De cela

あれからいろいろ、昔のアルバムから新しい発見まで

水上勉『故郷』

2012-09-16 22:01:44 | 震災と復興
北里大学病院にはボランティア運営の図書室があった。時間はたっぷりあるのでいままでゆっくり読めなかった小説が読める。さすがあわてて持って行った『論語』は集中できないし、これは現役時代に読むべき本。

そこで目にとまった水上勉の『故郷』を手に取った。



時代はいまから20年前の若狭湾。主人公がアメリカ生活から帰った故郷は原発ブームで一変していた。
景色は変わり、原発マネーで人の心も変わった。
あの頃から原発の恐ろしさは結構正しく受け止められていた。
いまこそ読み返してみるべき小説である。
作者にはスリーマイル事故の教訓を学ぶべきという意識があった。

著者も読者も、世間もいったん事故となれば福島原発のようなことになることをこのころみんな知っていたのだ。
若狭湾にはこの小説が書かれたころすでに11基の原発が稼働または建設または予定されていた。まさに原発銀座。
私は福島事故が起こるまで、正しく原発と付き合うべきという考えだった。
原発推進のために他の貴重な技術の進歩が抑えられゆがめられているとは知らなかった。

いまはもっと多くの知識が身についた。日本人の選択は限られている。
私たち過去の人間には日本の未来が読めない。罪を犯した世代でありながら・・。
若い子供たちの知恵と努力と、場合によっては生き方の発見に希望を持ちたい。

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