絵葉書ロマン譚 絵葉書資料館ブログ

絵葉書を通して、古き良き時代にタイムスリップ

神戸時計デザイン博物館~旅行と時計~

2019-07-27 15:59:16 | 特集




時計と旅行はとても密接な関係があります。
蒸気機関の改良と共に大量の荷物や人の長距離移動が当たり前になり、
旅行はかつてのような一部の人々が楽しむレジャーではなくなりました。



交通機関の発展は、時間の正確さに支えられました。
効率的に運ぶためには決まった時間内に素早く沢山の積み荷と人の移動することが不可欠です。
そのため駅前には必ず時計が設置され、乗客は時計を携帯するようになりました。



日本でも新たな観光地や避暑地の誘致に、電鉄会社が積極的に関わりました。
開発当初は外国人向けが多かったのですが、やがて日本国内でも家族旅行の考えが浸透。



旅行ブームが巻き起こり、観光地を目指して人々は懐中時計や腕時計を身につけ、
小型の目覚まし時計を旅行カバンに詰めました。




舞子公園停車場 


誰もが旅支度に時計を持つようになったのです。




次回も素敵な絵葉書を紹介します。
お楽しみに!






次回は8月の予定です


神戸時計デザイン博物館~国産時計のはじまり~

2019-05-31 20:27:19 | 特集

梅本商会
丹後宮津 ゼニット



雨後の筍のように、軒を連ねていた時計店。
しかし時計の組立・販売は各店で商っておりましたが、
部品は全て輸入品でありました。
例えばファーブル社はスイス出身の大手で、
横浜に拠点を構え、主要都市に部品を卸していました。



ブランドとして一定の地位を獲得していたらしく、
「ファーブル式」と銘打った広告が絵葉書にも登場し、
神戸にも扱う店がありました。
欧米の輸入品を頼っているため、
時計はまだまだ高級品で中流以上か公共施設や店舗と購入に限りがありました。



時計販売会社は、生活水準の向上と販売拡大するため
輸入品の組み立てだけでなく、国産品の販売に力を注ぐようになりました。



現代でも有名な精工舎を始め、名古屋、大阪・京都等の製造会社は、
外国から職人を呼び寄せて技術を学び、
繊細な部品全てを自身の工場で作れるようになりました。



やがて欧米の模造品から、国産時計の時代に一歩前進したことで、
国内の普及率は一気にあがり、格安の時計のおかげで
一般家庭でも生活必需品として受け入れられるようになったのです。



そして世界へ輸出されるほどの
商品が製造されるようになりました。




次回も素敵な絵葉書を紹介します。
お楽しみに!






次回は6月の予定です


日本の近代化と植物6~バラ~

2019-02-28 22:57:43 | 特集

夢二 薔薇



世界中に原種が数多く存在し、
百合や蘭と共に高い人気をほこる薔薇。
日本との関係も深く、万葉集に棘原(うばら)
または宇万良(うまら)と詠んでおりました。



日本では房咲きで白く可憐な花をつける
野茨が自生しておりました。
平安期に遣唐使が薔薇(そうび)を持ち帰りました。
濃厚な香りと鮮やかな色の薔薇は
貴族の屋敷や寺の庭園に植えられたそうです。



長らく愛でられ続けた薔薇にも、
開国と同時に新しい文化の風がふきます。
西洋で品種改良された薔薇は、
豪華で芳醇な香りで今までにない美しい花でした。



蕗路虹児 薔薇の柄ドレスの女性



絵葉書でもモダンローズは、
新しい女性モチーフとして大変もてはやされたのです。




次回は当館の企画展をご案内致します。
お楽しみに!






次回は1月の予定です


日本の近代文化と植物5~日本と蘭~

2019-01-31 07:41:31 | 特集

加藤まさを
花の妖精



蘭は中国で四君子と呼ばれ、気高い花と貴まれました。
交流が盛んだった日本でも好まれました。
日本や中国では、控えめで良い香りのする花が美しいと称賛され、
絵画や工芸のモチーフとして取り上げられるほどでした。



西洋では、スケッチされた資料と銅版画の技術の融合により、
複製原画によるボタニカル・アートが本格的に開花。
蘭の図譜はバラやユリに匹敵する傑作品として評価されました。



これらの画譜は人々の好奇心を強く刺激し、富裕層を中心に、
珍しい美麗な植物を集め育てる園芸ブームが起こります。
結果、蘭は愛好家の手により交配と育種が繰り返され、
千差万別の姿の花々が誕生しました。



欧州の文化を吸収していく過程で、
日本でも洋ランと育種の趣味も取り入れられました。
洋ランは華やかで美しく、時には奇抜なビジュアルで、
財界の名士らに愛でられました。




園芸会社の努力により、
植物の交易が盛んになるにつれ
洋式園芸の本格的な設備や道具が輸入されました。
洋蘭をはじめ、他の珍重な植物と共に
最新鋭の温室、肥料、殺虫剤などが販売されたのです。




次回も素敵な絵葉書を紹介します。
お楽しみに!






次回は2月の予定です


日本の近代化と植物~菊~

2018-10-30 09:49:44 | 特集





博覧会は、各国の紹介や交流だけでなく、商談の場でもありました。
貿易に意欲を燃やしていた日本は、博覧会にて日本の植物を展示。積極的な販売に力をそそぎました。



以前に紹介した百合を筆頭に、ボタン、シャクヤク、ハナショウブ、クズ、フジ、サクラ、盆栽など、
外国人の好みを調査するため、多種多様の植物を博覧会で展示したのです。
そのなかでも、菊は素晴らしい反響をえました。



特に1900年のパリ万国博覧会に出品された「大作菊」の3鉢は大きな話題になったそうです。



大作菊とは新宿御苑独自の技術で、菊の大作り花壇とも呼ばれ、
一本の根元の茎から500輪以上の花をドーム状に咲かせる鉢植えです。



長大で美しい大作菊は来訪者を驚かせ、「皆恍惚唖然として、秀麗さを絶賛した」と報告されています。




西洋少女と菊



そしてフランスを中心にわき上がった
ジャポニズムブームでも、菊は注目の的になりました。
貿易会社は欧米向けカタログに、秋の女王を紹介。
輸出品だけでは足らず、現地で生産販売までされました。




次回も素敵な絵葉書を紹介します。
お楽しみに!






次回は11月の予定です