ふとサイトを覗いたら良席が一席だけあって(8列目中央)、思わずポチ。
人形の表情まで見るには少々遠かったですが、久しぶりの文楽、楽しかったです!
【寿柱立万歳】
文楽のこの手の舞踊はあまり得意ではないのですが(すぐに飽きてしまふの・・・)、今回のように15分程度だと気楽に観られていいですねー
正岡子規の玄祖父が初春の回礼の際に必ず寒梅の枝をえりに挿して「のどかな春でございます」と言って家々をまわったというエピソードが私は大好きなのですが、そういう今では失われてしまった「のどかさ」に歌舞伎や文楽の中では変わらず出会うことができるのは、幸せなことだと思います
とはいえ長時間になると飽きてきてしまう私は、結局は忙しない現代人なのですけどね
【菅原伝授手習鑑 ~茶筅酒の段、喧嘩の段、訴訟の段、桜丸切腹の段】
今回は半通しで、前半は歌舞伎でいう『賀の祝』。
ところでこの家って、白太夫が預かっている菅丞相の下屋敷だったんですね。桜丸が遠慮なく切腹してるから、てっきり白太夫自身の家のような記憶になってた
家の裏の菜の花?蒲公英?畑がきれ~~~ この長閑な田舎の風景がこれから起こる悲劇を一層際立たせるのよね・・・。
お嫁さん達の黄緑色衣裳は3人ともそっくりで一瞬焦ったけど、よく見るとそれぞれに梅、松、桜の柄になってるのね このお話のヒロインの八重ちゃんの衣裳だけ赤い襟で更にちょっぴり華やか。
『茶筅酒の段』は初めて観たけど、チャリ場?がすっごく楽しい まともに味噌も擂れなければ大根も切れない(包丁も大根もホンモノ)、家事がまるきりダメな三男嫁の八重ちゃん(簑二郎さん)。そんな新妻に丁寧に教えてあげる次男嫁の千代ちゃん(勘十郎さん)。しっかり者な長男嫁の春ちゃん(一輔さん)。3人とも同じような人形で同じような衣裳なのに、ちゃんと違った個性に見えるのが面白いなぁ。若い女の子が3人いると舞台上が賑やか&華やか
そんな中、白太夫(玉也さん)の嬉しそうな様子が切なかった・・・。だってこのときはもう桜丸と話をしているわけでしょう・・・。と、楽しい中にも切なさの込み上げる気持ちにさせていただけたので、芳穂太夫さんの語りも良かったのだと思う。
『喧嘩の段』で梅王(玉志さん)と松王(玉男さん)が折ってしまう桜は、歌舞伎では一枝折れるだけだけど、文楽では幹の根元からポッキリなのね。そんな容赦のない文楽が好き笑。
『桜丸切腹の段』
簑助さん(桜丸)はあまり調子が良くなさそうに見えたのですが、大丈夫かなぁ・・・。こと切れた後に人形から離れる時もちょっとふらつかれてて、人形が動いてしまっておられた。
切腹はすごくキレイでした。歌舞伎で菊ちゃんがやったときも思ったけど、簑助さんの桜丸が本当に若くて美しくて、「今なら止められるのに」ってどうしても思ってしまうのに、それを止めることができない、見守るしかない八重と白太夫が可哀想で。健康な体をもった愛する人が今まさに目の前で死んでいこうとするのを止められないって、ものすごく辛いことだよね・・・。
もっとも簑助さんの桜丸は八重ちゃんのことはあまり気にしていないような、もう死しか見えていないように見えました。
ところでいつも思ってしまうのだけど、刀ではなく鉦と念仏による白太夫の介錯では桜丸は苦しみが長引いて辛いのではないかしら・・・。まぁ白太夫が介錯しなくてもちゃんと自分で首切ってるけども。
【豊竹呂太夫襲名披露口上】
今月は英太夫→呂太夫の襲名披露。私が文楽を観るようになってから襲名は玉女→玉男さんに続いて2回目。ちなみに歌舞伎の方の襲名はワタクシはもう付いていけておりませぬ・・・(今月の歌舞伎座では亀三郎さんが亀蔵を襲名されたんですよね・・・と思ったら違ってた!亀三郎→彦三郎、亀寿→亀蔵だった!やっぱりもうダメだ)。
さて、文楽の口上。以前ロビーのディスプレイで拝見した玉男さんのときの襲名口上は割と真面目なものだった記憶があるけれど、今回は皆さんなぜか爆笑系。司会?は呂勢太夫さん。口上は太夫部から津駒太夫さん、三味線部から清治さん、人形部から勘十郎さん。特に清治さんは、あんなに面白い方だったとは。口調も表情も淡々と「先代は文楽に似つかわしくない美男子で映画などからも声がかかったほどで」、一方当代は「ご覧のとおり愛嬌があり、まことに文楽に似つかわしい」笑。そして「というわけで実にいい男でございました。(チラッと隣を見て)・・・先代は」(会場大爆笑)。間が絶妙!上手いわ~。恐ろし~い越路太夫師匠の修業に耐えたのだから良い太夫になられることでしょう、とも。子供の頃の呂太夫さんの呼び名「雄ちゃん」も可愛かった
勘十郎さんはブラジル公演での日焼けのお話。お二人は研究生としても同期で初舞台も同時だったそうです。ということは玉男さん、和生さんとも同期ということか。でもご年齢は呂太夫さんがずっと上なのですね。
【菅原伝授手習鑑 ~寺入りの段、寺子屋の段】
『寺入りの段』は、呂勢太夫&清治さん。真面目な表情の清治さん、口上とのギャップがステキです笑。
『寺子屋の段』は、前半が呂太夫&清介さん、後半(切場)が咲太夫&燕三さん。襲名披露の呂太夫さんが一番の盛り上がりどころを語るわけじゃないのですね。詳しくないけど文楽世界のルールが色々あるのかな。
なにより勘十郎さんの千代の風情がとても良かったなぁ。さりげない姿勢や首の角度にも千代の性格や感情が感じられて。
咲太夫さんのお声は寺子屋にあまり合っておられないように感じられましたが(と咲太夫さんのときによく書いている気がするけれど)、「笑いましたか」のところ、こみ上げたなあ。周りの人も啜り泣いてた。歌舞伎でもいつも泣くところだけど。ここも勘十郎さんの千代が切なかったです。
呂太夫さんのところは昼食を食べて少しした頃の一番キケンな時間帯で、強烈な眠気が・・・・・。襲名披露なのにごめんなさい
呂太夫さんには昨年の熊谷陣屋で大きな感動をいただいたので(あのときも前半眠ってしまったが)、あの記憶とともにお祝いの気持ちとさせていただきたいと思いますm(__)m
あ、そうそう。子供達の人形がちっこくってわさわさしてて、可愛かった
紫の胡蝶蘭は安倍首相ご夫妻から、お隣は山村紅葉さんから。