パリからさようなら(PART 1)
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Subj:小百合さん、おはよう!
シャンソン『枯葉』を聴いて、
『パリの空の下』を聴いて、
パリに行った気分になりましたか?
きゃはははは…
From: denman@coolmail.jp
To: sayuri@hotmail.com
Cc: barclay1720@aol.com
Date: 06/12/2010 5:15:21 PM
Pacific Standard Time
日本時間:12月7日(火)午前10時15分
小百合さんとパリで楽しい毎日を過ごしましたが
パリにも、いよいよ、さよならする時がやってきましたよう。
イヴ・モンタンが歌う『枯葉』を聴きながら、パリの右岸を小百合さんとそぞろ歩きました。
きゃはははは。。。
それから、アンヴァリッド(廃兵院)の近くにあるレストラン「ル・プティ・ニソワ (Le Petit Niçois)」でブイヤベースを食べました。
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ニンニクの入ったアイオリソースを自分の好みで味付けをし、カリカリのバゲットをスープに浸してじっくりと味わいました。
ペンチやらナイフなどさまざまな道具を使って、小百合さんは楽しそうにカニやエビと格闘してましたね。
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「今度来るときには子供を連れてきますわ。きっと喜んで楽しみながら食べると思います」
小百合さんは子供思いなのだよね。
そんな事を言いながら、すごい勢いで平らげていましたよう。
いつもながら小百合さんの食欲に僕は脱帽したのです。
ところが、そろそろ食べ終わる頃になると、また旗を振っている添乗員の後からゾロゾロと団体さんが入ってきたのですよう。
んもお~~!
「デンマンさん!。。。また山梨県からの団体さんだわ!。。。どうして。。。?」
もちろん、僕だって分かりませんよう。
なぜ、山梨県の山奥からやってきた団体のおじさんとおばさんと顔を合わせなければならないのか?
夢とは言え、未だにその理由が分からない!
小百合さんにも分からないよね?
とにかく、レストランを出てからタクシーでブローニャの森へ行ったのでした。
広い公園ですよう。
まるでバンクーバーのスタンレーパークと変わらないほど自然がいっぱいです。
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「デンマンさん。。。一体何をなさろうとするのですか?」
「これから西洋蚊帳を吊るのですよう」
「西洋蚊帳。。。?」
「そうですよう」
「西洋蚊帳ってぇ、なんですの?」
「説明するよりも、僕がこれからその枝に紐を引っ掛けて蚊帳を吊るしますから見ていてくださいね」
そう言う訳で、僕はフランス映画「幸福(しあわせ)」の真似をして、枝っぷりの良い一本を見定めて、それに紐を結んで西洋蚊帳を吊るしたのでした。
「デンマンさん。。。気は確かですか?」
「僕はノー天気ではありませんよ! うへへへへへ。。。」
「でも、12月というのに。。。」
「小百合さん。。。何を言ってるのですか! 日本を出るときには確かに12月でした。 でも、ここパリでは7月ですよう」
「あらっ。。。いつの間に7月になってしまったのかしら。。。で、蚊帳を吊ったりして一体何を始めるのですか?」
「あのねぇ、昔の人は言ったでしょう!? “郷に入りては郷に従え!”と。。。」
「あらっ。。。デンマンさん。。。ズポンとシャツを脱いでしまって、いったい。。。いったい。。。?」
「小百合さん。。。いつまでも、ぼさっと突っ立ってないで、小百合さんもスカートとブラウスを脱いでおばさんパンツ姿になってくださいよ」
「デンマンさん!。。。気は確かですか!? 私は嫌ですわよう」
「どうして。。。?」
「だってぇ、また、旗を振っている添乗員さんの後からゾロゾロと山梨県の団体さんがやって来ますわよう。。。おばさんパンツ姿になって蚊帳の中でデンマンさんと昼寝しているところを見られたら、私は死んでも死に切れないですわよう」
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「小百合さん。。。ここまで来て山梨県の団体さんの事を心配しないでくださいよう。。。せっかく日本から離れてパリに来ているのだから。。。日本のことは、すっかり忘れましょうね。。。だから、早くおばさんパンツ姿になってね」
「デンマンさん!。。。マジで気は確かですか?」
「何度も言うように、僕はノー天気ではないのですよう。んもお~~」
「私はゆうべグッスリと眠れましたので、ここでお昼寝などヤ~ですわア」
「小百合さん。。。せっかくパリにやって来たのですよ。。。しかもブローニュの森ですよう」
「だから。。。?」
「だから、フランス映画『幸福(しあわせ)』の中にあるシーンのように、小百合さんもおばさんパンツ姿になって、僕の隣に横たわってね」
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「私はパリに、お昼寝に来たわけではないのですわ」
「小百合さん!。。。ここで、ガタガタ言っていると本当に山梨県の団体さんがやって来ますよう。んもお~~」
「私はお昼寝している時間があったらエッフェル塔に登りたいのですわ」
「やだなあああァ~。。。せっかくブローニュの森に居るのですよう。。。フランス映画「幸福(しあわせ)」の中にあるシーンのように昼寝しましょうね」
「ヤダ~~わ」
そう言う訳で、今日は馬鹿馬鹿しいメールになってしまいました。
でも、小百合さんは、今日も一日軽井沢タリアセン夫人になりきって楽しく愉快に過ごしてね。
じゃあねぇ。
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デンマンさん。。。結局、私は「ヤダ~~わ」と言ってデンマンさんの求めを拒絶してしまったのですか? うふふふふ。。。
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確かに、小百合さんはそう言ったのですよう。
やっぱり、山梨県の団体さんはブローニュの森にもやって来たのですか?
小百合さんが心配した通りでしたよう。 んもお~~。 やって来たのですよう!
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とにかく奇妙な団体さんで、ブローニュの森でコスプレやって、はしゃいでいたのですよう。
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それで、デンマンさんは結局、西洋蚊帳を吊る事を諦めてしまったのですか?
いや。。。僕は諦めませんでしたよう。 山梨県の団体さんが2時間ぐらいコスプレして遊んでから、着替えてエッフェル塔に向かって出発していったのですよう。 うへへへへへ。。。
。。。で、デンマンさんは諦めずに、またしつこく私を説得したのですか?
もちろんですよう。 せっかく、夢とロマンのブローニュの森にやって来たのですよう。 山梨県の団体さんだって、さんざコスプレして楽しんでいったのですよう。。。僕だけ、つまらなそうにしてトボトボとホテルに戻るなんて、考えただけでも馬鹿らしいですよ。 いったい何のためにブローニュの森にやって来たのか? 僕は、改めて考えさせられたのですよう。
それで。。。?
当然、僕は小百合さんにフランス映画「幸福(しあわせ)」のロマンチックな場面を語って聞かせたのですよう。
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。。。で、私は、デンマンさんのお話を聞いてロマンチックな気分にでもなったのですか?
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その通りですよう。 僕の熱意に小百合さんの心は動かされたのです。 「山形県の団体さんは、もうエッフェル塔に向かったようですし、野次馬のように覗きに来ることもないと思いますわ」 小百合さんは、そう言ったのですよう。
。。。で、私は、デンマンさんのおっしゃるように、おばさんパンツ姿になったのですか?
そうですよう。
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ブローニュの森で小百合さんのおばさんパンツ姿を見て、僕はまるでカバネルの『ヴィーナスの誕生』を見たときのような感動に浸ったのですよう。
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デンマンさんは過剰に反応しているのではありませんか?
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いや。。。僕は、やっぱりパリにやって来て正解だと思ったのですよう。
それで、デンマンさんは西洋蚊帳を吊ったのですか?
そうですよう。 ついに小百合さんもロマンチックな気分に浸って、その蚊帳の中に入って満ち足りたようにニッコリと微笑んだのですよう。
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僕は、もう感動しましたよう。
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デンマンさんの願望が夢になっただけのことですわ。
小百合さんは、感動しませんね。
夢の話に付き合わされて感動などできませんわ。 それで、その後どうなったのですか?
マジで、夢のような時間が過ぎてゆきました。 昼寝から覚めると、小百合さんも幸せそうに僕の目を見つめてニッコリと笑うのですよう。
それで。。。?
「小百合さん、今日でパリは最後だけれど、いっそのこと、これから二人でバンクーバーに行きませんか? 人生は一度きりですからね。 せっかくパリまでやって来たのだから、このまま日本へ戻るのはもったいないですよう。 大西洋を横断すればアメリカ大陸は、すぐそこです」 僕は、このように言ったのですよう。
デンマンさんは、そのような分かりきったことを言ったのですか?
そうです。。。でもねぇ、やっぱり思っていることは言ってみるべきですよう。。。小百合さんは、しばらく考えてから言ったものです。 「そうですわね。。。人生は一度だけですわ。 せっかくパリまでやってきたのですから、世界一周するつもりで西回りで日本へ帰るのも、悪くはありませんわ」 こう言ったのですよう。
マジで。。。?
やっぱり、ブローニュの森は人の気持ちを大きくして、ロマンに旅立たせるのですよう。
それで、私はパリからバンクーバーに向かう直行便に、デンマンさんとご一緒に乗ったのですか?
その通りですよう。 ところが、「好事魔多し!」と言うけれど、まさにその通りですよう。 いい事ばかりは続かないものです。
何が起こったのですか?
飛行機がハイジャックされたのですよう。
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パリを飛び立ってバンクーバーに向かうはずだったエアフランスのボーイング747は、飛び立つとしばらくしてから方向を南に下げてニューヨークに向かったのですよう。
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マジで。。。? それで、犯人はテロリストですか?
いや。。。それが機内にはテロリストは居なかった。
では、変質者の犯行ですか?
それが、犯人は機内に居ないのですよう。
でも。。。でも。。。ハイジャックされたのでしょう?
そうですよう。。。でもねぇ、アフガニスタンで行われているアメリカの戦争のように、ハイジャックはリモートコントロールで行われたのですよう。
アフガニスタンでアメリカがやっている戦争は、リモートコントロールで行われているのですか?
そうですよう。。。ロボット飛行機のパイロットは何千キロも離れたアメリカのワシントンからリモートコントロールで爆撃している。
マジで。。。?
本当の話です。 NHKの特集番組で見ましたよう。 僕が日本に帰省していた時に放映していました。
貧者の兵器とロボット兵器
~自爆将軍ハッカーニの戦争~
2010年10月17日(日)
午後9時00分~9時49分
NHK総合テレビ
9.11同時多発テロから9年、米軍とタリバンの泥沼の戦闘が続くアフガニスタン。
ここに歴史上初めての全く新しい戦争の姿が出現している。
ハイテク無人機など“ロボット兵器”を駆使する大国正規軍と、カラシニコフ銃や手製爆弾など旧式の“貧者の兵器”に頼る武装集団が、互いの姿の見えない戦場で対峙する究極の“非対称戦争”だ。
知られざるその実像をとらえた膨大な映像記録をNHKは入手した。
そこにたびたび登場するのがタリバン最強硬派の「ハッカーニネットワーク」だ。
自爆軍団として米軍に恐れられ、無人機攻撃の最大の標的にもなっている。
だが、ソビエトがアフガンに侵攻した80年代、首領のハッカーニは反ソ勢力として最も頼りになる米国の友人だった。
武器の供給から爆弾の製法まで、米国の支援で力を蓄え、皮肉にもそれが今、米軍を苦しめている。
今、米国はハッカーニらのゲリラ戦から自国兵士を守るため、ロボット兵器を次々と開発し、米本土から遠隔操作で攻撃を行う。
だが誤爆も相次ぎ、犠牲者周辺からタリバン予備軍を生み出す憎しみの連鎖も呼んでいる。
“貧者の兵器”対“ロボット兵器”。
その実態を描き、21世紀の新たな戦争の姿とその脅威に迫る。
SOURCE:
http://www.nhk.or.jp/special/onair/101017.html
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僕は10月19日の午前0時15分から午前1時5分までの再放送で見たのですよう。
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その事とハイジャックが関係あるのですか?
だから、ハイジャックも、リモートコントロールで行われるようになったのですよう。
まさかァ~?
とにかく、僕はフライトアテンダントのチーフに呼び出されて、ジャンボジェット機のコックピットに案内されたのですよ。
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ジャンボジェットの運転席ですか?
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僕がコックピットに案内されて入った時には、機長と副操縦士の上の二人は昏睡状態になっていた。 ナビゲーターと他のスタッフも昏睡状態で意識は全くない。
でも。。。でも。。。飛行機は飛んでいたのでしょう?
オートパイロットに設定されてブルックリンに向かって自動航行していたのですよう。
乗客はハイジャックされたことを知らされたのですか?
いや、まだ知らされていなかった。 知っているのは僕とフライトアテンダントのチーフだけ。。。「極秘です」と耳元でささやかれた。
でも。。。でも。。。、どうしてデンマンさんが呼び出されたのですか?
だから、僕もフライトアテンダントのチーフに、そう尋ねたのですよう。
そしたら。。。?
FBIの国際航空担当者からの直々の指名だ、とチーフは言う。
でも、なぜ。。?
「無線がつながっているから、直接、FBIの担当官に尋ねてくれ」 チーフはそう言って僕にヘッドセットを渡したのですよう。 以下は、FBI 担当官との交信です。
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デンマンかね?
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は。。。は。。。はい、そうですが。。。これはマジでハイジャックですか?
訓練でも、冗談でもない。 マジで新しい手口のハイジャックだよ。
しかし、何で僕が指名されなければならないのですか?
あのなァ~、搭乗者名簿を調べたら、現在、何らかの飛行機の免許を持っているのが5名居る。 オマエは、その中の一人と言う訳さ。 誰かがジャンボを操縦してブルックリン飛行場に着陸させなければならないんだよ。
つまり、僕がこのジャンボを操縦すると言う事ですか?
そうだよ。
お言葉ですが、僕の免許というのはセスナの免許ですよう。 こんなでっかい飛行機を僕が操縦できるはずがないじゃないですか! しかも、僕はこの5年間、セスナを操縦していないのですよう。
分かってる。。。でも、英語を20年以上もしゃばってぇ、セスナで宙返りをするような飛行技術を持っている奴は、他に居ないのだよう。 うししししし。。。
ん。。。? 宙返り。。。? どうして、そんな事まで知っているのですか?
オマエさんはネットで、その事を自慢してたじゃないか!?
(すぐ下のページへ続く)