絵葉書ロマン譚 絵葉書資料館ブログ

絵葉書を通して、古き良き時代にタイムスリップ

大正ロマン レトロな夏模様3 ~夢二と着物~

2008-07-18 12:30:40 | 大正ロマン
あちこちで夏祭りが開催されるようになり、
浴衣姿で出かける方をよく見るようになりました。
カラコロと石畳を踏む下駄の音を聞くだけで、
なんとなく心が涼やかになりますね。



前回、夢二の浴衣について特集しましたが、
その補足として、レトロモダンな着物をご紹介いたします。



 当時の挿絵画家は、
 イラストの少女やご婦人たちに、
 オリジナルデザインの着物や
 ドレスを着せて登場させました。
 そして人気のイラストレーターが
 手がけたデザインは、
 着付けや合わせのお手本として
 もてはやされるようになりました。
 華やかなバラや孔雀の羽、
 アール・デコ風の幾何学模様の着物……

 とても昔とは思えないほど大胆で、
 斬新なデザインばかりです。


    鏡台(夜の化粧)




また、昭和初期には少年のようにばっさり髪を切る、
ショートカットが大流行しました。
活発でセクシーなイメージを与えるこのヘアースタイルは、
新しい着物柄や洋服と相成り、
モダンガールのシンボルとなりました。




                        



 夢二も当時の挿絵画家らしく、
 浴衣の図案なども手がけるほど、
 ファッションに興味がありました。
 ただし、彼は流行柄よりも
 江戸時代から続く
 伝統的なものを好みました。
 そのため彼のイラストに
 モダンガールは少なく、
 日本髪を結い、伝統的な縦縞柄や
 藍染めなどを着流す、
 しっとりとした大人の女性を描きました。

 レトロな絵葉書を参考にして、
 優雅な仕草や
 粋な着こなしを身につけたら、
 きっと素敵な着物美人になれるでしょう。


    行灯(あんどんの灯)




さて次回はレトロな夏模様の最終回として、
懐かしくて粋な、日本の夏を紹介したいと思います。
お楽しみに!




次回は8月1日の予定です


大正ロマン レトロな夏模様2 ~夢二と浴衣~

2008-07-04 12:52:17 | 大正ロマン

もうすっかり暑くなりましたね。
日が暮れるのが遅くなるのを見るたびに、夏を実感します。




 
うちわ 窓 
(夕涼み)




さて前回は花火を紹介しましたが、
お祭りへ行くときは浴衣だと気持ちが華やぎますよね。
昨今流行のレトロモダン柄と呼ばれる浴衣や着物のモデルは、
大正時代にはやったデザインが基となってます。

色鮮やかで斬新な着物は、
今でも新しいおしゃれな感じがしますね。
当時流行だったこともあって、面白い模様の着物が
登場する絵葉書がたくさんあります。




物思い
(頬杖をつく女)





夢二は芸者や舞妓の華やかな姿をよく描いてますが、
力を入れて取り組んだのは、日常をテーマにしたイラストです。
そのため彼の描く女性は、かなり着崩しています。

着物の胸元を大きく開き、帯もふにゃりとゆがんでおり、
現代の私たちの感覚から見てかなりだらしのない雰囲気があります。

それは彼が飾らない姿を描いたこともあると思いますが、
当時の着付け方にも理由があったようです。


わたしたち現代人は着物を着るさい、帯板を使用します。
帯板を入れることで、ビシッとした美しい仕上がりになるからです。
そのため帯は立派になりすぎ、体になかなか馴染まないものになりました。

しかし戦前は、逆に帯板を使う習慣はありませんでした。
イラストや下の写真絵葉書などをよく見ると、
腰に沿って帯がしなやかに折れ曲がってます。
毎日着て生活していたからこそ、
気軽な着こなしができたのかもしれません。





当世風俗千姿



また夏といえば浴衣ですが
今は半幅帯や兵児帯で文庫結びやリボン結びにしますよね。
ですが大正から明治にかけて、
浴衣でも成人女性なら太鼓つくりできっちり締めていました。
きっと当たり前に夏服として浴衣を着付けていたので、
自分によく馴染んだ帯の締め方をしたのでしょう。




次回も素敵な夏の風物詩を紹介します。
お楽しみに!





次回は7月18日の予定です


大正ロマン レトロな夏模様1 ~夢二の夏~

2008-06-20 13:01:12 | 大正ロマン
ついに連載も十回目を迎えました!
更新の遅い、細々としたブログですが、
これからもよろしくご愛読お願いいたします……



季節はすっかり初夏の空気が漂っています。
今回は一足早い、
夏の雰囲気を感じさせる絵葉書を紹介いたします。


 
花火
竹久夢二



紹介します絵葉書は、竹久夢二の作品「花火」です。
大正時代に活躍したイラストレーターの一人であり、
 「挿絵が載らない雑誌はない」
 と言われるほどの人気作家でした。


彼は主に柳のようにしなやかな女性を描きました。
簡略化された華奢な体からは、ふっと力が抜けた気だるさと、
着物姿ならではの大人の女の魅力が醸し出されてます。


「花火」は絵と詩を収めた『三味線草』の挿絵を絵葉書にしたものです。

華やかな夏の夜と一瞬で散っていく花火の儚さが、
背を向けて立つ、女性の艶やかさと哀愁と重なり、
過ぎ行く時間の美しさと寂しさを感じさせます。



『三味線草』の刊行から数ヵ月後、
作品の重要なモデルの一人であり、
夢二最愛の人とも言われている笠井彦乃と結ばれています。




今年も夏に、各地で様々な花火大会が行われるでしょう。
賑やかな祭りとともに、絵葉書のような花火の美と
儚さを味わうのもいいかもしれません。




次回も引き続き
少し季節を先取りした絵葉書を紹介いたします。
お楽しみに!






*週一回のペースで連載して参りましたが、
多忙のため、次回より2週間に一回の更新にさせていただきます。
せっかく楽しみにして頂いてる方々には大変申しなく思ってます。
これからも精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い致します






次回は7月4日の予定です