本屋で時間潰しをしている時、文庫本コーナーでふと目に入った一冊。
あれ?こんな本あったっけ?新潮文庫の三島作品は学生時代にほとんど読んでいるのですが、この書名には覚えがない。
新潮文庫で未収録だった短編を集めたもののようです。
このうち、家族合わせ、切符、英霊の聲の3編は読んでいます。
未読6編のうち、手長姫は読んでみたかった、こりゃ買いですね、とレジへ。
「酸模」は13歳のときの作品。いまになって初めて読んだのですが、その早熟さに驚きます。文体は完成されているし、語彙は三島らしさ全開だし、とても13歳の書いたものとは思えません。三島のデビュー作は「花ざかりの森」で、これはまた難解というか捉えどころのない小説で、読んだといっても活字を目で追っただけにとどまっていて、今また酸模を読んだ後に花ざかりの森を読んでみましたが、やはりわたしには難しかった^^;。
「手長姫」は何かの評論かでみて記憶に残っていたと思うのですが、罪の意識なく罪をおかす女性とそれに関わる男の心理を描いた作品で、三島の心理小説らしさが出ていると思いました。
「魔法瓶」は最後の終わり方がわからなかった。なぜ魔法瓶を割ったのか?なぜ泣いたのか?なぜ川瀬は魔法瓶を怖れたのか?これらが全くつながりません。何度も読み返してみましたがわからなかった。これぞまさにミステリー小説です。
「英霊の聲」は二・二六事件の日になると読み返している小説です。三島の天皇思想がわかりやすく出ているように思っているのだけど、果たして私の解釈は合っているのか?
それぞれの作品の前に、時代背景や三島の年譜が添えられているので、後読みの人にとってはわかりやすいまとめ方になっています。
この9編を選んだ選者の意図はよくわからないのですが、三島の代表作(潮騒、仮面の告白、金閣寺)とあわせて読む短編にはうってつけかなと思います。
こちらが裏表紙の紹介文。
文庫本にまとめたのは最近、2020年のようです。没後50年企画かな。
いまさら読むまでもないですが、作者プロフィール。
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