めれちゃんホイ(PART 1)
(dog202.jpg)
デンマンさん。。。、どういうわけで妙な掛け声などかけはったん?
実は次の本を読んでいたのやがなァ。
中学生になって間もない日の放課後、教室から出ると、明るい西日に満たされた廊下にギターの音色が響いていた。
(中略)
「こんにちは」
私が挨拶すると、彼もギターを抱えたまま頭をぺこりとさげ、「こんにちは」と言った。
これが、星進くんとの最初の会話だった。
「星くんでしょう?」
「うん。 斉藤さん、だよね?」
「うん」
「いつから見てたの」
「さっきから。 今の曲なんて曲?」
「パッヘルベルのカノン」
「いい曲だね」
「もっと聴きたい?」
「うん」
星くんは張り切って、ギターをかまえ直す。
きちんと分けた髪、やさしげな切れ長の目、通った鼻筋。
ふだんはおっとりした顔が、うつむくと端整に見える。
細い指、まるく削られた爪が弦に触れると、指先から音楽が流れ出した。
(デンマン注: イラストはデンマン・ライブラリーより
読み易くするために改行を加えています。)
21-22ページ 『犬と私の10の約束』
著者: 川口 晴
2008年2月25日 第11刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋
。。。で、そのギターの曲というのはどないな曲やのォ~?
じゃあ、めれちゃんのために、わてが弾くさかいにジックリと聴いてなァ。
パッヘルベルのカノン(ソロ・ギター)
<iframe width="500" height="350" src="http://www.youtube.com/embed/e2JZeLca6i0" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
あんさん!。。。いい加減なことをぬかしたらアッカ~ン! これはあんさんが弾いてるのではあらへん!
どうして、わてが弾いてるのではないと判るねん?
あんさんは、こないに若いはずないやん。
さよかァ~。。。じゃあ、口直しにフル・オーケストラの曲を聴いたらええやん。
Pachelbel's Canon in D (full orchestra)
<iframe width="500" height="350" src="http://www.youtube.com/embed/PkSp8wc8lKw" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
聴いてみるとなかなかええ曲やんかァ。。。で、この曲が「めれちゃんホイ」と、どないな関係やねん?
実は、上の話には続きがあるねん。
そのあと一緒に帰りながら、星くんの両親がギタリストで、家はギター教室を経営していることを知った。
星くん自身は、有名なギタリストについて英才教育を受けているらしい。
(中略)
「星くん、歌は歌わないの?」
「僕のはクラシックギターだからね」
...
「今度歌ってよ」
「ダメだよ。 歌なんて歌ったらギターに集中できなくなるし、それに禁止されているからね」
「誰に?」
「おとうさんとおかあさん」
「ほんと星くんって素直だね~。 歌うなって言われたら歌わないんだ」
へそまがりの私とはずいぶん違う。
こんなに正直だったら「あっち向いてホイ」は弱いだろうなと思って、ふと、
「あっち向いて、ホイ!」と、星くんの顔の前で上を指さした。
星くんはみごとに引っかかり、私の指と一緒に、雲が茜(あかね)色に輝く空を見た。
(デンマン注: 写真はデンマン・ライブラリーより
読み易くするために改行を加えています。)
23-24ページ 『犬と私の10の約束』
著者: 川口 晴
2008年2月25日 第11刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋
「あっち向いてホイ」から「めれちゃんホイ」というタイトルにしやはったん?
そういうこっちゃ。
そやけど、わたしとは全く関係あらへんでぇ~。。。
上のエピソードの中の中学生の女の子は「斉藤あかり」という名前なのやァ。 二人は大きくなると結婚するのやけど、星くんは実に素直ないい少年なのやァ。 それに対して、あかりちゃんは自分でも言っているように「へそまがり」。。。わてはこの物語を読みながら、めれちゃんがおかあはんとそりが合わずに、しばしば喧嘩したという話を聞いたので思い出したのやがな。
あかりちゃんも、おかあはんとそりが合わへんかったん?
いや。。。そないなことはあらへん。 反抗期を迎えて、そりが合わなくなる前に、あかりちゃんが12歳の頃、おかあはんは膵臓癌で亡くなってしまうねん。
ごめんね、あかり。
おかあさんはあかりを置いて先に逝きます。
ソックスが生きているうちはソックスが私のかわり。
あかりを見守ってくれるよ。
そして、ソックスも、いつかはあかりより先に逝くでしょう。
そのとき、私はいよいよ念願の風になります。
いつかあかりは私を風みたいだってほめてくれたよね。
あれ、かなりうれしかった。
ちょっといたずらな風が吹いたら、私がそばにいると思ってください。
それからもうひとつ。
『犬との10の約束』は覚えてくれてる?
あれにはつづきがあります。
それは約束ではなくて、『虹の橋』という詩です。
ソックスが先に逝ってしまったあとで読んでみてね。
(dog203.jpg)
『虹の橋』
動物は、死んだあとに虹の橋と呼ばれる場所で暮らします。
そこは快適で満ち足りているのですが、ひとつだけ足りないものがあります。
それは特別な誰か、残してきてしまった誰かがそこにはいないこと。
それがさびしいのです。
草原で遊び回っている動物たちのうち一匹が突然遊ぶのをやめ、遠くに目をやります。
一心に見つめるその瞳は輝き、からだはかすかに震えはじめます。
その子は突然草原を飛ぶように走り出します。
あなたを見つけたのです。
あなたとあなたの特別な友だちは再会のよろこびに固く抱き合います。
そして、あなたを心のそこから信じているその友だちの瞳を覗き込みます。
あなたの人生から長い間失われていたけれど、
心からは一日も離れたことのなかったその瞳を。
じゃあ、元気でね。 芙美子 母より
(写真はデンマン・ライプラリーより)
200-201ページ 『犬と私の10の約束』
著者: 川口 晴
2008年2月25日 第11刷発行
発行所: 株式会社 文藝春秋
子を持つ母親とすれば、12歳の娘を置いて先に逝くことを考えて本当に身を切られるようにつらかったと思うでぇ~。。。
そうやろねぇ~。。。
めれちゃんのおかあはんは今でも生きてるのやでぇ~。。。
そやから、どうやとあんさんは言わはるのォ~?
いい加減に仲直りしたらどうなのやァ。
あんさんには関係ないことやんかァ。 わたしと母を仲直りさせるために、わざわざこの話を持ち出してきやはったん?
ちゃうねん。
いったい、あんさんは何が言いたいねん?
あかりちゃんと星くんの淡い心の交流を読みながら、わてはめれちゃんとの甘い心の交流を思い出したのやがなァ~。
心から愛を込めて
浪速の空に咲く
大輪の火の花
こんなにあなたを想ってるのに
待ちきれないこの気持ちを
あなたは分かってくれるだろうか
焦がれる心が痛い・・・
でも、わたしには何もできない
わたしの言葉も
わたしのしぐさも
ありのままでいいと
あなたは教えてくれた
夜は日毎に長く
眠れない時間の
思いは過去をまさぐるだけ
幸せであるはずなのに
かわかない涙
しあわせと呼べる時間は
今どこをさまよっているの
終わることなく愛されている
そう思いたい。
でも、思えない。
すべての記憶
あなたの笑顔
あのよろこび
あの感動の涙
楽しくてしあわせだった
天神祭の日々
ずっとあなたに愛されている
それはけっして終わりなど来ない
そう思いたい
でも、思えない。
ああ、この熱い思い
このやるせない気持ち
あなたに分かってほしい
by レンゲ
本宮の夜にて
『あんさんに会いたいわ』より
(2011年10月31日)
あんさん。。。これはレンゲさんが書いたものですやん。
めれちゃんも同じようなことを書いていたのやないかいなァ。
そないなことはあらへん。
(すぐ下のページへ続く)