我が家には、出刃包丁、小さめの出刃包丁、更に小さい出刃風の包丁、菜っ切り用の和包丁、パン切り包丁2本、ステンレスの文化包丁、そして、ドイツのグレステンという会社の包丁の計8本の包丁がある。なぜ、そんなに多いのかは別として、今日、ここで話題にしたいのは、グレルテンの包丁と菜っきり用の和包丁の違いについて少し考えて見たい。
グレステンの包丁、確かに良く切れる。ただし、素人には研ぎが難しいというか研ぐことができないという代物なのだ。日本では、刃物を荒砥、中砥、仕上砥の三種類の砥石を使って包丁を研ぎ上げる。包丁の場合、中砥、仕上砥くらいで間に合うのが普通だ。和病長の特徴は、柔らかい鉄と鋼を張り合わせて包丁を作る。だから、比較的研ぎ安く、少し器用な人ならば難なく研ぐことができる。ところが、グレステンの包丁は非常に固いステンレスを使っているため、なかなか研ぐことができない。ちなみに、グレステンでは2か月に1回くらいの割合で、デパートなどを回って包丁を研ぐサービスを行っている。はがきが来ると、包丁を持ってデパートまで出かけて行って研ぎを依頼し、出来上がったら取りに行く必要がある。もともと包丁を研ぐのは好きな方なので、包丁研ぎに来ていた職人に聞いてみたところ、8000番という非常に細かい砥石を使うという。そして、その砥石が1本で8000円という。そんな高価な砥石を買ったとして、綺麗に遂げるという自信もあまりなく、自分で研ぐのは断念した。ステンレスの強度を極めつくしたという点では確かにドイツの凄さが伝わってくる。日本とは対照的な職人技の極みの一端をあらわしているように思う。
日本の刃物の歴史は、刀の製造方法に非常に深く関係している。鋼を柔らかい鉄で包んで、刀を作り上げる。鋼の質については非常に硬い。しかし、硬いだけでは、衝撃に弱く、折れてしまう。その欠点を柔らかい鉄で包むということで克服しているように思う。その加工技術は農家が使う鍬や鎌といったものにまで応用されている。鋼と柔らかい鉄、刃物にして研いで行くと、鋼と鉄とが文様を作り上げ、刃文と呼び、その刃文の美しさを追及するまでに至っている。刀は良く切れれば良いというのは西洋の合理的な考えだが、日本人は時として細かいところにこだわり、それを極めつくすのが日本人の特徴なのかも知れない。最近では、携帯電話の外見の美しさを追及し、見事な形状を作り上げているのが端的な例だと思う。外の国の人は、そんなところまで拘りませんよ!携帯電話は確実につながり、通話できれば、それで満足というのが多いのではないでしょうか?
同様のことは、私たちが身近に接している様々なことについても言えると思う。ラーメンについて、百人百様の好みがあり、そして、新たなラーメンが生まれてくる。流行っている店も、明日には、見向きもされなくなってしまう。常に新鮮味を求めて、好みは変化していく。その好奇心の強さというのも日本人の特徴なのかも知れない。その好奇心の強さが企業を動かし、企業は新しい発想で、その好奇心を満足させようとする。その循環が美味く行っているうちは進歩していく。例え、外国人から『ガラパゴス」と言われても、これは止まることはないだろう!