“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「オスとは何で、メスとは何か? 〜「性スペクトラム」という最前線〜」(諸橋憲一郎著、NHK出版新書、2022年発行)

2023年05月04日 09時34分55秒 | 子どもの心の問題
昨今、LGBTQあるいはSOGIというワードが飛び交い、
今まで口をつぐんできた性的マイノリティーの方達の発言が、
ふつうに耳に入るようになりました。

子どもへの性教育のヒントになるかな、
という気持ちでこの本を読み始めました。



ヒトの社会では、男女の性別がハッキリしています。
いや、していました、という表現の方が正しいでしょうか。

そんな常識を“思い込み”ですよ、
と実例を挙げてわかりやすく説明し、
固い頭をほぐしてくれる内容です。

著者は生物学の研究者です。
研究対象はヒトではありません、念の為。

生物の世界では、ヒトほど性が確定していない種がたくさん存在するそうです。
一つの個体が、生きる環境によりオスになったりメスになったり・・・

生物学者の言う“性”とは、
・オスは精子を作る
・メスは卵子を作る
と定義されます。

性の決定は、
・遺伝的素因
・性ホルモン
がメインであり、この解説がほとんどを占めています。

そして、生物の性スペクトラムでは、
上記の定義内でオスとメスを行き来するのです。
つまり、一つの個体が諸条件に影響されて、
精子を作る状態になったり、
卵子を作る状態になったり・・・

これは、ヒトでは起こりえないことです。
つまり、ヒトのLGBTQなどのジェンダー問題とは別次元の話です。

著者は言及していませんが、
読んでいて一つ気づいたことがあります。
生物に性の多様性が存在する、その理由・目的は、
“子孫を残すスキル”に集約される、という事実。

ヒトのジェンダーではどうでしょうか。
LGBTQにおける、遺伝子変異や性ホルモン動態の研究はあまり耳にしません。
聞こえてくるのは主に“身体の性”と“心の性”の不一致レベルの話です。

やはりこの本の内容とは線を引いて区別して捉えるべきだと思いました。

ヒトでは中性化が進んでいると進化学者は言います。
意外なことに中性化の始まりは近年ではなく、
狩猟採集時代にコミュニティを形成したときに始まるそうです。
狩りの獲物は、ヒト一人では太刀打ちできない野生動物が多く、
集団で狩りをするようになり、
すると独りよがりの行動をする乱暴者より、
コミュニケーションを取って集団行動できるヒトが求められ、
長い年月をかけてその性格を持つヒトが生き残ってきました。

だからLGBTQが市民権を得たのは、
現代社会が要求した流れの中で捉えることができます。

もう一つ、性がオスとメスに別れた理由にも言及していません。
そこも知りたかった・・・。

以上、残念ながら性教育のヒントにはあまりなりませんでした。

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