後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔644〕ようよう『ロマネスク彫刻の形態学』《柳宗玄著作選5》に辿り着いたという感じでしょうか。

2023年12月17日 | 図書案内
 今一番知的興奮を覚えるのは、ドイツ語圏を中核とした後期ゴシック彫刻探究です。20回近くの渡独を経てもなお、その興味は衰えることがありません。後期ゴシック彫刻の頂点の一人、リーメンシュナイダーの本を最初に公刊された植田重雄さんが残された蔵書から、私たち夫婦は今夏、フランスロマネスクの傑作のあるモワサック、トゥールーズ、ディジョン、パリ、ロンドンに赴くことになりました。ロマネスクとゴシックの相違に思いを巡らしているところです。
 後期ゴシック彫刻総体を俯瞰できる書物は日本では見当たりません。ドイツでもそう多くはないと思うのですが、わずかマイケル・バクサンドールのものを知るだけです。彼はイギリス人ですがドイツ語でも著作をものにしています。残念ながらこの本の日本語訳はありません。


 
 さてそうしたなか、ロマネスク彫刻に関する日本語文献を手に入れました。柳宗玄著『ロマネスク彫刻の形態学』(八坂書房)です。実物を手に取る機会がなかったのですが、いろいろネットで情報を集めて、安くないこの新本を買うことに決めました。しかしながら手探りながらの購入は「正解」でした。
 一番評価されるのはご自身で撮りためた豊富な写真が満載されているということです。ロマネスク芸術の宝庫フランスをはじめとして、スペイン、イタリア、ドイツ、ポルトガルと足を伸ばしています。こうした広範囲にわたったロマネスク彫刻の探求の旅をした人は希有のことなのではないでしょうか。ただし、以前のブログで紹介したように、スペインロマネスクに関しては、我が師匠・村田栄一さんを超えるものではありません。

 そもそもこの本は、最初の東京オリンピックの年の1964年に『みずゑ』(美術出版社)に11回連載されたものを、ようやく2006年に出版したのでした。それは柳宗玄著作選全6巻の1冊としてでした。ちなみに、第4巻『ロマネスク美術』の前身の著作で毎日出版文化賞を受けているようです。
 奥付を見てびっくりしたのは、八坂書房が千代田区の猿楽町にあり、モリモト印刷所で印刷・製本されたということでした。2013年に出版した拙著『実践的演劇教育論・ことばと心の受け渡し』(福田三津夫編著ではなく福田三津夫著の間違い)は猿楽町の晩成書房、モリモト印刷の手になるものでした。妙な因縁を感じるのです。

 内容についてはこれからじっくり楽しみながら読み込んでいきたいと思っています。

■ロマネスク彫刻の形態学(八坂書房のサイトより)
《柳宗玄著作選5》
サブタイトル
著者 柳 宗玄
ページ数 376頁
判型 菊判・上製
定価 5,280円(本体4,800円)
内容 キリストや聖母とともにロマネスクの聖堂を飾る鳥獣、植物、抽象文、庶民の姿、そして悪魔や異形……。聖堂の隅々にまで眼を凝らし、各々のかたちに秘められた意味とその美の本質を、達意の文章と選りすぐりの図版によって解き明かした名著。待望久しい往年の好評連載を完全収録。
目次 I 聖母
II 空想の怪獣
III 天使と悪魔
IV 植物
V キリスト
VI 鳥獣
VII 庶民の生活
VIII 抽象の形
IX 謎の顔
X 人像円柱
XI 柱頭の福音書

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