ピリカヌプリ計画、悪天中止。
下ホロカメットク山 (1668m)
YAMAP山友の記録に触発されて思い立つ・・・
■ 山 行 日 2020年4月16日(木)~17日(金) 山行は日帰り
■ ル ー ト シートカチ第6支線林道~北東斜面ルート 往復
■ メ ン バ ー 夫婦登山 №16
■ 登 山 形 態 山スキー&アイゼン
■ 地 形 図 1/25000地形図 「十勝岳」「チカベツ山」
■ 三角点・点名 二等三角点 点名「幌神女徳 ホロカメットク」
■ コースタイム 登り 8時間25分 下り 4時間15分
<登り>
04:15 P出発(北電水力発電所前)
05:00 支十勝橋
05:35~40 水源かん養保安林出合
06:00 奥十勝橋
06:30~35 休憩
06:40 シートカチ第5支線林道出合
07:35~50 シートカチ第6支線林道出合 休憩
08:35 第6支線林道C890付近 (林道から離脱) 林道10.7㎞
10:10 C1170付近 スキーデポ(エバ)
11:05 C1310付近 ザックデポ(エバ) アイゼン装着
スキーデポ(チーヤン) アイゼン装着
12:40 下ホロカメットク山頂上
<下り>
13:00 下山開始
13:30 C1310 ザックデポ地点 チーヤンスキーモード
13:50~14:00 C1170 スキーデポ地点 エバもスキーモード
14:30 C890付近第6支線林道出合
14:45 第6支線林道出口
15:25 第5支線林道出合
15:45 奥十勝橋
16:00 水源かん養保安林出合
16:30 支十勝橋
16:35 レイサクベツ橋
17:15 P登山口
GPSログを元に地形図に転写したルート図です・・・
★ ピリカヌプリ、愛おしく・・・
今年のピリカヌプリ計画は、10年越し6度目の挑戦だった。その10年をふと振り返
りすっかり遠くなってしまったピリカに思いを馳せる。
悪天時の計画、登行時のハプニング、自分の失態・・過去5回の挑戦にそれぞれの思い
出は忘れない。ここまで来るともう登れないのは当たり前となり、毎年の恒例行事とし
て計画を組むだけのように思える・・・苦笑
あの時のあの姿が愛おしく、快晴無風で泊まったテントの心地良さが今も頭から離れな
い。あのイメージでまたいつかピリカを目指し、いつかこの足でピークに立ちたい・・
と今年も計画を立てたが、またまた予定通りの天候は望めず悪天の予報のままではとて
も決行するモチベーションにはならないピリカだった。
ピリカへの思いはそのままに、何が何でも・・と言う気持ちは収まって来た。
これからは、天気予報と相談し3日間快晴の日を待って登れる日を楽しみにしようと、
焦らずボチボチと実行するピリカ計画にしたいと思う。もう若くないから加齢は気にな
るが、焦っても仕方ないとこれからのチャンスに期待するだけである。
シートカチ第6支線林道から望む下ホロカメットク山を背に・・・
★ 真似だけど真似じゃない・・・
YAMAPで互いにフォローしている「みなみんみん」さんの山行記録にはいつも目を見張
るものがある。そのスタイルはある意味私たちと同じで、相方さんと二人で目指す北海
道の1000m超峰全山である。彼女もまた私たちの記録を見て臨む事もあり、今は互いに
刺激し合ってマイナーな未踏を目指す間柄・・と言っても良いかも知れない。
そんな彼女が4/12に相方さんと登った「下ホロカメットク山」に触発された。
どこから見てもスッキリとした端正な円錐形のお山で標高は1668m。十勝連峰の一座で
はあるが、連峰から一歩離れた独立峰で夏道は無い。目指すには長いアプローチプラス
標高差 400m以上の急登を登らなくてはならない。通常ならテントを担いで一泊の山行
がベストなのだが、早朝出発のone day山行にもひかれた。
彼女らの僅か5日後だから、真似をして行くだけと言われても間違いではない。しかし、
同じように登れるかは時々の天候や雪質によっても変わるし、そもそも登っている人間
が違うのだから、ただの真似じゃない。まぁ~いずれにせよ登るのは、私たちだ。
★ 前泊・・・
トムラウシ温泉の約10㎞手前にある「曙橋」を渡ってすぐ左手の林道に入る。
この林道は、以前トノカリシベツ山に登る時2度利用していたので迷う事は無いが、今
回はその分岐(トノカリ林道)から更に直進し車止めで車中泊した。
車止めは、トノカリ林道出合から僅か1㎞ほど進んだ北電水力発電所のあるところで通
行止めの標識が置かれていた。林道出合から約6㎞地点である。この先の林道が大きく
崩壊したためであるが、下ホロカメットク山へのアプローチが遠くになった事は間違い
ない。それは、10㎞強の林道アプローチと約4㎞の急登アタック・・・往復で28㎞
の日帰り山行は簡単ではない。少なくても登山口に泊まって翌早朝出発は必須の条件だ
し、状況によっては途中敗退もあり得る山行を覚悟していた。
登山口に着いたのは18時だった。
途中、車の異音に違和感を覚えたチーヤンがどうしてもこのままでは林道を走りたくな
いと言い日高町の修理工場に立ち寄る事にした。異音はブレーキローターの錆が原因だ
ったが、ここに辿り着くまで2時間半を要しすっかり遅くなってしまった。でもチーヤ
ンの不安は解消し、安堵の登山口になって着いた18時である。
すぐに安着となるも明日の早朝出発に備えて20時過ぎには就寝する事にした。
外は明日の好天を約束する満点の星だった・・・。
★ アプローチを遠くした林道崩壊地・・・
まだ空に星が輝く午前4時過ぎに出発した。
スキーを手に持ったまま5分程歩くと林道崩壊地のロープがあり大きく高巻く。
高巻きルートにはしっかりフィックスロープが張られていて安心だが、スキーを持った
ままのスキー靴では大変だった。
その後、雪が出て来てからスキーを履いたが一度もスキーを外す事なく山行が続けられ
た (一部無雪地もあったが、スキーを履いたまま歩いた)
下りで撮った写真・・・左側の斜面を高巻く
往路ではカチカチの林道でトレースも付かないほど雪面が固かった・・
★ ありがたきトレース痕・・・
5日前に登ったみなみんみんさん一行のトレースと思われるスキー痕が辛うじて残って
いた。同時にほぼ林道の9割に渡ってオヤジのトレースも残されいてルンルンでは歩け
ず、時々笛を吹きながらの登行だった。
携帯のGPS設定が出来ず、地形図とコンパスでの登行になりトレースは救いの神とな
り助けられた。特にシートカチ第6支線林道から離れて下ホロカメットク山に向かうル
ートでは、方向を定めつつも少し複雑な地形も混ざりトレースを辿る事で勇気を貰った
と言っても過言では無かった。
GPSに地形図の表示は無かったが、ログの表示と距離、標高が分かったので手持ちの
地形図と併用してルートを辿った。実に第6支線林道のC890まで優に10㎞を越え
ていて、ここまで4時間20分を要していた。ホント長いアプローチだった。
それでも予報通りの雲一つない快晴に恵まれ、気温も次第に上がってまったく寒くは無
かった。途中からアウターを脱いだのは今シーズン初めてである。
何ヵ所か林道を塞ぐ倒木もあったが、スキーを外す事なくクリア出来た。
第5支線林道と第6支線林道の中間から下ホロカメットク山が見え始めるもまだ遠い・・・
上と同じ場所にて・・・自撮りです
第6支線林道の手前にあるヘアピンカーブの橋が一部崩壊していて辛うじて雪が繋がって渡る事が出来た・・
最初の目的地だった第6支線林道出合に着いた・・・
三脚を利用した自撮り・・・第6支線林道にて
だんだん近くなって来た下ホロカメットク山をズームする
林道から離れ下ホロカメットク山に方向を変え樹林帯の中へ・・・
★ 苦難の始まり・・・
第6支線林道に入ってから少しずつ雪面の状態が変わって来た。陽も高くなり気温も上
がっている事は歩いていても実感出来るほどだ。雪面の表面だけが溶け出しスキーの滑
りが良くなって来たが、シールが湿って重くなっていくのも感じていた。
支線林道から離れて進路は、下ホロカメットク山へ向かう。
みなみんみんさんのトレースは、上り痕より下り痕の方が明瞭になるも私たちにとって
道案内に変わりは無く助けて貰っている。林道から山に変わったのでトレースがあって
も頻繁にピンテを付けて行く。
斜度の増した登りになると急に体が重く感じペースが落ち始めたのは私だ。
同時に木陰になるとまだ乾いている雪がシールに着き始め団子化していった。最初の内
は反動を付けて雪を蹴散らして済んだが、C1170付近で限界を感じた。先を行くチーヤ
ンを呼び止め、ここにスキーをデポしてツボ足で登る事を伝える・・。「まだこんなと
ころで・・・」というチーヤンの心配は的中。ツボ足にも靴底の団子化でさっぱり歩が
進まない。チーヤンは順調に登って行き離れ始めた。
5歩登っては立ち止り息を整える繰り返しの有り様。
ザックも重いと感じ始める情けなさ。11時を過ぎてまだC1300付近でジタバタしてい
る。シールワックスを持って来なかった事は後の祭りと後悔するも次第に体調も悪くな
って来た。このままでは、登頂も危うい状況になって来た。チーヤンも心配して止める
なら止めても良いと言うが、甘んじて上で待つチーヤンを呼び止めた時もあった。
余りにも遅い私を案じて、C1310付近でチーヤンもスキーをデポし、アイゼンを付けて
登ると言ってくれた。登りのタイムアウトは12:00と決めていたが、取り敢えずこ
の時間まで登ろうと話し合い、私はザックもデポして空身で登りを再開した。
C1350付近から森林限界となり低いハイ松の一部が顔を出す程度になって来た。同時に
斜度は増して急斜面となり雪面も硬くなって登り易いが、見上げる頂上はまだ見えない。
空身になって足の負担が無くなるとアイゼンの歯が小気味よく利いて登るペースが速く
なって来た。直登するとどんどん高度を稼ぎタイムアウトの12:00には1500m
を越えていた。
あと170m・・・。
下りの時間を考えても登行限界は13時と修正し、近くなった頂上を目指す事にした。
そして、12:40ついに頂上に立った!
チーヤンも私も泣き崩れる様に抱き合い、苦しかった長い登りを終えた感動に慕った。
もし途中でタイムアウトとなり、敗退となれば次の下ホロカメットク山はもう無いかも
と思ったのは夫婦共通の思いだった。「苦しくも一歩ずつ登れば必ずゴールはある」。
そして「ダメならまた来ればいっしょ・・」って誰かが言ったセリフだが、もうそんな
事を軽々しく言える歳では無くなったと改めて気が付いた時でもあった。
C1350付近の森林限界を超えたあたりで・・・
境山を右手に見ながら急斜面の下ホロカメットク山を登るチーヤン・・・
★ 涙、涙、なみだの登頂・・・
「もう無理かも・・・」と何度か登頂を諦め掛けた自分を恥じた。
でも、少しだけ時間に余裕があったのと妻の励ましは大きな力になった・・。
最後に見上げた小さな雪庇の上が頂上だと確信した時からもう胸がいっぱいになって来
た。そして、雪庇を越えた上に立った時思わず「やったー!」と叫んでしまった。すぐ
後から続くチーヤンは涙を流し崩れる様に座り込んだ。そして、感動の瞬間を抱き合っ
て喜び、頑張った自分たちを褒め合った時だ。
登り8時間25分・・・
これまでの登行時間では最長かも知れない。
昨年2月に登った十勝・旭岳(1335m)登頂の時はトータルで11時間山行だった。
あの時のコースタイムは非公開でアップしたほど情けない山行だったが、何度も敗退を
意識しながらも「もうリベンジはごめんだ!」と自分に喝を入れて登り続けた結果の登
頂だった。旭岳も9㎞に及ぶ林道歩きでしかもラッセルだったから今回の10㎞強より
きつかったと思うが、途中で諦めてしまえばもう一度同じ山行をすると言う事でもあり
簡単には中止出来ない夫婦の事情があると理解して欲しい。
登るまでは辛いが登ってしまえば、なんて晴れ晴れしいのか・・・
苦しい山行も喜びに変わり、最後は「楽しかったね!」って言えるから山は不思議だ。
いつも楽しい登山ばかりではないかも知れない。今回のように諦め掛ける山行もまた
あるかも知れない。そして途中敗退も・・・。
それでも目標があるから登り続けるモチベーションがある限りこれからも夫婦登山が
続けられたら言う事は無い。
以下、頂上からの景色を楽しんで欲しい・・・。
2020年4月17日(金) 下ホロカメットク山(1668m) 初登頂・・・
境山と富良野岳を背に 下ホロカメットク山頂上にて
★ 眺望・・・
★ 下り・・・
僅か20分の滞在で下山する事になった・・。
13:00下山開始。
でも、登って来た時の気持ちとは真逆に晴れ晴れしかった。体調の悪さもどこ吹く風?
アイゼンの歯がしっかり雪をとらえて急斜面もどんどん高度を下げて行った。
登りで1時間半以上掛かったザックデポ地点のC1310には30分で降りてしまい、スキ
ーモードになってから林道に出合うまで1時間だった。
スキーは最強とこれまで何度も実感しつつ時間を要した山行になればなるほど、下りの
速さが強く実感し、「ありがたい・・」と思うばかりだ。
林道に降りた時から「これで無事帰れる・・・」と実感し安堵の平常心でホッとする瞬
間でもあった。林道のすべてが自動運転と言う訳ではないがスキーを滑らせて進む距離
は登りの比ではない。
そして、17:15登山口に到着。
まだ明るい時の下山に夫婦固い握手で山行を終えた。
今シーズン6座目となった未踏1000m超峰だったが、これも忘れられない一座とし
て記憶に残ると思う。この登頂で未踏1000m超峰は残り119座となった。
帰路、日高町の沙流川温泉「ひだか高原荘」で汗を流し、21:35無事帰宅した。
新型コロナウイルス感染拡大の非常事態宣言が発令されたためか利用者は異常に少なく
宿泊者は一人もいなかった。早く終息する事だけを願い、これからも接触感染に注意す
るのは私たちも同じである。
下ホロカメットク山 (1668m)
YAMAP山友の記録に触発されて思い立つ・・・
■ 山 行 日 2020年4月16日(木)~17日(金) 山行は日帰り
■ ル ー ト シートカチ第6支線林道~北東斜面ルート 往復
■ メ ン バ ー 夫婦登山 №16
■ 登 山 形 態 山スキー&アイゼン
■ 地 形 図 1/25000地形図 「十勝岳」「チカベツ山」
■ 三角点・点名 二等三角点 点名「幌神女徳 ホロカメットク」
■ コースタイム 登り 8時間25分 下り 4時間15分
<登り>
04:15 P出発(北電水力発電所前)
05:00 支十勝橋
05:35~40 水源かん養保安林出合
06:00 奥十勝橋
06:30~35 休憩
06:40 シートカチ第5支線林道出合
07:35~50 シートカチ第6支線林道出合 休憩
08:35 第6支線林道C890付近 (林道から離脱) 林道10.7㎞
10:10 C1170付近 スキーデポ(エバ)
11:05 C1310付近 ザックデポ(エバ) アイゼン装着
スキーデポ(チーヤン) アイゼン装着
12:40 下ホロカメットク山頂上
<下り>
13:00 下山開始
13:30 C1310 ザックデポ地点 チーヤンスキーモード
13:50~14:00 C1170 スキーデポ地点 エバもスキーモード
14:30 C890付近第6支線林道出合
14:45 第6支線林道出口
15:25 第5支線林道出合
15:45 奥十勝橋
16:00 水源かん養保安林出合
16:30 支十勝橋
16:35 レイサクベツ橋
17:15 P登山口
GPSログを元に地形図に転写したルート図です・・・
★ ピリカヌプリ、愛おしく・・・
今年のピリカヌプリ計画は、10年越し6度目の挑戦だった。その10年をふと振り返
りすっかり遠くなってしまったピリカに思いを馳せる。
悪天時の計画、登行時のハプニング、自分の失態・・過去5回の挑戦にそれぞれの思い
出は忘れない。ここまで来るともう登れないのは当たり前となり、毎年の恒例行事とし
て計画を組むだけのように思える・・・苦笑
あの時のあの姿が愛おしく、快晴無風で泊まったテントの心地良さが今も頭から離れな
い。あのイメージでまたいつかピリカを目指し、いつかこの足でピークに立ちたい・・
と今年も計画を立てたが、またまた予定通りの天候は望めず悪天の予報のままではとて
も決行するモチベーションにはならないピリカだった。
ピリカへの思いはそのままに、何が何でも・・と言う気持ちは収まって来た。
これからは、天気予報と相談し3日間快晴の日を待って登れる日を楽しみにしようと、
焦らずボチボチと実行するピリカ計画にしたいと思う。もう若くないから加齢は気にな
るが、焦っても仕方ないとこれからのチャンスに期待するだけである。
シートカチ第6支線林道から望む下ホロカメットク山を背に・・・
★ 真似だけど真似じゃない・・・
YAMAPで互いにフォローしている「みなみんみん」さんの山行記録にはいつも目を見張
るものがある。そのスタイルはある意味私たちと同じで、相方さんと二人で目指す北海
道の1000m超峰全山である。彼女もまた私たちの記録を見て臨む事もあり、今は互いに
刺激し合ってマイナーな未踏を目指す間柄・・と言っても良いかも知れない。
そんな彼女が4/12に相方さんと登った「下ホロカメットク山」に触発された。
どこから見てもスッキリとした端正な円錐形のお山で標高は1668m。十勝連峰の一座で
はあるが、連峰から一歩離れた独立峰で夏道は無い。目指すには長いアプローチプラス
標高差 400m以上の急登を登らなくてはならない。通常ならテントを担いで一泊の山行
がベストなのだが、早朝出発のone day山行にもひかれた。
彼女らの僅か5日後だから、真似をして行くだけと言われても間違いではない。しかし、
同じように登れるかは時々の天候や雪質によっても変わるし、そもそも登っている人間
が違うのだから、ただの真似じゃない。まぁ~いずれにせよ登るのは、私たちだ。
★ 前泊・・・
トムラウシ温泉の約10㎞手前にある「曙橋」を渡ってすぐ左手の林道に入る。
この林道は、以前トノカリシベツ山に登る時2度利用していたので迷う事は無いが、今
回はその分岐(トノカリ林道)から更に直進し車止めで車中泊した。
車止めは、トノカリ林道出合から僅か1㎞ほど進んだ北電水力発電所のあるところで通
行止めの標識が置かれていた。林道出合から約6㎞地点である。この先の林道が大きく
崩壊したためであるが、下ホロカメットク山へのアプローチが遠くになった事は間違い
ない。それは、10㎞強の林道アプローチと約4㎞の急登アタック・・・往復で28㎞
の日帰り山行は簡単ではない。少なくても登山口に泊まって翌早朝出発は必須の条件だ
し、状況によっては途中敗退もあり得る山行を覚悟していた。
登山口に着いたのは18時だった。
途中、車の異音に違和感を覚えたチーヤンがどうしてもこのままでは林道を走りたくな
いと言い日高町の修理工場に立ち寄る事にした。異音はブレーキローターの錆が原因だ
ったが、ここに辿り着くまで2時間半を要しすっかり遅くなってしまった。でもチーヤ
ンの不安は解消し、安堵の登山口になって着いた18時である。
すぐに安着となるも明日の早朝出発に備えて20時過ぎには就寝する事にした。
外は明日の好天を約束する満点の星だった・・・。
★ アプローチを遠くした林道崩壊地・・・
まだ空に星が輝く午前4時過ぎに出発した。
スキーを手に持ったまま5分程歩くと林道崩壊地のロープがあり大きく高巻く。
高巻きルートにはしっかりフィックスロープが張られていて安心だが、スキーを持った
ままのスキー靴では大変だった。
その後、雪が出て来てからスキーを履いたが一度もスキーを外す事なく山行が続けられ
た (一部無雪地もあったが、スキーを履いたまま歩いた)
下りで撮った写真・・・左側の斜面を高巻く
往路ではカチカチの林道でトレースも付かないほど雪面が固かった・・
★ ありがたきトレース痕・・・
5日前に登ったみなみんみんさん一行のトレースと思われるスキー痕が辛うじて残って
いた。同時にほぼ林道の9割に渡ってオヤジのトレースも残されいてルンルンでは歩け
ず、時々笛を吹きながらの登行だった。
携帯のGPS設定が出来ず、地形図とコンパスでの登行になりトレースは救いの神とな
り助けられた。特にシートカチ第6支線林道から離れて下ホロカメットク山に向かうル
ートでは、方向を定めつつも少し複雑な地形も混ざりトレースを辿る事で勇気を貰った
と言っても過言では無かった。
GPSに地形図の表示は無かったが、ログの表示と距離、標高が分かったので手持ちの
地形図と併用してルートを辿った。実に第6支線林道のC890まで優に10㎞を越え
ていて、ここまで4時間20分を要していた。ホント長いアプローチだった。
それでも予報通りの雲一つない快晴に恵まれ、気温も次第に上がってまったく寒くは無
かった。途中からアウターを脱いだのは今シーズン初めてである。
何ヵ所か林道を塞ぐ倒木もあったが、スキーを外す事なくクリア出来た。
第5支線林道と第6支線林道の中間から下ホロカメットク山が見え始めるもまだ遠い・・・
上と同じ場所にて・・・自撮りです
第6支線林道の手前にあるヘアピンカーブの橋が一部崩壊していて辛うじて雪が繋がって渡る事が出来た・・
最初の目的地だった第6支線林道出合に着いた・・・
三脚を利用した自撮り・・・第6支線林道にて
だんだん近くなって来た下ホロカメットク山をズームする
林道から離れ下ホロカメットク山に方向を変え樹林帯の中へ・・・
★ 苦難の始まり・・・
第6支線林道に入ってから少しずつ雪面の状態が変わって来た。陽も高くなり気温も上
がっている事は歩いていても実感出来るほどだ。雪面の表面だけが溶け出しスキーの滑
りが良くなって来たが、シールが湿って重くなっていくのも感じていた。
支線林道から離れて進路は、下ホロカメットク山へ向かう。
みなみんみんさんのトレースは、上り痕より下り痕の方が明瞭になるも私たちにとって
道案内に変わりは無く助けて貰っている。林道から山に変わったのでトレースがあって
も頻繁にピンテを付けて行く。
斜度の増した登りになると急に体が重く感じペースが落ち始めたのは私だ。
同時に木陰になるとまだ乾いている雪がシールに着き始め団子化していった。最初の内
は反動を付けて雪を蹴散らして済んだが、C1170付近で限界を感じた。先を行くチーヤ
ンを呼び止め、ここにスキーをデポしてツボ足で登る事を伝える・・。「まだこんなと
ころで・・・」というチーヤンの心配は的中。ツボ足にも靴底の団子化でさっぱり歩が
進まない。チーヤンは順調に登って行き離れ始めた。
5歩登っては立ち止り息を整える繰り返しの有り様。
ザックも重いと感じ始める情けなさ。11時を過ぎてまだC1300付近でジタバタしてい
る。シールワックスを持って来なかった事は後の祭りと後悔するも次第に体調も悪くな
って来た。このままでは、登頂も危うい状況になって来た。チーヤンも心配して止める
なら止めても良いと言うが、甘んじて上で待つチーヤンを呼び止めた時もあった。
余りにも遅い私を案じて、C1310付近でチーヤンもスキーをデポし、アイゼンを付けて
登ると言ってくれた。登りのタイムアウトは12:00と決めていたが、取り敢えずこ
の時間まで登ろうと話し合い、私はザックもデポして空身で登りを再開した。
C1350付近から森林限界となり低いハイ松の一部が顔を出す程度になって来た。同時に
斜度は増して急斜面となり雪面も硬くなって登り易いが、見上げる頂上はまだ見えない。
空身になって足の負担が無くなるとアイゼンの歯が小気味よく利いて登るペースが速く
なって来た。直登するとどんどん高度を稼ぎタイムアウトの12:00には1500m
を越えていた。
あと170m・・・。
下りの時間を考えても登行限界は13時と修正し、近くなった頂上を目指す事にした。
そして、12:40ついに頂上に立った!
チーヤンも私も泣き崩れる様に抱き合い、苦しかった長い登りを終えた感動に慕った。
もし途中でタイムアウトとなり、敗退となれば次の下ホロカメットク山はもう無いかも
と思ったのは夫婦共通の思いだった。「苦しくも一歩ずつ登れば必ずゴールはある」。
そして「ダメならまた来ればいっしょ・・」って誰かが言ったセリフだが、もうそんな
事を軽々しく言える歳では無くなったと改めて気が付いた時でもあった。
C1350付近の森林限界を超えたあたりで・・・
境山を右手に見ながら急斜面の下ホロカメットク山を登るチーヤン・・・
★ 涙、涙、なみだの登頂・・・
「もう無理かも・・・」と何度か登頂を諦め掛けた自分を恥じた。
でも、少しだけ時間に余裕があったのと妻の励ましは大きな力になった・・。
最後に見上げた小さな雪庇の上が頂上だと確信した時からもう胸がいっぱいになって来
た。そして、雪庇を越えた上に立った時思わず「やったー!」と叫んでしまった。すぐ
後から続くチーヤンは涙を流し崩れる様に座り込んだ。そして、感動の瞬間を抱き合っ
て喜び、頑張った自分たちを褒め合った時だ。
登り8時間25分・・・
これまでの登行時間では最長かも知れない。
昨年2月に登った十勝・旭岳(1335m)登頂の時はトータルで11時間山行だった。
あの時のコースタイムは非公開でアップしたほど情けない山行だったが、何度も敗退を
意識しながらも「もうリベンジはごめんだ!」と自分に喝を入れて登り続けた結果の登
頂だった。旭岳も9㎞に及ぶ林道歩きでしかもラッセルだったから今回の10㎞強より
きつかったと思うが、途中で諦めてしまえばもう一度同じ山行をすると言う事でもあり
簡単には中止出来ない夫婦の事情があると理解して欲しい。
登るまでは辛いが登ってしまえば、なんて晴れ晴れしいのか・・・
苦しい山行も喜びに変わり、最後は「楽しかったね!」って言えるから山は不思議だ。
いつも楽しい登山ばかりではないかも知れない。今回のように諦め掛ける山行もまた
あるかも知れない。そして途中敗退も・・・。
それでも目標があるから登り続けるモチベーションがある限りこれからも夫婦登山が
続けられたら言う事は無い。
以下、頂上からの景色を楽しんで欲しい・・・。
2020年4月17日(金) 下ホロカメットク山(1668m) 初登頂・・・
境山と富良野岳を背に 下ホロカメットク山頂上にて
★ 眺望・・・
★ 下り・・・
僅か20分の滞在で下山する事になった・・。
13:00下山開始。
でも、登って来た時の気持ちとは真逆に晴れ晴れしかった。体調の悪さもどこ吹く風?
アイゼンの歯がしっかり雪をとらえて急斜面もどんどん高度を下げて行った。
登りで1時間半以上掛かったザックデポ地点のC1310には30分で降りてしまい、スキ
ーモードになってから林道に出合うまで1時間だった。
スキーは最強とこれまで何度も実感しつつ時間を要した山行になればなるほど、下りの
速さが強く実感し、「ありがたい・・」と思うばかりだ。
林道に降りた時から「これで無事帰れる・・・」と実感し安堵の平常心でホッとする瞬
間でもあった。林道のすべてが自動運転と言う訳ではないがスキーを滑らせて進む距離
は登りの比ではない。
そして、17:15登山口に到着。
まだ明るい時の下山に夫婦固い握手で山行を終えた。
今シーズン6座目となった未踏1000m超峰だったが、これも忘れられない一座とし
て記憶に残ると思う。この登頂で未踏1000m超峰は残り119座となった。
帰路、日高町の沙流川温泉「ひだか高原荘」で汗を流し、21:35無事帰宅した。
新型コロナウイルス感染拡大の非常事態宣言が発令されたためか利用者は異常に少なく
宿泊者は一人もいなかった。早く終息する事だけを願い、これからも接触感染に注意す
るのは私たちも同じである。
コメント嬉しく拝見しました。私たちの力になります。
相方、隊長のブログがまったく更新されなくなったので勝手ながらリンクから外す事に
しました。事後承認となりますが、お二人の活動が見られなくなり、決断した次第です。
お許し下さい。
山は無菌だ!と豪語して天気の良い日を選んで山に出掛けていました。夫婦登山だし三密も無いので
感染リスクはゼロと思っていましたが、医療崩壊の実態を知り、関係ないとは言えない行動の自粛を意識したのは最近です。
そんな中の下ホロカメットク山でしたが、遠征や未踏1000m超峰への挑戦は
暫く自粛しようと思っています。でもみなさんから頂戴する温かいコメントは私たちにとって
大きな力になりますし、友情を繋ぐ確認にもなります。会えなくても繋がっています。
また、嬉しいコメント下さいね!
自宅待機中はじっくりゆっくりブログ再々読できます。
先のSTST退会とモチベーションを保ちながらの両記事も共感しうなずける箇所がいくつもあったり、そうだったんだと改めて知る事も多々ありました。
あの美比内の時のように偶然 山でお会いする事も無くなかなかご一緒できませ
んがエバさんんのブログがあるのでわりと身近に感じているのですよ
久しぶりコメントできたので
なんだかアレコレと想ってしまいました。
只今コロナで自宅待機中です。
なので、ゆっくりブログを拝見しコメントができます。
下ホロ登頂おめでとうございます!
感動しました。
タイムリミットがある中 苦しくても
一歩一歩前進してその頂に立った時の
喜びはひとしおですね。
苦しかった山行も楽しかったと喜びに変わりそれを夫婦で分かち合える、素敵です!
今月やっとピリカに行く事ができました。沢からと積雪期も計画を立て達成するまでに5年以上はかかりました。
年齢的にエバさんの直ぐ後を追う私にとっても厳しい山行はリベンジが難しくなっています。
ブログを拝見しても何度もうなずけ
痛感す箇所がありました。
ご自分達の目的を持ちそれをコツコツと実行されている、今回の登頂は「継続は力なり」の結果と思います。
お二人の姿は私の目標でもあります
これからもブログを楽しみにしています。
何度もくじけて帰りたくなったよ!
その場所がもう1300m付近だったし、登らずにまた10㎞の林道を戻る時の悔しさを考えたら
ギリギリまで一歩を増やそう・・と、やるしか無かったね。それにここで敗退したら2度目は無いかもと思うと何が何でも・・だわ。
もうこの歳なら2座を日帰りでは死を覚悟するキツイ山行だべさ・・・笑
今シーズンもまだまだスキーで行きたい山は沢山あるけど・・コロナ自粛も考えないとね。
いやあ、その長い時間をよく頑張ったもんだと感心する。
私は未踏の山で、一度原始ヶ原からアプローチして失敗した。
できることなら『境山』経由で、というのが希望。
まだスキーを利用する山行を予定しているのかな???
そして、今まさに世界中で蔓延しているコロナ感染拡大の終息に向けた真価が問われる行動の必要性を感じているところです。
GAKUさんにおかれましても、留意している事と思いますが、くれぐれもご注意下さい。
今回の下ホロカメットク山では、想定外に時間を要しましたが、諦めない一歩が功を奏したと言えます。
でも、時には諦めてこそ功を奏する場合もあると思います。
これからは出来るだけ「家にいよう」と思いますが、私たちは夫婦登山なので三密から離れての登山です。ケガだけは気を付けたいと思います。
ではお元気で・・・
また会いましょうね!
よくも8時間以上もの登りに耐えて登頂しましたね。
夫婦でその感動を共にできるなんて、最高の幸せものです。