ばあやと小百合さん(PART 1)
(saru200.gif)
サルのお辞儀
今日、お昼に和菓子を買いに行ったら、和菓子屋さんのおばあちゃんがかぼちゃをくれた。
「あら、こんなにたくさんいただいてよろしいのかしら」
「みんな、差し上げますわ。 どうせ畑に置いとってもサルに食われるだけやから」
「まあ、サルの害を防ぐ方法とかありませんの?」
「それがな~、番犬飼(こ)うとるけども、これが全然あきませんのや。 鎖でつないどりますやろ。 サルは賢いで、ちゃ~んと鎖の長さ測って避けよりますのや」
「まあ、賢いんですのね」
「今朝もな、ちょうどサルがかぼちゃを取りよるところにばったりでくわしましたんや」
「それで、追い払いましたの?」
「それがな、このおサルさん、両手に1個ずつかぼちゃをこんなふうに持ってな、私のほう見て、お辞儀しますんや。 ありがとう、すんません、いただきます、言うてな。 たぶん、家に帰ったら子どもがいますんやろ。 せやから、私もつられてお辞儀してしもうて、しゃ~ないな~思うて、そのかぼちゃは差し上げることにしましたんや」
46ページ 『嘘みたいな本当の話』
選者: 内田樹・高橋源一郎
2011年8月10日 第3刷発行
発行所: 株式会社イースト・プレス
デンマンさん!。。。どうしておサルさんのお話など持ち出してきたのですか?
なんとなく笑えるでしょう。。。微笑(ほほえ)ましいと言うか。。。ちょっとばかり心が温まる話ではありませんか。
上のおサルさんのお話がタイトルと関係あるのですか?
もちろんですよ。 無関係だったらサルと和菓子屋さんのおばあちゃんの話を持ち出しませんよう。
でも、私のバア(祖母)は和菓子屋さんをしていませんでしたわ。
分かっていますよ。。。分かっています。 上の話を本の中に見つけた時、なぜか小百合さんのおばあさんのことが思い出されたのですよ。
でも、デンマンさんは私のバアに会ったことがないでしょう?
もちろんありません。 でも、小百合さんは折に触れておばあさんの事を書いていたのですよ。 たとえば次のように。。。
[541] Re:
小百合さん、元気かいな?
肺がんじゃないと思うけれど、
心配してるよ。
心境の変化かな?
連絡待ってるよ。
Name: sayuri E-MAIL
Date: 2009/01/16 14:44
(バンクーバー時間: 1月15日 午後9時44分)
はい すいません
昨日も忙しく 今朝もパソコン開けられなかった。
風邪も治って、お酒を10日もやめてます
2008年の秋は一番太っていた。
でも 少しずつ体重も減ってきて
あと 3キロぐらい 減らす予定です。
父がいなくなってから ずいぶん飲んでましたから
ごめんね これから 市役所いってきます。
あとーで ビーバーランド 開きますから、
でも明日は子供がいるし
来週かな?
『ロマンとダイエット』より
(2009年1月19日)
小百合さんが元気そうなので安心しましたよう!
バア(おばあさん)に「でがんす」だと呼ばれていた小百合さんをお父さんが何かと心配していた気持ちが分かりますう。
【デンマン注】:
「でがんす」と言うのは、家にじっとしていないで、しょっちゅう出かける人のこと。
小百合さんのおばあさんが、そう言っていたらしい。
栃木県の方言かも?
いい機会だからネットで調べてみたら、庄内地方と広島県にこの方言がありました。
東広島市名物には「がんす饅頭」と言うのがあるらしい。
その特徴は、まんじゅうの皮に、たっぷりと入った蜂蜜。
そのおかげで、冷めてもまんじゅうの皮が柔らかくて、とても美味しいらしい。
この「がんす」とは、広島の古い方言の一つで、「~です」という意味。
使い方としては、
おはようがんす。→おはようございます。
そうでがんす。→そうです。
ありがとがんした。→ありがとうございました。
おしんどがんしょう。→お疲れでしょう。
僕は、落語でこの言葉を覚えた。
題目は忘れたけれど、
太鼓持ち(幇間)がこの言葉を頻繁に使うのでした。
しかし、「でがんす」が「しょっちゅう出かける人」と言う意味で使われている、と言うのはネットでは出てこない。
小百合さんは行動派だからね。
とにかく車を乗り回してどこへでも出かけて行く。
外国まで行くのだから、
お父さんも何かと心配したのでしょうね。
男親って女親よりも心配性なのですよね。
ウチのオヤジもそうでした。
お袋は、“なるようになる”と言うところがあって、
ひとたび送り出すと、あまり心配しなかった。
それでも、長男の僕が下宿生活するようになって
初めて家から出て行ったときには、
急に寂しくなって
押入れに頭を突っ込んで、しばらく泣いていたと言ってましたよう。
うしししし。。。
母親には、巣立つ息子を見送る時の、そのような寂しさがあるのでしょうか?
小百合さんも長男が巣立つ時には、押入れに頭を突っ込んで泣くのでしょうか?
ちょっと想像できないけれど、
小百合さんは意外に母性本能が強いから、泣くでしょう!
『ロマンとダイエット』より
(2009年1月19日)
デンマンさんが生まれ育った埼玉県の行田では「でがんす」という言葉を使わないのですか?
一度も聞いたことがありませんよ。 当然、僕も使ったことがない。 それにテレビでも映画でも「でがんす」というのを聞いたことがない。
マジで。。。?
だから上のようにネットで調べてみたのだけれど、ネットでも「でがんす」を「しょっちゅう出かける人」と言う意味で使っているページは一つも出てこなかったのですよ。
栃木県の田舎の方言なのかしら?
たぶんね。
でも、「でがんす」と上のおサルさんのお話と関係あるのですか?
いや。。。直接関係あるわけじゃないけれど、小百合さんのおばあさんの使った「でがんす」という言葉に上のサルの話と同じような微笑ましさを感じたのですよ。
それにしてもよく覚えていますわね?
あのねぇ~、「でがんす」だけだったら僕も忘れていたかもしれないけれど、小百合さんのおばあさんは面白い言葉をこれまでにもたくさん使っているのですよ。
「でがんす」以外にも面白いと思えるような言葉をバアが言ってました?
言ってましたよ。 「ごくねつ」という言葉も僕は聞いたことがなかったし、もちろん使ったこともなかった。
私が舶来グルメだなんて そんな! そんな…?
本当のグルメは飲茶は行きませんよ
ふかひれ や あわび 北京ダックを食べにいくのです。
日本で食べる北京ダックは高いらしいよね?
バンクーバーなら一人分4ドルか5ドルですよう。
3人で食べて15ドルぐらいでしたよう。
ロブソンストリートの“漢(ハン)”が安くてうまかった。
小百合さんがバンクーバーにやって来たら、
一緒に食べに行こうね。
そう言えば、しばらく北京ダックを食べてなかった。
なんだか、急に北京ダックが食べたくなってきましたよう。
うしししし。。。
バーガーキングなんていわず、フォアグラを分厚く
切ったのを ソテーして食べてるんですよ。
うん、うん、うん。。。
ジューンさんが仔牛とフォアグラのローストをリクエストしたけれど、
これって、グルメの食べ物?
うしししし。。。
■『ジューンさんの仔牛とフォアグラ・エピソード』
行田のゼリーフライが まずくて食べられなかったとしても きっと 時々 買いにいくでしょう。
ただ その時を忘れないよう、思い出を買いにいくのです。
ゼリーフライが苦くて 口に合わなかったとしても
それは そうゆう物体として体に入れるでしょう。
食べるとか味わう とか でなくて。
“思い出を食べるグルメ”の小百合さんですからね。。。
分かります。。。分かりますよう。。。
“思い出の大仏”を食べましょうね。
朝ごはん はおいしいと思わず
ねむいのに無理に食べるというイメージで
学生の時からダメです。
たぶん 小学校の時も やっとでしたよ
ばー(おばあちゃん) が困って、パンにしてくれて
どうにか 1枚 たべて、 絶対味噌汁は飲みません。
熱くて 寝起きになんて 飲めません。
ばー は食べないと 体がもたないよ。ご飯を食べると
ごくねつ が出て 体が ぽかぽか 温まるんだよ。
と 私に朝ご飯を食べさせる その仕事は大変
だったと いま 思いますが、
そのうち 中学 高校と 絶対食べませんでした。
小百合さんは育てるのが難しい女の子だったのだろうねぇ~
小百合さんからは、おっとりとした優しいイメージを僕は感じることが多いのだけれど、かつて、小百合さん自ら、“気の強いところがある”と意外な事を言ったので、朝食がダメ、と言うのもその表れなのかな?
そう思っていますよう。
僕の知らない気の強い面を持ってるのでしょうね?
“そんなカワイイわけないでしょう!”
小百合さんがそう書いていたけれど、
小百合さん自ら、“気の強いところがある”と意外な事を言うほどだから、自分の意識の中では“気の強い女”としての自負があるのかもね?
可愛い女よりは、むしろ気の強い女だと、小百合さんはそんな風に思っているのかもしれないね。
『麻布散歩(2011年3月13日)』より
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