、原作『夢顔さんによろしく』のボチのイメージとはだいぶ異なるものの、誠実そうで、さすがに“あの”石丸さんには適いませんが、魅力的なボチだったと思います。死の直前にベッドの上で神田に言う「清らかな心」という言葉が胸に沁みる・・・、そんなボチでした。
カーテンコールの笑顔も爽やかでとても嬉しそうで、こちらまで嬉しくなっちゃいました。いい笑顔をされる方ですね。
宋愛玲役の佐渡寧子さんも、とても可愛らしく凛としていて、声も綺麗で良かった。荒川さんのボチとよくお似合いでした。また、原作のイメージにも近かったです。
神田役の深水彰彦さん。歌もお上手で、体格もよく、見栄えしていました。この神田の描かれ方は、原作よりもミュージカルの方が好きです。裏切った方にもきっと迷いや苦しみがあったはず、と思ってしまう私は甘いでしょうか。
語り部も担当されていた吉田役の中嶋徹さんは、とてもいい表情をされるのですが、キャストの中でもとりわけ強い四季発声に最後まで違和感を拭えず、辛かったです。。。。。
本当に四季のこの不自然すぎる発声法、どうにかならないものか。。。。。
さて、以前にもすこし書いたことがありますが、私の亡くなった祖父もシベリア抑留者でした。
子供の頃、父や母の口から出る「シベリア」「よくりゅう」という言葉は「戦争に行った人」とは違う意味をもつことは幼心にもわかりましたが、具体的にどう違うのかがわからず、まるで不思議な異国の言葉のように感じたものです。
昭和20年8月15日、第二次世界大戦は終わり、日本は敗戦から復興への道を歩み始めました。
しかし一方で、終戦時満州にいた60万人もの日本人がソ連軍によりシベリアの捕虜収容所へ連行され、-40度の極寒の地で強制労働を強いられ、6万人以上の方々が亡くなりました。
日本への帰還事業は昭和21年末から始まりましたが、やがて米ソの冷戦により凍結。
最後の引揚船「興安丸」が舞鶴に着いたのは、終戦から実に11年が過ぎた昭和31年12月のことでした。彼らにとって出征以来となる日本は戦争の疲弊からすっかり立ち直っており、彼らの帰国より少し前の7月、経済白書は「もはや戦後ではない」と宣言しました。
しかしこの最後の船にさえ乗ることが許されず、その出港直前に収容所で命を落とした人がいました。
『異国の丘』の主人公のモデルとなった、近衛文隆です。その理由はただ一つ、彼が近衛文麿元首相の息子だったからです。
このような歴史を、一体どれだけの日本人が知っているでしょうか。
浜松町駅から四季劇場へ向かう人々の殆どは隣の春劇場(ライオンキング上演中)に流れていきますが、ぜひ少しでも多くの方が秋劇場にも足を向け、68年前にこの国に起きた「戦後最大の悲劇」とも言われるシベリア抑留という歴史に思いを馳せていただければと思います。
7月13日まで、劇団四季・秋劇場にて。
舞鶴引揚記念館のある引揚記念公園の丘から見下ろした、舞鶴港。
シベリアや満州からの引揚船は皆、この舞鶴港に到着しました。
11年間、文隆がどれほど夢見たか知れない景色です。
ですが彼がこの景色を見ることは、ついに叶いませんでした。
引揚船の出港地であるソ連の「ナホトカ」の方角を示した方向碑。
4月下旬に訪れた引揚記念公園は、小雨のなか、八重桜が満開でした。
祖父の乗った引揚船がこの港に着いたのも、この季節でした。
『異国の丘』 ~明日への祈り(プロローグ)~
『異国の丘』 ~異国の丘~
『異国の丘』 ~明日への祈り(エピローグ)~
上野の東京芸大で開催中の『夏目漱石の美術世界展』に、先週末に行ってきました。
漱石にまつわる美術作品に焦点をあてた、珍しい企画展です。
ホームページの方でも少し紹介していますが、私はロンドンでもわざわざ漱石の小説に登場する美術作品を訪ねたほどなので、今回の企画展はとても嬉しかったです。
それぞれの絵が漱石のどの作品に登場したものなのか、その引用文とともに紹介されていたのも、有り難かったです。もっとも、その短い引用部分からは具体的にどのような場面だったかは思い出せないものも多く、この企画展の記憶が薄まらないうちに、漱石の小説をまたひととおり読み返そうと思いました。
さて、今回展示されている作品ですが、まずはターナー、ミレイ、ロセッティ、ウォーターハウスといった西洋画。どれもロンドンのナショナルギャラリーやテートギャラリーでおなじみの画家たちですね^^
次に、酒井抱一、伊藤若冲、長沢蘆雪、黒田清輝といった日本人画家の作品。
漱石の友人でもあった、中村不折や橋口五葉による漱石作品の装丁や挿絵(貴重な下絵も!)。
さらには漱石自身の筆による作品(笑)と、漱石ファンには見所満載です♪
漱石の小説に出てくるけれど実在しない絵も再現されていて、これもとても楽しかったです。
『虞美人草』の屏風(美しかった!家に欲しい!)や、『三四郎』の美禰子が団扇を持って立っている絵など。
美禰子は私のイメージではもう少し西洋風な容貌(漱石のような)なのですが、絵画全体の雰囲気は想像どおりで、素敵でした。
そうそう。親友の正岡子規の作品として、以前江戸東京博物館の漱石展でも展示されていた東菊の掛け軸(子規からの最後の手紙が一緒に貼られた掛け軸)が、今回も展示されていました。また実物が見られるとは思っていなかったので、嬉しかったです。
しかしこの掛け軸は、やはり何度見ても切なくて泣きそうになる。。。
7月7日まで、上野の東京芸大美術館にて。
ちなみに、ここのミュージアムカフェはホテルオークラが運営しているのですが、海老グラタンがサラダ付きで千円程度で食べられ、味もなかなか美味しくてよかったです^^
ダンテ・ゲイブリル・ロセッティ 『レディ・リリス』 1867年 水彩
ロセッティには『レディ・リリス』という絵は油彩と水彩でいくつかバージョンが存在していて、モデルもFanny Cornforth(今回展示されていた絵↑)とAlexa Wildingの二人がいます。顔の表情や椅子の色などが微妙に違っていて、私はこちらのCornforthの方が微笑んでいるように見えて好き。
ジョン・エヴァレット・ミレイ 『ロンドン塔幽閉の王子』 1878年
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 『シャロットの女』 1894年
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 『人魚』 1900年
私に生舞台の感動を教えてくれたのがウエストエンドの『オペラ座の怪人』なら、バレエの面白さを教えてくれたのは熊川哲也さんの『ドン・キホーテ』です。
昨夜は、私にとって二度目のKバレエとなる『ジゼル』に行ってまいりました(狙ったわけではなかったのですが、千秋楽でした)。
とはいっても、昨年秋のドンキから早8ヶ月。
幸いなことにあれから数々の素晴らしい舞台(バレエに限らず)に出会うことができ感動の連続だった私は、もはやちょっとやそっとの舞台では感動できないのではないか・・・という贅沢な不安を抱えておりました。
しかし、そんな不安はアルブレヒトの登場場面で一瞬にして吹っ飛びました。
彼が舞台に躍り出たその瞬間、「ああ、やっぱり熊哲はいい。。。」と感じさせてくれた熊川さん。
そうだった。この人はちょっとやそっとなどというシロモノではなかったのだった。
熊哲にはバジルのようなやんちゃな役が一番似合うという印象は今も変わらないけど、今回のアルブレヒトを見て、王子系も意外にしっくりくるのだと知りました。
もともと華と品を備えたダンサーなので似合わないわけはないのですが、彼が演じるとアルブレヒトにもどこかやんちゃな愛嬌が漂うからです。
普段はあんなにエラそーなのに、舞台に立つとどうしてこう可愛らしくなるのだろうかこの人は笑。
踊りも、やっぱり周りのダンサーと違う。
その伸びやかさ、力強さ、スピード、軽やかさ、そして決めるところはピタリと決める軸のブレなさ――。
もっとも技術的には、他の方もとても上手なのです。
でも熊川さんには、「この人の踊りを見たい」と思わせる強い魅力がある気がします。
二幕で、踊って踊って踊り疲れて舞台下手に倒れこむところ、素晴らしかった。youtubeに過去のKバレエ公演の動画が上がっていましたが、今回のアルブレヒトはその何倍も悲愴感が溢れていて全く別の舞台を観ているようでした。ほんとうに素晴らしかった。
またカーテンコールで一人で躍り出たときの姿も、この人ならではのカッコよさで。魅せるなぁ。
佐々部さんのジゼルは、ドンキのときよりも格段に良くなっていて驚きました。素直な踊りはそのままにずっと安定感が増していて、いい意味で自信が出てきているように感じられました。一幕での熊哲とのラブラブぶりも、相変わらずいい感じ^^
もっとも、一幕終わりの気狂いの場面や、二幕の精霊になった場面の表現力は、もう一つかな・・・。まぁyoutubeで観たザハロワと比べた場合ですが^^;。いずれにしても、とても美しく華もあるダンサーなので、これからが楽しみです♪
S・キャシディさんのヒラリオン。嫌味なところがなく、ただ強くジゼルを愛している男となっていたところがいいなと思いました。その分最後に精霊ウィリ達の餌食になってしまうのが気の毒ですけど、ウィリ達は性格の良し悪しにかかわらず若い男は須らく餌食にしているわけですから、ヒラリオンを悪役にしすぎないことで、そんなヨーロッパの童話にあるようなぞくっとする雰囲気が上手く表現されて良かったと思います。
その点、山田蘭さんのバチルドは少々イジワルにしすぎではないかと(村娘のジゼルに手にキスをされて露骨に顔を顰めるetc)。これが熊川さんの演出によるものかどうかはわかりませんが、バチルドをわかりやすい意地悪に描くことでストーリー的にわかりやすくなった分、同じだけ薄っぺらさも増してしまったように感じました。この場面だけ、まるで漫画か昼ドラを見てるみたいだった・・・。個人的にこの手の役は、昨年観たコンダウーロワのガムザッティのような品のある演じ方の方が好みです。熊哲のアルブレヒトは一幕では若者らしい軽い気持ちでジゼルとの恋愛を楽しみ、彼女の死により、彼女が自分にとってかけがえのない存在であったことに気づき、そして二幕で懺悔と悲しみの念にかられて彼女の墓を訪れるのだと思います。それならばあえてバチルドを意地悪く描かなくても、アルブレヒトの誠実さは十分に出せるのではないかと思うのですが、いいかでしょう。
G・タップハウスさんのベルト、浅川さんの女王ミルタ、池本さん&井澤さんの村人、素晴らしかったです。ほとんど足音をさせないコールドの皆さんも見事でした。
舞台全体の感想としては、明るく軽快な一幕も良かったけれど、白眉はやはり二幕。
アルブレヒトはジゼルの気配を感じることができても、その姿は見えません。どんなに焦がれても、すでに二人の世界は違うものになってしまっている。やがて夜が明け(この朝の光の美しいこと!)ジゼルが消え、アルブレヒトの腕から零れ落ちる真っ白なユリ。永遠に腕の中から消えてしまったジゼルの面影を抱き締めるように一人舞台に蹲るその姿から感じるのは、“別離の悲しみ”などという言葉では生ぬるい、凄絶な喪失感と絶望――。
それほど深く、アルブレヒトはジゼルを愛していたのです。しかし、もうジゼルはいない。
だからこそ、ひたすらに美しく、観る者の心に深い深い感動と余韻を残すラストでした。
一晩たった今でも、この光景が頭から離れません。
舞台の良し悪しを決めるのは、「感動できるか否か」だと私は思います。
どんなにたくさん欠点があっても、観終わった後に感動が残る舞台は、私にとって素晴らしい舞台です。
一方、どんなに技術的にレベルが高くても、感動が残らなければ、決して良い舞台だとは思いません。まあ、当り前のことですが。
そして昨夜の舞台からは、大きな大きな感動をもらうことができました。
歌舞伎座のこけら落としでも散々味わった感覚ですが、今後これ以上に魅力的なアルブレヒトに出会えるのだろうか、と本気で感じてしまいます。これは、昨年のドンキのバジルに対しても思いました。
また、熊哲の舞台はいつも観客に「この劇場で思いきり楽しい時間を過ごしてもらいたい」という気持ちが強く強く伝わってきて、そのことにも感動してしまいます。客を適当にごまかそうという感じが全くありません。それがこのバレエ団を観に来ている観客にちゃんと伝わっているのだと思います。
永遠に続くのではないかと思われるKバレエ独特のカーテンコールも、観客が心から拍手を送り、そしてスタオベをしていることがよくわかるから、まったく嫌な感じがしない。
いつまでもいつまでも拍手を送りたいと心から思わせてくれた、そんなKバレエの『ジゼル』でした。
そして勢いで、秋の『白鳥の湖』のチケットを買ってしまいました。。。
歌舞伎も観たいし、バレエも観たいし、旅行にも行きたいし。。。。。
どうしましょう。。。。。。。お財布。。。。。。。。
Spring Tour 2013『Giselle』
Tetsuya Kumakawa Giselle