小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

秋は収穫の季節である

2008-10-15 17:43:44 | Weblog
秋は収穫の季節である。

コンバインで稲刈りをしている所をたまたま車で通りかかった。
ので、車から降りて稲刈りを気持ちよく見ていた。
私もやってみたくなったので、じいさんに声をかけた。
「おじいさん。僕にもやらせてくれませんか」
「だめじゃ。うぬらはわしらの作った米を食うだけで汗水たらして作る苦労はせん。うまいとこだけ味わおうなんて虫が良すぎるわい」
じいさんは、あっかんべー、と舌を出した。
じいさんは、うわっはははは、楽しいわ、と言いながらコンバインで稲を刈っていった。
その時、後ろできれいな女性もその風景を見ていた。
「どうしたんじゃね。お嬢さん」
「あ、あの。おじいさん。私もやってみたいと思っていたんです。確かに虫が良すぎますわね。ごめんなさい」
「おお。お嬢さん。遠慮しないで、どうぞどうぞ。やってみてくだされ」
「ありがうとございます」
彼女は、失礼します、と言ってコンバインに乗った。
稲がどんどんコンバインによって刈りとられていく。
「うわー。楽しいー」
「そうじゃろ。これが米を作る者にとって一番、楽しいんじゃ。うんといい思い出になされ」
「て、てめえ。じじい。てめえの言う事は矛盾してるぞ」
「うっせ。うっせ。この人は心の清い人なんじゃ」
「おれは心が清くないのか」
「そうじゃ」
「何でそんなことがわかるんだ」
「人は一目見れば、人格が解るわい」
じいさんは、そっと彼女の太腿に手を置いた。
そして、その手を太腿の付け根の方へ這わせていった。
「あん。おじいさん。いやっ。やめてっ」
彼女はくすぐったそうに笑いながら言った。
「てめえ。じじい。おれもてめえの人格がわかったぜ」
「じじい。もう米なんか食わねえからな」
「おう。お前一人なんかが米を食わなくても、何の影響も無いわい」
もう私はパン食にしようと思った。

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