諸田玲子「炎天の雪」上下巻
厚いので、一瞬悩みましたが、でも大好きな諸田玲子さんの本だし、えいっ って思って借りました。
明日が返却期限でしたが、念のため延長しておきました。結局今日読み終えたけど。
涙をたくさん流して読み終えたので、少し頭がボーっとしてます。とにかく涙がとまらない。
悲しい涙と哀しい涙、嬉しい涙と、胸が温まる涙、感動の涙。
久々に本の世界にすっかり入りこむことができました
舞台は江戸中期の金沢城下。登場人物がとにかく多いです。
駆け落ちして町で暮らす、武家の娘、
多美が主人公。その夫で、伯父が罪を犯し、幼い息子とともに殺され、
祖父と父が連座して流刑となり、能登で生まれ育った
与左衛門。
加賀前田家の跡目相続を巡る争いで、無実なのに処罰された家老
大槻伝蔵。
そこに連座した大槻の息子
猪三郎とその母
たみ。
大槻とたみの文を仲介した罪で長く牢に入り、出牢してたみを探す
佐七。
大槻事件で失脚した、六代藩主の側室真如院とその周辺の不審な死を巡る因縁と、大槻の無念を晴らそうとする一味。
真如院の産んだ息子達を心配する、六代藩主の母
預玄院とその懐刀である
小笠原紋次郎。
現藩主
重教とその母
実成院。
様々な人々の関わりで大きな物語が展開していきます。
ポイントは、
・佐七のたみ探しに関わっていく多美と与左衛門夫婦の、夫の心の弱さと転落ぶり。
・連座制の不条理。
・大槻事件絡みで奮闘する実成院の心の変化と小笠原との
恋。
・様々な親子の間で描かれる
親子愛。または
家族愛。
・そして佐七と多美の心が結ばれて
いく過程。
実成院と小笠原の恋の様子は、読んでいてじーん、と来ます。そんな何度も顔を合わせたわけではない二人の
運命的な恋は、悲劇でありながら爽やか。
多美と与左衛門夫婦は武家娘と細工職人という許されない関係で始まり、とうとう駆け落ちまでして子供をもうけ
とても幸せに暮らしていたのに、事件に関わって変わっていってしまう与左衛門からどんどん気持ちが離れていく多美の心が
とーーっても自分とかぶって
「わかるわかる」って思いました。恋はいつか覚めるもの?きちんとした信頼関係がないと夫婦って難しいですね。
それにしても本当に自分勝手でメンドくさい男だわ与左衛門って。自分を正当化するいいわけを頭の中でこねくり回して、
妻子よりも自分が大好きなんでしょ、結局。背後関係がややこしいから、いい人が悩んで苦しんでこうなった、みたいな展開だけど、それにしても自分勝手。
引き換え佐七は自分よりも信じた信念や大切な人達を大事にする、己の事は後回しな、義に生きるいい男。
当然佐七がいいわよと思うけど、駆け落ちまでして一緒になった与左衛門を振り切れずぐすぐすしていたために後半、事件は大変な流れになっていきます。さっさと離縁して実家に戻っていたら、巻き込まれずに済んだのに。
最後は納得のいく終わり方で、大満足です
多美が羨ましいな
満足度100