肉体の悪魔と心理描写
レイモン・ラディゲ
(Raymond Radiguet)
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1903年6月18日にフランスはパリの郊外、サンモール・デ・フォッセで生まれる。
1923年12月12日に、まだ20才なのに腸チフスで亡くなる。
フランスで生まれた小説家、詩人。
生涯
幼少の頃は学業優秀でならすものの、思春期にさしかかる頃から文学にしか興味を示さなくなり、学業そっちのけで風刺漫画家として活動していた父の蔵書を読み耽るようになる。
そのときフランス文学の古典の魅力にとりつかれる。
14才の頃、『肉体の悪魔』のモデルとされる年上の女性と出会い、結果として不勉強と不登校のため学校を放校処分になる。
その後、自宅で父親からギリシア語とラテン語を習いながら、徐々に詩作に手を染める。
15才の時に父親の知り合いの編集者のつてをたどって知り合った詩人のマックス・ジャコブに詩を評価され、同じ詩人のジャン・コクトーに紹介される。
コクトーはラディゲの才覚を見抜き、自分の友人の芸術家や文学者仲間に紹介してまわる。
数多くのコクトーの友人との交友を通して、ラディゲは創作の重心を徐々に詩作から小説に移しはじめ、自らの体験に取材した長編処女小説『肉体の悪魔』の執筆にとりかかる。
途中、詩集『燃ゆる頬』、『休暇中の宿題』の出版や、いくつかの評論の執筆を行ないつつ、「肉体の悪魔」の執筆を続行。
数度のコクトーを介した出版社とのやりとりと改稿の末に、ベルナール・グラッセ書店から刊行される。
このとき出版社は新人作家対象としては異例の一大プロモーションを敢行したため文壇から批判を浴びるが、作品は反道徳的ともとれる内容が逆に評判を呼びベストセラーとなり、ラディゲは一躍サロンの寵児としてもてはやされることになる。
![]() ミシュリーヌ・プレールと ジェラール・フィリップ ■ 『肉体の悪魔』 (映画紹介) |
「肉体の悪魔」で得た印税を元手に、コクトーとともにヨーロッパ各地を転々としながらも、ラディゲはすでに取りかかっていた次の作品『ドルジュル伯の舞踏会』の執筆を続行。
同時に自分がこれまで書いた評論などの原稿や詩作を整理しはじめる。
1923年11月末頃に突如、体調を崩し腸チフスと診断され入院。
病床で「ドルジュル伯」の校正をしながら治療に専念するが、快方には向かわずそのまま20才の短い生涯を閉じる。
遺作の「ドルジュル伯の舞踏会」は、死後出版された。
コクトーはラディゲの早すぎる死に深い衝撃を受け、その後およそ10年にわたって阿片に溺れ続けた。
フランス文学界での位置づけ
ラディゲのフランス文学史全体における位置づけは、作家としての活動期間が短かく、作品の本数も少ないせいもあってか決して高くはない。
しかし処女小説「肉体の悪魔」は、題材のセンセーショナルさに溺れることなく、
年上の既婚者との不倫に溺れる自らの心の推移を冷徹無比の観察眼でとらえ、
虚飾を排した簡潔な表現で書きつづったことで、
今日もなお批評に耐えうる完成度に達している。
「ドルジュル伯の舞踏会」に至っては、
ラディゲ自らが参考にしたとしているラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を、
高度に文学的な手腕で換骨奪胎し、
別の次元の「フランス心理小説の傑作」に仕立て上げていることからも、
「夭折の天才」の名にふさわしい文学的実力の持ち主であったことが容易に推察される。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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今日はレイモン・ラディゲの心理描写についてお話になるのですか?
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そうですよう。レンゲさんにとっても、関心のある分野でしょう?
あたしが心理描写に関心があるとデンマンさんは思っているのですか?
当然ですよう。
あらっ。。。どうして当然なのでしょうか?
やだなあああぁ~。。。とぼけないでくださいよう。レンゲさんは次のように書いていたでしょう。
フロイトの精神分析
2007-04-13 13:53
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デンマンさん
わたしの言う「エロい」は、
やはり少々お下品だったかな?
この表現って、
わたしにとっては「ギャグ」に近いんですよ
わたしは関西人のなかでも特に?
ウケをねらう傾向が強すぎるものでして、
必要以上に自分をコミカルにデフォルメするという、わるーい癖があるんですよね
で、回答へとまいりますね。。。
江戸川乱歩全集に関してですが、
とにかく横尾氏のイラストが、
エロチックだったのです。
幼いころから、女性の肉体の美しさに
強烈に魅了されていたわたしは、
偉大な画家たちの描く裸婦や、
女性のヌード写真を見て
「わたしも早くこんな風にキレイになりたいなあ!」
と、成熟へのあこがれを強く感じていました。
乱歩の作品自体については、
「エログロナンセンス」の時代特有の、
妖しげな表現に魅せられました。
「人間椅子」での、愛する女性のソファに、
自ら入り込み、悦楽にひたる男の異常な愛などは、
「家畜人ヤプー」に通じるものがあり、
それはむしろ、純粋なものすら感じました。
そういえば…
乱歩の時代のことが知りたくて、
おばあちゃんに
(今は亡き愛するおばあちゃんです!)
「見世物小屋行ったことある?」
「衛生博覧会って、どんなんやった?」
などと、聞きまくっていたものです
「チャタレイ夫人の恋人」ですが…
ぶっちゃけエロい箇所の拾い読み、
というのが事実です!
だってねえ…あの小説の大半は、
ロレンスの思想の
展開だと思いませんか?
小学生のわたしに、そんなものを理解できるような
知性も理解力もなかったっす…
で、大人になってから読み返したのですが、
森の番人の野卑でありながらも、
深い洞察力に満ちた性格に、
恋愛感情にも似た気持ちを感じました。
おまけに、セックスは上手ですしね(キャー!)
女性が自らの性欲を恥じる必要など
ないということを、
わたしは少女時代に、
あの小説によって知ったのかもしれませんね。
フロイトも、ヒステリーの原因は、
性的欲求不満であると、言ってましたよね?
セックスとは、
愛を基盤とした自由なものであるべきだと、
わたしはずーっと信じてます!
by レンゲ
『おばさんパンツ (2007年10月6日)』より
こうして手記にもフロイトを持ち出しているほどですからね。レンゲさんは大阪人のユーモアを持ち合わせながらも、詩を書くにも短歌を書くにも、心理の奥深くに突き進んで書くようなところがありますよう。
そうでしょうか?
例えば次の詩なんか、まさに心理の奥深くに入っていますよう。
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砂漠に生まれた小さな花
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やっとオアシスを見つけ
咲いているわたし
いつまでもこのまま咲いていたい
たとえまた枯れるとも
最高の一瞬を
最高の一瞬だと
意識しないのはもったいないこと
わたしは砂漠に生まれた小さな花
花をつけることを忘れたまま
ある朝ひっそりと枯れてゆく
だれかが見つけてその花を
きっと枯れ草と呼ぶでしょう
花を咲かせることはできなかったけれど
それは確かに花だったのです
by レンゲ
『愛と夢のバンクーバー!』より
(2006年8月29日)
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あたしのこの上の詩をデンマンさんは心理描写と呼ぶのですか?
砂漠、オアシス、花という自然界の具象物を持ち出しながら、レンゲさんは心の奥底を覗かせていますよう。そうでしょう?レンゲさんは砂漠の事を書こうとしているわけではない。心の内に目を向けているのですよう。
確かに砂漠やオアシスや花がテーマではありません。
そうでしょう?だから、心理描写と言っても決して的外れではないのですよう。
。。。で、デンマンさんは、どうして心理描写を取り上げたのですか?
僕がめれんげさんの『即興の詩』サイトに書いたコメントを読んでみてください。
心理描写に磨きをかけて
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8月17日の『レンゲ物語』は
題して『肉体の誘惑』。
もちろん、レイモン・ラディゲの
『肉体の悪魔』をもじって付けたのですよう。
めれちゃんの上の短歌を
出だしに使わせてもらいました。
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■ 『肉体の誘惑 (2008年8月17日)』
■ 『肉体の悪魔』 (映画紹介コーナー)
実は、昔作られた映画を
VHSで見た事はあったけれど、
不倫映画の一つとして
大して印象強く僕の記憶の中に
残っていなかったのですよう。
原作を読んでいたら、
もっとじっくりと観たでしょうね。
ちょっと残念に思っていますよう。
めれちゃんが『肉体の悪魔』を読んで
メチャ面白かったという意味が
よ~く分かりますよう。
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タルーは、とてもカッコイイです!
初めて「ペスト」を読んだ後、
しばらくは、タルーの事で頭がいっぱいでした!
リウーには、イマイチ関心がないです…
内面的な描写が少ない気がするのです
by めれんげ
2008/07/30 12:02 PM
『即興の詩 指きり』のコメント欄より
こんな風にめれちゃんは書いていたからね。
めれちゃんが内面的な心理描写に
こだわっているのが分かりましたよう。
レイモン・ラディゲは『ドルジュル伯の舞踏会』で
心理描写に磨きをかけて、
「フランス心理小説の傑作」に仕立て上げているけれど、
『肉体の悪魔』でも主人公の心理を
克明に書いているよね。
おそらく、めれちゃんが面白いと感じたのは
主人公の心理の動きだと思う。
めれちゃんが『肉体の悪魔』が
めちゃ面白かった、と言わなかったら
僕は、これほどまで『肉体の悪魔』に
こだわらなかったと思う。
今回の記事も、めれちゃんに
かな~りインスパイアされました。
ありがとう。
もうしばらく、『肉体の悪魔』に
こだわりながら、記事をいくつか
書くつもりですよう。
\(^_^)/キャハハハ。。。
めれちゃんは、今、『肉体の悪魔』を
じっくりと読んでいる最中かな?
レイモン・ラディゲが“マルト”に言わせた
最も印象に残る言葉は次のものです。
「わたし、あの人と幸福であるよりは、
あんたと不幸なほうがましだわ」
めれちゃんならば、言いそうな言葉だよね?
\(@_@)/ うしししし。。。
とにかく、めれちゃんもマイペースで
書いてね。
楽しみにしているよう。
じゃあね。
by デンマン
2008/08/16 4:49 PM
『即興の詩 きみ知らぬ頃』のコメント欄より
つまり、めれんげさんも心理描写に関心があるのですね。