自治体の乳幼児健診の際に、
「他に困ったことはありませんか?」
という質問に対する答えで多いのは、
“かんしゃく”と“偏食”です。
先日、かんしゃくに関するWEBセミナーをいくつか視聴しましたので、
ポイントと思ったことをメモしておきます。
応用行動分析を用いているのが注目されます。
行動の理由は次の4つに分けられるとのこと;
① 物・活動の要求
② 回避・逃避
③ 注目要求
④ 感覚(自己刺激)
かんしゃくが起きた時、
その理由が4つのどれに当てはまるのか、
その都度立ち止まって考えると、
具体的な対策が思い浮かぶかもしれません。
例示されていたそれぞれの対策は、
① 事前のお約束、良い行動が少しでもできてからものを渡す。
② 子どもが良い行動をしているときに声かけ。
③ やること(課題)の調整(量・レベルを下げる)、適切な発散方法を増やす。
という解説でした。
また、かんしゃくを起こしやすい子どもは
“興奮レベルの振れ幅が大きい”
という表現を興味深く聞きました。
小児科医である私はかんしゃくの相談を受けたときに漢方薬を処方しているのですが、
有効例のご家族から、
「感情の振れ幅が小さくなりました」
と報告されることが多いので、実感があります。
▢ “かんしゃく”とは?
・興奮を伴う混乱状態により発生する過度な行動
(例)
✓ 声を荒げて泣く
✓ 激しく奇声を発する
✓ 手足をバタバタする
✓ 床に寝転がる
✓ モノを投げる
✓ 足を踏み鳴らす
▢ かんしゃくのキッカケ
・生理的な不快感にもとづくかんしゃく
(例)眠い、お腹が空いた
・学習性のかんしゃく
(例)幼稚園に行きたくない
▢ かんしゃくは氷山の一角
・周囲から見えるのは“かんしゃく”だけであるが、
そのバックグラウンドには以下のことが隠れている;
✓ 友達とのコミュニケーションがうまくできない。
✓ 大人にかまって欲しい
✓ 運動面の不器用さがある
✓ こだわりが強い
▢ かんしゃくにおける“個”の問題
・その子の特性
✓ 性格
✓ くせ
✓ 好み
✓ 感覚
✓ 身体的特徴
✓ 情報の認知
✓ 情報処理の仕方 など
・獲得できるスキル
✓ 学習力
✓ コミュニケーション力
✓ スケジュール管理力
✓ セルフコントロール力
✓ 金銭管理力 など
▢ かんしゃくにおける“環境”の問題
・ヒト
✓ 家庭、教育機関
✓ 地域や周囲の理解
✓ サポート体制
✓ 福祉的サポートサービス など
・場所・モノ
✓ 広さへの配慮
✓ 音への配慮
✓ 視覚的・聴覚的補助
✓ 学習の補助アイテム活用
✓ 部屋の明るさへの配慮 など
▢ “個”と“環境”の間にある困難さ
・コミュニケーションが難しい
・かんしゃくが起きる
・落ち着きがない
・自分の気持ちを伝えにくい
・感情のコントロールが難しい
・読み書きなど、勉強が苦手
・切り替えることが難しい
・なかなか自信や意欲が持てない
▢ かんしゃくの理由〜応用行動分析学の世界〜
・かんしゃくが起きる理由は大きく分けて4つ〜どの理由からかんしゃくが起きているのか把握しよう
① 物・活動の要求:物や活動を獲得するための要求
(例)欲しい!見たい!やりたい!
② 回避・逃避:イヤなことが生じたときにイヤなことから逃れるための行動
(例)つまんない、飽きた!やりたくないよ〜、ムリ!
③ 注目要求:他者からの注目がないときに注目を集める行動
(例)見て見て、すごいでしょ!困っているのに気づいて!
④ 感覚(自己刺激):刺激がないときに自分の好きな刺激を入れる行動
(例)こうしていると落ちつく〜、だって楽しいんだもん!
〜これらが判明したら、それを解消する対策を取ろう
▢ かんしゃくと興奮のメカニズム
・ヒトの興奮レベルは常に変動している。
・興奮レベルの振れ幅が大きい子どもは、
興奮が繰り返し起きやすくなる。
▢ “したいことを伝える”方法いろいろ
・興奮して感情的になっていると、
複雑なことができなくなってしまう、
ふだんできていることもできなくなってしまう。
(複雑) ふだん 興奮時
↑ 交渉する できない できない
理由を伝える できない できない
文章で伝える できない できない
短文で伝える できる できない
単語で伝える できる できない
指さす できる できる
↓ 叩く・叫ぶ できる できる
(容易)
▢ 興奮につながる要因
・子どもの個性や現状スキル
✓ 体力、身体発達の未熟さ
✓ 過敏性
✓ 特性:こだわりの強さ、気持ちのコントロールが難しい、
友人関係がうまくいっていない
他者と自分の意図を合わせるのが苦手 など
・環境
✓ 頑張らなければいけない環境
✓ 友人関係がうまくいっていない
✓ 疲れている など
▢ かんしゃく発生時にしてはいけないNG対応
1.興奮を高める対応は避ける
・かんしゃく時の発言は「発散」としていっているだけかも・・・
→ まともに取り合わない方がよい
・子どもにつられて親も爆発!
→ 子どものかんしゃく状態と同じ?
▢ かんしゃく発生時の対応その1〜まずは安全確保(環境調整)が何よりも大事!
✓ 怪我をしないように物をどける、場所を移動する。
✓ 壁に頭を打ち付ける等の場合は、間にクッションを置くなどの工夫。
✓ 子どもだけでなく、保護者や兄弟などの安全も確保する、など。
▢ かんしゃく発生時の対応その2〜対応の基本はクールダウン(興奮を低下させ、適度に落ちついた状態(中庸)に)する
① 興奮を引き起こす刺激をなくす/減らす
・多少のことはスルー(売り言葉に買い言葉はNG)、ただし無視だけで対応しようとしない。
・再燃させる刺激がなければ、時間経過により落ちついていく。
クールダウンルームやスペースを利用する。
※ 話しかける関わりも興奮につながることがあるので、
安全な場所で放っておくことも手立て。
・訴えてきても、イヤな気持ちに対する共感のみ(要求には反応しない)
② 落ちつくことにつながる活動をしてもらう
・水を飲んだり、深呼吸したり、ぬいぐるみを抱いたりする。
・別の活動をして気をそらす。
・単調なことをする(プチプチを潰す、数字を数える、など)
▢ 保護者自身のセルフコントロールーその1
・感情は伝染するので、巻き込まれてしまうのはある意味自然。
・保護者自身もふだんできていることが興奮してできなくなっている。
(例)子どもへの伝え方
(複雑) (ふだん) (興奮時)
↑ 折り合うポイントを探す できない できない
学んだ対応をする できる できない
簡潔に伝える できる できない
手を取ってやらせる できる できる
↓ 叩く・怒鳴る できる できる
(容易)
▢ 保護者自身のセルフコントロールーその2
〜ふだんから意識をして落ちつく方法を決めておく。
疲れをためないように自分の時間を作る。
① アンガーマネジメント
・関わる前にゆっくり10数える。
・一回深呼吸する。
・水を飲む、など。
② 余暇や自分の時間の確保
・自分なりのリラックス方法
・自分なりの発散方法
▢ かんしゃくを減らす取り組みの基本的な考え方
・かんしゃくを減らすのではなく、
その他の望ましい行動を増やすことで、
結果的にかんしゃくの出現頻度が下がっていく。
・かんしゃくはすぐにはなくならない、
半年前、1年前に比べると「少しはましになったかな?」でOK。
▢ かんしゃくを減らす具体的な取り組み
① 子どもの“できる”を増やす。
② 楽しく過ごせる場所や活動を増やす。
・楽しめることの選択肢が少ない場合や疲れているときは、
かんしゃくや興奮が起きやすい。
・余暇やリフレッシュの時間を作る、子どもが楽しめる習いごとをする、など。