太宰治は小説「津軽」の中で、子持ちのヤリイカを美味しいと書いています。
作品内で太宰は蟹田の観瀾山(かんらんざん)に花見に行きます。太宰は中学時代からの友人N君の奥さんの作ったお弁当(重箱)を食べるのですが、その表現がこちら。
重箱のお料理の中では、ヤリイカの胴にヤリイカの透明な卵をぎゆうぎゆうつめ込んで、そのままお醤油の附焼きにして輪切りにしてあつたのが、私にはひどくおいしかつた。
これを思い出したので、子持ちヤリイカの料理を作ってみましょう。
太宰は醤油の付焼きを食べたと書いてありますが、わたしは煮付けで作ってみます。
ヤリイカは冬が産卵期。大型はオス、小型がメスです。メスは1月から3月くらいまで卵を持っています。卵を持っている時期は海域によって異なります。
これがヤリイカの卵。胴の先端部分にまとまっています。
このまま生で醤油やポン酢を垂らして食べても美味しいですよ。
刺身にするヤリイカからは卵をとっておきます、右上の皿。
煮付け用のヤリイカは内臓と骨を抜き取る(壺抜き)と、胴の中に卵が残ります。
皿にとっておいた卵をさらに壺抜きしたヤリイカに戻してやります。
下処理完了。
右上は壺抜きして卵は入ってる小さなメスヤリイカ、楊枝で口を止めておきます。
右下は刺身用の剥き身。
左上はげそとえんぺらなどを湯通ししたもの、炒め物や煮物揚げ物なんにでも使えます。
あとは煮るだけ。味付けは醤油、酒、みりん、砂糖、しょうがなど、お好みで。
ちなみにオスのヤリイカは、こんなものを持っています。
精莢(せいきょう)という奴で、1本1本が精子の発射管になっています。こちらは食べられません。
煮あがったところ。加熱するとヤリイカは半分ほどに縮みます。
胴を切ってみると、中には卵が入っているのがわかります。
太宰は「卵をぎゆうぎゆうつめ込んで」と書きました。
熱で身が縮んだせいで「ぎゅうぎゅう」に卵が詰め込まれたように見えるため、実際には詰め込むと言うほどの量は使ってないだろうと想像しているのですが、附焼きの作り方はN君の奥さんに聞いてみたいところ。
さて、味の方ですが、煮ることによってイカの旨味がぎゅっと圧縮されている感じをうけます。
これに卵の食感が加わって、ひどくおいしい(^^)
今回は身と卵だけで煮ましたが、ご飯を詰めてから煮る、ヤリイカ飯を作っても美味しいです。
これから旬を迎えるヤリイカ。
子持ちの♀槍が釣れたときにはぜひお試しになられて、レッツ太宰。
卵詰め直す工程知りませんでした。
普通は卵は詰め直さないと思います、内臓抜いてそのまま煮たり焼いたり。
刺身にしたメスヤリの卵は、いつもなら生醤油たらして食べるのですが、この日は気が向いたので。