ワイセツとチャタレイ夫人(PART 1)
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「チヤタレー夫人の恋人」は英文学界において名前が通つているA3の長編小説であり、芸術的観点からして相当高く評価されている作品である。
それは小説の筋の運び方や、自然、社会、登場人物の性格の描写、分析や、著者の教養の広さを示すところの、ユーモアと皮肉に富む対話などからして、著者の芸術的才能を推知せしめるものがある。
(中略)
話の発端は第一次大戦において負傷し、性的機能を失つた若い貴族のクリツフオードとその妻コニ―との、中部イングランドのラグビー邸における彼女にとつて不自然で退屈な生活である。
そのうちにコニ―とクリツフオードの雇人で、その領地内に住んでいる、妻と別居していたメラーズという森番の男との間に恋愛および肉体的関係が発生、発展し終に両人ともに社会的拘束をふり切り、離婚によつて不自然と思われる婚姻を清算して恋愛を基礎とする新生活に入ろうとする。
これがこの小説の構造のあらましである。
そしてこの構造は思想的、社会的、経済的の主題によつて肉附がなされているのである。
それらは貴族階級の雰囲気に対する批判、工業化による美しい自然の破壊、農村の民衆の生活に及ぼす影響、鉱業労働者の悲惨な境遇、人心の荒廃、間化等の事実を指摘し、また著者自身が真に価値のある生活と認めるものおよび著者のもつ社会理想を暗示している。
そしてその主題の中で全篇を一貫する最も重要なものは、性的欲望の完全な満足を第一義的のものとし、恋愛において人生の意義と人間の完成を認めるかのような人生哲学である。
かような人生哲学からして著者は彼の祖国のみならず他の国々においてもあまねく承認されているところの、性に関する伝統的な、彼のいわゆる清教的な観念、倫理、秩序を否定し、婚姻外の性交の自由を肯定するが、同時に性的無軌道な新時代の傾向に対しても批判的であり、精神と肉体との調和均衡を重んずる性の新な倫理と秩序を提唱しているものであること本書の内容、著者自身の序文、その他の著書および原判決において引用するA3の書翰からして推知できるのである。
この点から見て本書がいわゆる春本とは類を異にするところの芸術的作品であることは、第一審判決および原判決も認めているところである。
しかしながらA3の提唱するような性秩序や世界観を肯定するか否かは、これ道徳、哲学、宗教、教育等の範域に属する問題であり、それが反道徳的、非教育的だという結論に到達したにしても、それだけを理由として現行法上その頒布、販売を処罰することはできない。
これは言論および出版の自由の範囲内に属するものと認むべきである。
問題は本書の中に刑法一七五条の「猥褻の文書」に該当する要素が含まれているかどうかにかかつている。
もしそれが肯定されるならば、本書の頒布、販売行為は刑法一七五条が定めている犯罪に該当することになるのである。
出典: 『チヤタレー事件判例』
赤字はデンマンが強調するために施(ほどこ)したものです。
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デンマンさん。。。あんさんは今日も、しつこく「チャタレイ夫人」を持ち出してきやはったん?
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いや。。。しつこいと言うよりも、11月28日の続きやがなァ。
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■『ワイセツと芸術』
(2010年11月28日)
めれちゃんかてぇ、興味があるやろう?
もちろん、関心がありますわ。 でも、わたしにとって、『ワイセツと芸術』の問題は、はっきりと白と黒がついてますねん。
つまり、「チャタレイ夫人の恋人」は表現の自由の観点から、裁判で争われるような問題ではないと、めれちゃんは断言するのやなァ?
そうです。 上の判例でも、裁判官はちゃんと認めておるやん。
芸術的観点からして
相当高く評価されている作品
貴族階級の雰囲気に対する批判、
工業化による美しい自然の破壊、
農村の民衆の生活に及ぼす影響、
鉱業労働者の悲惨な境遇、
人心の荒廃、間化等の事実を指摘し、
また著者自身が真に価値のある生活と認めるもの
および著者のもつ社会理想を暗示
性的無軌道な新時代の傾向に対して批判的であり、
精神と肉体との調和均衡を重んずる
性の新な倫理と秩序を提唱
裁判官だってぇ分かっておるねん。ただ、オツムが時代遅れやさかいに、新しい考え方を素直に認めることができへん。 それで、いろいろと理屈を捏ね回して、刑法一七五条の「猥褻の文書」に該当する要素が含まれていると、言うてるねん。
さよかァ~。。。
だから、レンゲさんだって小学生の時に読んでも、学ぶことが多かったと言うてますやん。 裁判官よりもオツムがよっぽど現代的ですねん。
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あの小説の大半は、
ロレンスの思想の
展開だと思いませんか?
2007-04-13 13:53
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「チャタレイ夫人の恋人」ですが…
ぶっちゃけエロい箇所の拾い読み、
というのが事実です!
だってねえ…あの小説の大半は、
ロレンスの思想の
展開だと思いませんか?
小学生のわたしに、
そんなものを理解できるような
知性も理解力もなかったっす…
で、大人になってから読み返したのですが、
森の番人の野卑でありながらも、
深い洞察力に満ちた性格に、
恋愛感情にも似た気持ちを感じました。
おまけに、セックスは上手ですしね(キャー!)
女性が自らの性欲を恥じる必要など
ないということを、
わたしは少女時代に、
あの小説によって知ったのかもしれませんね。
フロイトも、ヒステリーの原因は、
性的欲求不満であると、言ってましたよね?
セックスとは、
愛を基盤とした自由なものであるべきだと、
わたしはずーっと信じてます!
by レンゲ
『ゴスロリと黒パンツ』より
江戸川乱歩の世界
(2009年5月6日)
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うん、うん、うん。。。なるほどなあああァ~。。。「セックスとは、愛を基盤とした自由なものであるべきだと、わたしはずーっと信じてます!」とレンゲさんは言うてるでぇ~。。。これは、つまり、判例中の次の箇所を言い換えたようなものやなァ。
性的欲望の完全な満足を
第一義的のものとし、
恋愛において
人生の意義と人間の完成を
認めるかのような
人生哲学である。
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そうやわァ。。。裁判官のおっちゃんも「チャタレイ夫人の恋人」をじっくりと読んで、理解しておるねん。
そうやろな。。。判例の中でしっかりと書いておるさかいに、じっくりと読んだのやろうなァ。
そやから、「チャタレイ夫人の恋人」はワイセツでも何でもないねん。。。ところで、裁判官は上の判例をいったい、いつ頃書きはったん?
だいぶ前やァ。。。
だいぶ前やってぇ、いったい明治何年のことやのォ~?
めれちゃん。。。いくらなんでも、明治時代ではないでぇ。 昭和32(1957)年3月13日に書いたものやがなァ。
50年以上も前やんか。 時代が違いますやん。 裁判官のおっちゃんも判例の中で次のように言うてますう。
なお性一般に関する社会通念が時と所とによつて同一でなく、同一の社会においても変遷があることである。
現代社会においては例えば以前には展覧が許されなかつたような絵画や彫刻のごときものも陳列され、また出版が認められなかつたような小説も公刊されて一般に異とされないのである。
また現在男女の交際や男女共学について広く自由が認められるようになり、その結果両性に関する伝統的観念の修正が要求されるにいたつた。
つまり往昔存在していたタブーが漸次姿を消しつつあることは事実である。
しかし性に関するかような社会通念の変化が存在しまた現在かような変化が行われつつあるにかかわらず、超ゆべからざる限界としていずれの社会においても認められまた一般的に守られている規範が存在することも否定できない。
それは前に述べた性行為の非公然性の原則である。
出典: 『チヤタレー事件判例』
赤字はデンマンが強調するために施(ほどこ)したものです。
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要するに、時代が移り変わるにしたがって、タブーがタブーではなくなりますねん。
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なるほどなァ~。。。めれちゃんは、ちゃんと見るべき所を見てるやんかァ。
それで、あんさんは「チャタレイ夫人の恋人」がワイセツやから、子供たちに読ませんほうがええと思ってるん?
いや。。。わては「チャタレイ夫人の恋人」がワイセツやとは思うておらんでぇ~。
マジで。。。?
もちろんやァ。 わては、かつて小百合さんと「チャタレイ夫人の恋人」について語り合ったことがあるねん。 めれちゃんも、ちょっと読んでみて欲しいねん。
投稿日時: 2008/09/05 07:32 (ロンドン時間)
日本時間: 9月5日 午後3時32分
バンクーバー時間: 9月4日 午後11時32分
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う~ん
デンマンさんの『ロマンポルノ』
時間を作って ゆとりある時 読みます。
映画も本も その人の 受け止め方で、かなり違います。
素直に同じ気持ちで受け止めるか、
また 正反対になるか。
最近は本を選んでも 自分に 今読んでいいか?
自分にあっているのか? 考えてから 始めます。
やっぱ 「チャタレイ夫人の恋人」ですか
昔の やらP- 映画は 詳しくなく、
『軽井沢夫人』も 今も良く内容がわからないのですが
ケーブルTV の映画部門のチャンネルで①~④をみました。
(「チャタレイ夫人の恋人」です)
ショックで ショックで 9月2日~5日まで見ながら…
でも、今のイヤな事を 忘れさせてくれました。
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そうですよう。そうですよう。
映画も小説も“今一つの世界”に見る人、読む人を誘ってくれますよう。
そうやって、誰もが“今一つの世界”がある事を知るのですよう!
軽井沢の別荘は、小百合さんにとって物理的な“今一つの世界”だけれど、
『小百合物語』と『ロマンポルノ第3部と第4部』は
小百合さんにとって精神的な“今一つの世界”になるだろうと思います。
その中で、小百合さんの40代、50代、60代の夢とロマンを考える事ができるのですよう!
良かったのか 悪かったのか、のめり込んで見てました
大人の目で見てみると シーンの
1つ 1つ が 大人用に 映っているなーと
昼 一人で 見られました。
デンマンさんはどう思った?
ブログでは書かなくてイイから、私に答えてみて。
10月でもいいです。
忙しいデンマンさんへ
小百合より
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それにしても
やらし~ かったね。 森の中…
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そうです。そうです。
『ロマンポルノ 第3部と第4部』も小百合さんがのめり込むようにして読めると僕は確信を持っていますよう!
だから、昼間、時間があって一人の時に読んでね。
理想的には、一人だけになった深夜に読むのが一番ですよう!
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デンマンさんはどう思った?
ブログでは書かなくてイイから、私に答えてみて。
「チャタレイ夫人の恋人」は、現在では純文学のカテゴリーに入っているようですよう。
つまり、本を読むと、現代の感覚では、それほどエロくないのですよう。
僕も初めて読んだとき、思ったほどエロくないのでがっかりしましたよう!
つまり、「夫人の立場に置かれた時に、あなたならどうしますか?」
そのことを読者に問いかけているのですよね。。。
映画では、半分以上がファンタジーになっていますよう。
つまり、映画では小説と違って『エマニエル夫人』のような詩的映像になっている。
森の中のシーンも詩的映像になっていますよう。
小百合さんは「やらし~ かったね。 森の中」と言うけれど、
あのシーンが一番良かったよう!
うしししし。。。マジで。。。
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(すぐ下のページへ続く)