谷川さんのいる世界と、谷川さんのいない世界。
いつかこういう日は来るだろうと覚悟はしていたけれど、寂しいです。
皆さんの追悼のSNSで、こんな詩を見つけました。私の知らない詩でした。
『今日までそして明日から』という、50代の女性をテーマにした詩集の中の詩だそうです。早速アマゾンで注文しました。
谷川さんが残してくださった沢山の詩に力をいただきながら、これからもこの世界を生きていきたいと思います。いつか来るその日まで、生き抜きたいと思います。
谷川さん、本当に本当にありがとうございました。
今日まで生きて来られたのは、あなたのおかげです。
できたら 谷川俊太郎
素顔で微笑んでほしい
できたら
愛に我を忘れて
その瞬間のあなたは
花のように自然で
音楽のように優雅で
そのくせどこかに
洗いたての洗濯物の
日々の香りをかくしている
かけがえのない物語を生きてほしい
できたら
小説に騙されずに
母の胸と
父の膝の記憶を抱いて
涙で裏切りながら
涙に裏切られながら
鑑の中の未来の自分から
目をそらさずに
時を恐れないでほしい
できたら
からだの枯れるときは
魂の実るとき
時計では刻めない時間を生きて
目に見えぬものを信じて
情報の渦巻く海から
ひとしずくの知恵をすくい取り
猫のようにくつろいで
眠ってほしい 夢をはらむ夜を
目覚めてほしい 何度でも初めての朝に