風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノリサイタル @東京オペラシティ(10月23日)

2023-10-31 22:38:15 | クラシック音楽




感想がたまりすぎているので、サクサクあげます。

アンスネスは、ずっと聴いてみたいと気になっていたピアニストだったけど、聴くのは今夜が初めて(以前チケットを買っていたのだけれど、公演がキャンセルになってしまった)。
数年前に村上春樹さんが現在好きなピアニストとしてペライアとアンスネスの2人をあげておられて、そういう意味でも興味がありました。

でもペライアと違って音自体にピアニストの個性を感じさせないのは、想像していたとおり。
そういうところ、ピリスと似ているなと感じました。
端正で誠実な音。でも、ちゃんと情熱的。
決して派手な演奏ではなく、どちらかというと地味な演奏なのに、ホールを支配してしまう空気感。

【シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番 イ短調 D784】
この曲は、以前光子さんで素晴らしい演奏を聴かせていただいたけれど、暗みを強く感じさせる光子さんの演奏と比べると、アンスネスのそれは彼の”色のなさがこの曲に意外と合っていて(この曲でピリスと似ているなと感じた)、なるほどこういうこの曲の聴き方もあるのだなと教えてもらった気がしました。
アンスネスって意外と男性らしい音を出すのですね。そういうところは、ペライアとよく似ているなと感じました。

【ドヴォルザーク:《詩的な音画》 op.85 より I. 夜の道 II. たわむれ IX. セレナード X. バッカナール XIII. スヴァター・ホラにて】
いやぁ、どの曲も本当に素晴らしかった。。。。。。。
「夜の道」のあの空気感といったら・・・!!!自分がいま夜の道を歩いているような気分になりました。なんであんな空気が出せるのだろう。。。。
そして「セレナード」の温かな響きにうっとり。なんて優しさでしょう。。。。
「スヴァター・ホラにて」の神聖な空気もアンスネスの個性にとてもよく合っていました。
アンスネスは、『詩的な音画』という作品について次のように述べています。

“It’s a real discovery for me. It’s a major piano cycle of 13 pieces that’s rarely performed, even though it’s very imaginative, is full of melodic and harmonic inventions, and offers surprisingly colorful writing for the piano. Although Dvořák was not a pianist-composer, he uses the full range of the instrument convincingly.”
“It feels exciting to take Dvořák at his word, and I think he is absolutely right. I feel a very strong, wonderful narrative in the work. It’s a cycle of many stories but it also feels like one big story.”
21C Media Group

(20分間の休憩)

【ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13 《悲愴》】
この曲も、本当に素晴らしかった。
優しい2楽章、うっとりと聴き入ってしまいました。

【ブラームス:7つの幻想曲 op.116】
アンスネスの男性らしい音のブラームス、いいですね!男性らしく、でも優しいブラームス。とてもよく合ってる。
そういう演奏ってありそうで少ないので。
うーん、改めてアンスネスの個性ってペライアとよく似ている気がする(音は全然違うけど)。
村上春樹さんの音楽や文学の好みって私と近いのです…笑
アンスネスはこの曲について、来日前のインタビューで以下のように語っています。
「ブラームスの後期の作品というと暗く憂愁に満ちているイメージがありますが、《7つの幻想曲》には深い喜びもあり、色彩や個性に富んでいます。ツィクルスではありませんが、全体をひとつの旅として捉えることができるでしょう」

【ドヴォルザーク:《詩的な音画》op.85 より IV. 春の歌(アンコール)】
これも素晴らしかったなぁ。
勢いのある春の芽吹きが目に見えるようだった。

【ショパン:マズルカ op.33-2(アンコール)】
【ショパン:マズルカ op.17-4(アンコール)】
アンスネスでショパンって意外だったけれど、こちらも甘くない渋いショパン。
マズルカ独特の重い舞踊感がとてもよい。
33-2もよかったけど、17-4の空気が素晴らしかったなぁ。美しく、暗みもしっかり出ていて。とても心に響きました。アンスネスのショパン、いいですね…!

さて、ここまで「空気」という言葉が何度出てきたでしょう。
アンスネスは本当に空気感を感じさせてくれるピアニストでした。
今後彼のリサイタルは絶対に行こう。
26日にはN響とのピアノ協奏曲も聴いてきたので、感想は改めて。


インタビュー:7年ぶりの再訪を心待ちに

研ぎ澄まされたタッチから生み出される透徹した音色に耳を傾ける(ぶらあぼ)







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NHK交響楽団 第1993回定期公演 Cプロ @NHKホール(10月21日)

2023-10-26 00:40:43 | クラシック音楽






NHK交響楽団10月公演の聴衆のみなさまへ

NHK交響楽団のすばらしい音楽家たちと演奏する3種類のプログラムを、私はどれほど楽しみにしていたことでしょう。そして今、医師のアドバイスで日本に行くことができず、どんなに悲しい思いをしていることか。
しかし、すでに次の日程が2024年10月に決まっており、私はそれをとても楽しみにしています。その時には神のご加護のもと、私がとても大切に思い、愛してやまない日本のみなさまのために、再びともに音楽を奏でることができるはずです。
尊敬するオーケストラの仲間とともに、心からの敬意をこめて。

ヘルベルト・ブロムシュテット

To the Audience of my NHK Concerts in October:

How much I was looking forward to the concerts with three different programmes together with 'my' wonderful musicians of the NHK Symphony Orchestra and how sad I am now that I have not been able to travel to Japan on the advice of my doctors, due to an infection.
However, we already have new dates in October 2024, which I am greatly looking forward to. God willing, we will then be able to make music together again for you, the Japanese audience, whom I value and love so much.
My highly esteemed colleagues in the orchestra and I send you our warmest regards.

Yours sincerely,
Herbert Blomstedt


ブロムさーん・・・
昨年秋にN響が「来年のプログラムの打ち合わせを行っている」と言っていて、いつも前向きなブロムさんにどれほど元気をいただいてきたことか。
来年秋に再びブロムさんの音楽を聴ける日を心から楽しみにお待ちしております(97歳)!!
どうかお体お大事になさってください。


【ニルセン/弦楽四重奏曲 第4番 作品44 ー 第1楽章(開演前の室内楽)】
開演前の室内楽は、今聴かなかったら一生聴く機会がなさそうな気がするニールセンの弦楽四重奏曲。
おお、弦楽四重奏曲だけどとっても”ニールセン”だ・・・
当たり前だけど、そのニールセン味に妙に感動してしまいました笑
そして最後の静かで穏やかな終わり方がとても印象的でした。美しかった。

【ニルセン/アラジン組曲 作品34 -「祝祭行進曲」「ヒンドゥーの踊り」「イスファハンの市場」「黒人の踊り」】
というわけで、急遽代打を引き受けてくださった高関さん
先日のプレトニョフとのご苦労の多かった指揮に続いて、お疲れさまでございます。。
この曲、初めて聴いたけれど(今回は多忙で予習もなし)、とっても楽しい曲ですね!
なんとなく真面目なイメージがあったニルセンがこんな曲も書いていたこと、意外でした。
今回は抜粋だったので、機会があったら全曲聴いてみたいな。
特に印象的だったのは、「イスファハンの市場」
いくつもの音楽が雑多に混じり合っている音楽。奏者さん達、よく混乱せずに演奏できるな、こんな音楽・・・。一度崩れたら際限なく崩れていきそうだ。高関さんのSNSによると、「左手で数字を、右手で強弱を示し、各群の演奏を聴き分けてコントロール」されていたそうです。

【シベリウス/交響曲 第2番 ニ長調 作品43】
シベリウスの交響曲の中で一番の人気曲とのことだけど、生で聴くのは初めて。
1楽章の冒頭は音色が太く透明感が感じられず、また急拵えのコンビのせいか3楽章までは音楽の流れがぎこちなく、3→4楽章の繋ぎ目のアタッカもあまり空気が変わらず突入してしまったので、この感じの演奏のまま終わってしまったら残念だなあと思っていたら、四楽章の大河のような大きな流れはとても良かった 最後まで緊張感の途切れさせずに連れて行ってくださいました。
予習で聴いたヴァンスカの演奏と比べると、今日の演奏は日本らしい、湿度高めなシベリウスではあったけれど、この4楽章は大満足!
ただ4楽章の金管の強調&鋭さは個人的には?と感じたけれど、高関さんのこだわりなのかな。

終演後は、客席から高関さんへ温かく盛大な「代打お疲れさま!いい演奏だったよ!」な拍手
ブロムシュテットのときにも感じたけれど、クールなB定期のお客さんと比べると、AC定期のお客さんは温かいねぇ
高関さんは奏者さん達から称えられ、N響から真っ赤な薔薇の花束が贈られていました



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アレクサンドル・カントロフ ピアノリサイタル @東京オペラシティ(10月17日)

2023-10-25 23:31:03 | クラシック音楽




ブラームス:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 op.1
J.S.バッハ(ブラームス編):シャコンヌ BWV1004
シューベルト/リスト:
さすらい人
水車職人と小川(歌曲集「美しき水車小屋の娘」から)
春への想い
街(歌曲集「白鳥の歌」から)
海辺で(歌曲集「白鳥の歌」から)
シューベルト:幻想曲 ハ長調 D760「さすらい人」

【アンコール】
サン=サーンス(ニーナ・シモン編):オペラ「サムソンとデリラ」から デリラのアリア「あなたの声に私の心は開く」
ストラヴィンスキー(アゴスティ編):バレエ「火の鳥」から フィナーレ
シューベルト/リスト:万霊節の日のための連祷 S.562-1
リスト:「超絶技巧練習曲集」から 第12番「雪かき」


書かなければいけない(いけなくはないけど)感想が、雪だるまのようにたまってゆく・・・
サクサクいきます。

いやぁ、今年のカントロフも素晴らしかった。。。。
昨年より更に深みを増していたようにさえ感じられました。若いって素晴らしい(現在26歳)。

ブラームスの「ソナタ1番」は、シューマンの家を訪ねた20歳のブラームスの情熱と、その才能に出会ったときのシューマンの鮮烈な喜びを感じることができました。カントロフの若さにとてもよく合っていた。
そして、カントロフのピアノってそういえばこういう音だった、と1年ぶりに思い出す。
意外と男らしい音なのよね。
そして情熱的。

ブラームス編の「シャコンヌ」
ブラームスの一番を聴いてからのこのブラームス編の左手のシャコンヌの流れ、沁みたな…。
情熱と静けさ、その両方をカントロフの音は教えてくれる。
右手を怪我したクララのためにブラームスが書いたこの曲からは、ブラームスの男性らしい優しさも感じます。
終盤の追い込みも、カントロフの演奏、すごく胸に迫った。
この曲っていつも「死」に向かっていることを強く感じさせられるのだけど(この曲の最後にあるのは間違いなく「死」だと思う)、この追い込みは「(人生において)時間は待ってはくれない」ということを痛切に感じさせられました。
連続するラ(絶対音感狂い中の私の耳にはシに聴こえたので、おそらくラ)の均一な音の、運命的な響き。ヴァイオリンでは感じられない、あるいはピアノの方がそれをより強く感じられるもの。ブラームスもそれを意識したろうか。
弾き終えたカントロフは、人生を燃焼し尽くしたようにずっと俯いたまま動かず。
私はいま人生で迷っていることが色々あるのだけど、立ち止まっていては答えは出ない。そんな時間もない。前に進んで、感じて、変化して行かなければと感じさせられた、そんな演奏でした。
しかし・・・よく左手だけでこれだけの演奏をして、たった20分間の休憩後に次の曲を弾けるものだなぁ・・・。両手で弾くより疲れそう・・・(そういえばトリフォノフは一曲目からこれ弾いてたな

(20分間の休憩)

シューベルトの歌曲シリーズ、どれも素晴らしかった。曲ごとに空気感がしっかり変化していて。
「水車職人と小川」は以前聴いたババヤンの方が幻想的な凄みを感じさせられたけれど、カントロフのストレートで若々しい演奏もこれはこれでとてもよい。
「さすらい人幻想曲」も以前聴いて大感動したレオンスカヤとは違うタイプの演奏だけど、この曲の芯を観じるような演奏で、やはり若いカントロフに合っているように感じられました。

アンコールは4曲。カントロフ、いつもアンコールを嬉しそうに弾いてくれますよね
特に、サンサーンスの歌曲から「あなたの声に私の心は開く」の優しい音が、しみじみと沁みました。。。
優しい人になりたい、と強く感じさせられた。
この日は、昼間に、もうひとつ優しさをもらえた日だったんです。
ずっと昔に仕事で関わったことがあるドイツ人の男の子が最近開業したというお店にふらりと足を運んだら、キッチンで背を向けていたにもかかわらず、私がレジでスタッフの女性に注文した声だけで「声でわかった」って嬉しそうに出てきてくれて。
数年に一回程度しか会うことはないのに、彼が来日したときに私がした僅かなことを感謝してくれているみたいで。会うといつも、とても嬉しそうにしてくれる。そしてちゃんと言葉でも「嬉しい」と言ってくれる。私は大したことは何もしていないのに(それどころかもっとしてあげられることはあったのに)。
でも、こんな私でも少しは人の心に残る何かをしてあげられていたみたい、ということを彼が教えてくれた。
そして、優しさはもらえると自分も優しくなれるということを教えてもらった。
だったら、私も勇気を出して、もっとあげられたら、と昼間の優しい出来事を思い返しながら、優しいカントロフの音を聴きながら感じていました。
二人に、感謝。

昨年のアンコールでも弾いてくれたストラヴィスキーの「火の鳥」フィナーレ。改めて冒頭の響きの幻想味の凄まじさよ・・・

シューベルト/リストの「万霊節の日のための連祷」も静かで清らかな空気が美しかった。
カントロフって、こういう静かな空気を生み出せるピアニストなのよね。
今年は彼のより内省的な面を感じることができた演奏会だったと思う。

最後は、リストの「超絶技巧練習曲集」から第12番「雪かき」で華やかに終了(ブラボー

来年のリサイタルはサントリーホールで行われるとのこと。オペラシティで聴くカントロフの音が好きだったのでちょっと残念ではあるけれど、サントリーホールデビューおめでとう




©Sasha Gusov


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ファウスト、ベザイデンホウト、ゴルツ @三鷹市芸術文化センター(10月8日)

2023-10-20 23:08:38 | クラシック音楽




J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021

J.S.バッハ:ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1029(原曲:ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのためのソナタ)
ピゼンデル(伝J.S.バッハ):ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ短調 BWV1024
(20分間の休憩)
ビーバー:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 第5番 ホ短調
J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1019aより
カンタービレ・マ・ウン・ポコ・アダージョ/アダージョ
ヴァイオリン・ソロ・エ・バッソ・アコンパニャート
J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのフーガ ト短調 BWV1026
ヴェストホフ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 第2番 イ短調

【アンコール】
◎J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタBWV1023よりアルマンド
◎ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調HWV371よりアレグロ


この秋は演奏会の数が多すぎてとても感想が追いつかない。。。。。。
さらに仕事がそこそこ忙しい。。。。。
さらにコロナ後遺症で味覚障害→嗅覚障害→倦怠感のフルコースを絶賛辿り中。
というわけで、手短に感想を。
感想の短さ=感動の少なさではもちろんありません!

今回のようなTHEバロックの演奏会は、初めて。
三鷹にバロックの風が吹き抜けていました〜
以前の私ならバロック尽くしの演奏会に行くなんて想像もつかなかったけれど、バロックならではのシンプルで生き生きとした躍動感は、古典派以降の音楽とは異なる魅力ですよね。

ファウストの凛とした清潔感のある、かつ情熱的な音、やっぱり大好き!!

バロックチェロのクリスティン・フォン・デア・ゴルツも、チェンバロのクリスティアン・ベザイデンホウトもフライブルク・バロック・オーケストラ関係の方達で、以前トッパンでバッハのカンタータを聴いて感動したことを思い出しました。フライブルク・バロック・オーケストラ、また来日してほしいな。。

バッハはもちろん良かったし、どの曲も素晴らしかったけれど、私は特に前半最後に演奏されたビーバーの曲に感銘を受けました。
まるでバロックじゃないよう。
というより、バロックのイメージがまた大きく広がりました。
バロックなんてどれも同じような音楽でしょとか思っていた昔の私は本当に無知であった。

それにしても、ヴァイオリンとチェロとチェンバロだけでこれほど多彩でエキサイティングな音楽が立ち上るとは。
彼らの織りなす音の美しさに「うわぁ・・・」と感じた瞬間も何度もありました。

アンコール2曲も素晴らしくて。
ヘンデルの曲には、いっぱいの幸福感をもらえました。

彼ら3人に感謝だな。
そして、バッハって天国から地上におりてきた音だ、と改めて思った。



芸術的探究心と豊かな知性、揺るぎない優れた演奏技術を併せ持ち、あらゆる時代と様式の楽器に精通する世界屈指のヴァイオリニスト、イザベル・ファウスト。これまで三鷹市芸術文化センターでは、「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 無伴奏ヴァイオリン作品全曲演奏会」(2017年3月)でひときわ輝く名演を、シューマンとブラームスの作品を取り上げた盟友メルニコフ(ピアノ)とのデュオ(2021年1月)で、心の襞に触れる味わい深い音楽の対話を聴かせてくれた彼女が、再び風のホールに帰ってきます。

今回はピリオド楽器最前線で活躍し、ファウストとも共演を重ねる二人の名手、クリスティアン・ベザイデンホウトとクリスティン・フォン・デア・ゴルツとのトリオで、バッハの作品とともに17世紀から18世紀ヴァイオリン音楽に大きな貢献を果たしたピゼンデル、バッハの先達でヴァイオリンの大家でもあったビーバー、ヴェストホフの作品を取り上げます。

名実ともに優れたフォルテピアノ奏者であり、ドイツを代表する名門ピリオド楽器オーケストラ、フライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)の音楽監督も務めるクリスティアン・ベザイデンホウト。今回はチェンバロ奏者として出演します。そのベザイデンホウトと共にFBOの芸術監督を務めるゴットフリート・フォン・デア・ゴルツを兄に持ち、ベルリン・バロック・ゾリステン(ベルリン・フィルの主力メンバーが中心となって構成されたアンサンブル)のメンバーとしても活躍するチェリスト、クリスティン・フォン・デア・ゴルツ。

ファウスト、ベザイデンホウト、ゴルツが選び抜いたプログラムで、バッハの作品を彼の先達や同時代を生きた作曲家の作品と並べ聴くコンサートは、必ずやお客さまの耳が喜ぶことでしょう。バロック時代のヴァイオリン音楽の系譜をたどるとっておきの演奏会、ぜひお楽しみください。
(紹介文より)

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アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル @ミューザ川崎(10月1日)

2023-10-13 16:18:34 | クラシック音楽

©Nadia F Romanini

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988から アリア
J.S.バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV816
モーツァルト:アイネ・クライネ・ジーグ K.574
ブラームス:3つのインテルメッツォ op.117
      インテルメッツォ イ長調 op.118-2
シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 op.6
***
J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903
メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 ニ短調 op.54
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2 「テンペスト」

(アンコール)
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971から 第1楽章
モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545から 第1楽章
シューマン:「子供のためのアルバム」op.68から 楽しき農夫


☝この特集ページの写真、優しく穏やかな表情がとてもいい

遅くなりましたが、10月1日の川崎公演の感想を~(9月29日のオペラシティ公演の感想はこちら
今回のピアノは280VCだったけど、P席だったせいかいつものこの機種の音よりも少しこもって聴こえたような

まずは、しっとりとゴルトベルクのアリアから。
リサイタルの最初に聴くこの曲もいいですね~

続いて、フランス組曲5番。
シフのこの曲、聴いてみたかったからとっても嬉しい
シフの格調高いのに親密な音のバッハがとても好き。。。
シフはトークで、「この曲は様々な国の舞曲からなっています。バッハはナショナリストではなく、インターナショナリストでした。それに対して、英国のブレグジットは馬鹿げている」「バッハは魂を浄化(cleanse)してくれる」と。うんうん!

次は、モーツァルトのアイネ・クライネ・ジーグ K.574
これも聴くのは初めて。
「この曲が誰の曲かを知らずに聴くと、誰もモーツァルトの曲だとはわからないだろう」と。

続いて、ブラームスのop.117と118-2
以前も聴いているけれど、今回、よかったなぁ。。。より内省的で深みを増しているように感じられました。
シフは「これらの曲は死が近付いた晩年のブラームスが未来ではなく過去を振り返っている、諦念と郷愁を感じさせる曲」と。118-2は「秋の陽の光のよう」と。うんうん
シフの音は重くはないのに翳りはちゃんとあって、まさに秋の音色でございました。

そして、前半最後はシューマンのダヴィッド同盟舞曲集
まさかこの曲を聴けるなんて思っていなかったので、今日一番の驚きでした。
シフは「シューマンはブラームスの才能を見出した人で、彼のメンターだった」、「シューマンはFlorestanとEusebiusという二つの人格を自らの中に生み出した。この曲は今の世界が失ってしまった詩的(poetic)なものを思い出させてくれるとても美しい曲」と。うんうん!
シフが弾くこの曲を初めて聴いたけれど、曲の芯が伝わってくるような演奏で、絶品でございました。。。。。

この日、演奏会前に少し悲しいことがあったのだけど、この前半の曲達はそんな私の心に寄り添ってくれているように感じられて。シフに感謝だな・・・。

(20分間の休憩)

「後半3曲は、すべてニ短調の曲」と。
バッハの半音階的幻想曲とフーガ(Chromatic Fantasia and Fugue)とベートーヴェンのテンペストは以前のリサイタルで聴いたことがあるけれど、メンデルスゾーンの厳格な変奏曲は今回が初めて。「ワーグナーは天才だが、ひどい人間(terrible human being)」と。「メンデルスゾーンがユダヤ人であることを理由にパンフレットで不当にこきおろした」と。「この曲は、モーツァルトのレクイエムのような曲。死んだのが誰かはわからないが、誰かの追悼のための曲だと思う」と。
また、テンペストについては、「ベートーヴェンは大きな困難を抱えながらも、希望を失わなかった人」と。

アンコールは後半の重い空気を吹き飛ばすように、明るく朗らかにイタリア協奏曲の第一楽章。今日は絶対弾いてくれると思ってた 全曲弾いてくれるかな~と期待したけれど、第一楽章だけでした笑。
そして、こちらも定番のアンコール曲から、モーツァルトのピアノソナタK.545の第一楽章シューマンの楽しき農夫
このアンコール3曲、シフの演奏会で何度も聴いているけれど、聴くたびに深く感動させられる。
最後の2曲は、こういう誰でも弾ける曲をこれほど美しくこれほど感動させてくれる(しかも全く気負わず!)ことに、こういう人を「ピアニスト」というのだな、と強く感じさせられるのでした。
終演後、後ろの席の女性二人が「私達は『ピアノを弾いていた』んじゃなかったんだ、ということがわかった」と言っていたけれど、そう感じる気持ち、よくわかる。

昨年に続いて2年連続でシフのピアノを聴くことができて、本当に幸せでした。
どうかまた遠くなく来日してください。
(できれば毎年来日してほしい。次回はぜひ再びカペラ・アンドレア・バルカと!!)


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