後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔220〕今朝、谷川俊太郎さんの名エッセイ『ひとり暮らし』に「天声人語」で再会しました。

2019年06月06日 | 図書案内
 2019年6月6日。今朝、朝日新聞の「天声人語」に目をやってびっくりしたり嬉しくなったりついにやついたりしました。次のように書き出されていたからです。


 「朝寝」には、どこかふてくされたような響きがある。それに対して「昼寝」という言葉は快く、おおらかだ。昼寝と聞くだけで、からだがとろけてくる――。そんなふうに詩人の谷川俊太郎さんがエッセーに書いていた▼昼食を終えると眠気に抗しきれなくなる。「その気持ちの底に一抹の後ろめたさもひそんでいて、それが『昼寝』に欠くことのできない隠し味だ……」(『ひとり暮らし』)。読んでいるだけで眠くなってくる。…


  少し自慢話を書きます。
 『ひとり暮らし』は夫婦で愛読している谷川さんの名エッセイ集です。実は数年前にご本人からいただいたものだったのです。
 谷川さんのことば遊び歌は、クラスの子どもたちと私が大好きな日常的な「教材」の1つでした。小学校現場を離れた今でも大学生やラボ教育センターのラボっ子たちやテューターたちと真っ先に遊ぶのが谷川さんの「きりなしうた」だったりするのです。
 単なる読者ではなく、編集者として谷川さんと直接コンタクトをとる必要ができたのは演出家の竹内敏晴さんが亡くなった時です。私が編集代表をしていた「演劇と教育」(晩成書房)で竹内さんの追悼特集をしようということに決まりました。その時に思いついたのが、谷川さんが書いた竹内さんの追悼の詩を掲載することだったのです。この詩は立川の東京賢治の学校の竹内追悼会で披露されたものでした。
 ダメ元で谷川さんに掲載許可依頼の手紙を心を込めて書きました。しばらくして返信用のはがきが戻ってきました。掲載承諾ということでした。とても嬉しかったのを鮮明に覚えています。〈その詩の一部は拙著『実践的演劇教育論-ことばと心の受け渡し』(晩成書房)の前書きに紹介させてもらっています。〉
 その後、掲載の御礼も込めて、迷惑も顧みず、ミニコミ「啓」を送り続けていたのです。この「啓」をおもしろがってくださったのが谷川さんの「秘書」の箭本啓子さんでした。彼女とはその後親しくなり、我々夫婦とドイツ行きに付き合っていただいたこともあるのです。その顛末をブログに書きましたので、興味のある方は探してみてください。

 『ひとり暮らし』(新潮文庫)に話を戻しましょう。
 裏表紙には次のようなことばが書き込まれています。目次もどうぞ。


●結婚式より葬式が好きだ。葬式には未来がなくて過去しかないから気楽である――。毎日の生活のなかで、ふと思いを馳せる父と母、恋の味わい、詩と作者の関係、そして老いの面白味。悲しみも苦しみもあっていいから、歓びを失わずに死ぬまで生きたい。日常に湧きいづる歓びを愛でながら、絶えず人間という矛盾に満ちた存在に目をこらす、詩人の暮らし方。ユーモラスな名エッセイ。



ポポー
ゆとり
恋は大袈裟
聞きなれた歌
道なき道
ゆきあたりばったり
葬式考
風景と音楽
昼寝
駐ロバ場
じゃがいもを見るのと同じ目で
春を待つ手紙
自分と出会う
古いラジオの「のすたるぢや」
通信・送金・読書・テレビ、そして仕事
惚けた母からの手紙
単純なこと複雑なこと
内的などもり
とりとめなく
十トントラックが来た
私の死生観
五十年という歳月
私の「ライフ・スタイル」
ひとり暮らしの弁
からだに従う
二〇〇一年一月一日
二十一世紀の最初の一日

ことばめぐり












ある日(一九九九年二月~二〇〇一年一月)

あとがき
文庫版へのあとがき


 夫婦して、「おもしろいねえ、詩人てこんなことを考えているんだ。」とにんまりしあったのが昨日のことのように思い出されるのです。


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