後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔371〕ダニエル・マウホとミュンナーシュタットの祭壇(中世ドイツ彫刻)の誌上探訪です。

2021年06月27日 | 美術鑑賞
 コロナ禍の今、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。高齢者の私は、ようやくワクチン注射を2回終えたところです。好きなバドミントンを少しはやりたいなと思うこの頃です。昨日半年ぶりにプレイして身体が全然動きませんでした。
 自粛期間中の楽しみは、中世ドイツ彫刻の図録を眺めることです。
 欲しかった2冊のドイツ語の図録をネットで買い求めることができました。2冊とも大冊で、かなりの重量があります。妻のドイツ語力に頼りながら、もっぱら豊富な写真を眺め様々想像をめぐらし楽しんでいます。



 左の本は中世ドイツの彫刻家、ダニエル・マウホの図録(ウルム博物館発行、ハードカバー、340頁)です。ウルム博物館は3度訪れていて、旅先でこの図録を買おうか躊躇していたのです。今回、ネット購入して大正解でした。なんとマウホのカタログ作品が50を超えていました。写真もなかなか良いものでした。解説の大半はウルム博物館のエヴァ・ライステンシュナイダー博士が書いたものです。一度博物館に彼女を訪ね、お話をうかがい、許可していただいた写真を掲載した写真集を届けました。
 マウホは柔和な心温まる作品が多く、心引かれるものがあります。福田緑の『祈りの彫刻』(全4冊)では写真紹介できなかった作家でした。実は中世ドイツ彫刻に関する緑との共著にマウホを紹介したいと考えています。来春出版を予定しています。やはり来年1月に予定している緑の写真展(国分寺)には残念ながら間に合わないと思います。
 マウホはウルムやルティッヒ(ベルギーのリエージュ)で活躍した作家なので、南ドイツやベルギーにその作品が多く残されています。ドイツ行きが解禁されたら「マウホを歩く」旅に出たいと思います。表紙の聖母子像はリエージュ、代表作の聖家族像はビーゼルバッハ、マリアの戴冠像はケンプテンにあります。亡くなられた池内紀さんの『ドイツ 町から町へ』(中公新書)に有名ではないケンプテンが紹介されていてびっくりしました。

 右の本はバイエルン国立博物館の図録「芸術と大罪」(ソフトカバー、240頁)です。コロナ禍で一時閉館してましたが、この展覧会は8月1日まで開催しているとのことです。
 図録の副題は「ファイト・シュトース、ティルマン・リーメンシュナイダーとミュンナーシュタット祭壇」です。中世ドイツ彫刻の2人の巨匠がミュンナーシュタットの教会で出会います。リーメンシュナイダーの彫刻に彩色したのがシュトースでした。実はシュトースの仕事はもう1つありました。祭壇に4枚の絵を描いていたのです。私自身は2回ミュンナーシュタットの教会を訪れたのですが、この絵はうかつにも見落としていました。教会ではどうやら祭壇にではなくて壁に展示してあったようなのです。
 今回の展覧会はどちらかというとリーメンシュナイダーよりシュトースに重きを置いているようです。この図録はシュトースの彫刻の代表作も掲載されていますが、画業について様々な角度から触れられています。シュトースのスケッチも多く、画家としての仕事に光を当てています。執筆はフランク・マティアス・カメル館長とマティアス・ヴェニガー博士が中心です。
 いずれミュンナーシュタットの教会を再訪することを願っています。