後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔209〕今回も無料で「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」(都美術館)と西洋美術館常設展を堪能しました。

2019年02月23日 | 美術鑑賞
 以前からこのブログで書いていますが、東京都美術館は第3水曜日はシニア料金(65歳以上)で無料で鑑賞できます。もちろん毎月というのではなくて、展覧会会期中ということになります。東京都美術館のサイトには年間のシニアディが明記されていますので、こちらでチェックされるといいと思います。
 先日、待望の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」を観てきました。もちろんシニアディにです。
 このシニアディはすでに数回利用しているので、どのように人の混雑を避けて、満足な鑑賞ができるのか、自分なりの方法が見つかってきました。
シニア世代は膨大な数にのぼる上に、近年、伊藤若冲、曽我蕭白などの「奇想の画家」に対する人気はうなぎ登りです。東京国立博物館で開催された伊藤若冲展はあまりの混雑、待機時間が長く妻の時も私の時も鑑賞を諦めたのでした。人々の熱狂ぶりは同時代の正統派の絵師、円山応挙などを凌ぐほどです。だから当然混雑が予想されます。
 開館は朝の9時半ですので、その45分前に正門に並ぶことが理想です。私の利用する西武池袋線は、この時間はそれほど混んでいませんでした。美術館には、予想を下回る約100人が4列に並んでいました。開館9時半といっても実際は9時20分には入場が始まります。ですから立ちんぼで本を読む時間もわずかでした。50人ほど先に入場して、数分で私たちもそれに続きました。ただし、入場時、私の後ろには100人は超える人が並んでいたことは確かでした。

 さて、展覧会の概要をHPで確認しておきましょう。

■奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
Lineage of Eccentrics: The Miraculous World of Edo Painting
2019年2月9日(土)~4月7日(日)
○みどころ
美術史家・辻惟雄氏(1932-)が、今から約半世紀前の1970年に著した『奇想の系譜』。本展はその著作に基づいた、江戸時代の「奇想の絵画」展の決定版です。『奇想の系譜』で採り上げられたのは、それまで書籍や展覧会でまとまって紹介されたことがなかった、因襲の殻を打ち破った、非日常的な世界に誘われるような絵画の数々でした。
本展では、同書で紹介された、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の作品を厳選したラインナップになっています。
近年の「若冲ブーム」、「江戸絵画ブーム」、ひいては「日本美術ブーム」の実相をご存知の方も、またこの展覧会ではじめて魅力的な作品に出会うことになる方にも、満足いただける内容を目指しました。奇想天外な発想にみちた作品の数々を紹介し、現代の目を通した新たな「奇想の系譜」を発信する本展において、江戸絵画の斬新な魅力をご堪能ください。


 私のお目当てはなんといっても曽我蕭白です。「奇想の画家」がこんなに評判になるはるか以前にこの画家の展覧会を渋谷の松濤美術館で観ているのです。もう10年以上前のことだったと思うのです。小さな美術館で、鑑賞者も少なく、ごく間近で蕭白独り占めといった感じでした。奇怪な人物描写と鮮やかな色彩感覚は一度観たら忘れられませんでした。
 その頃に、私は辻惟雄氏の「奇想の絵画」だけではなく、江戸の絵画に興味を持ち、『日本の美術』(至文堂)のバックナンバー江戸絵画シリーズ全7冊を買いあさったのでした。

 今回、最も興奮を覚えたのは岩佐又兵衛でした。静岡・MOA美術館で観たときはそれほどの感動はなかったのですが、今展覧会では他の絵師より圧倒的に光って私の目に届いてきました。殺人現場を描いたおどろおどろしい場面が喧伝されているのですが、圧倒的な描写力と目に焼き付いてくる色彩に今回は心が震えました。他の絵師に比べても国宝・重要文化財・重要美術品が目白押しなのもうなずけます。ヤン・ファン・エイクなどのフランドル絵画にも共通するような細密画といったら、あまりに突飛な物言いになるでしょうか。出展作品についてはHPで覗けるし印刷もできますのでご覧ください。
 3月20日のシニアディは後半に作品入れ替えがかなりあります。もう1回頑張って行きますか。

 それほどの混雑も感じず、たっぷり1時間以上絵画を堪能した後は、せっかく上野に来たのだから、国立西洋美術館にも立ち寄ることにしました。開館60周年記念で「ル・コルビュジエ」が開かれていましたがこちらはパス。65歳以上無料の常設展に足を運びました。常設展にはモネやマネなどの印象派だけでなく、日本で唯一のフェルメール作品が所蔵されているのです。ただし今回は「ル・コルビュジエ」展のため観ることはできませんでしたが。いずれにしてもここは、日本で最大の西洋絵画の殿堂です。人もそう多くはないので、ゆっくり観ることができます。
 今回新しくビデオコーナーができていました。大画面を数人が座れるソファーで取り囲んでいるのです。さらに、この美術館のいいところは、以前に開催された展覧会の図録が2セット閲覧できるのです。机と椅子が用意され、調べ物もできます。そして、かなりドイツ美術に関する展覧会がここで開かれていることも発見できました。アーヘン市ズエルモント=ルートヴィヒ美術館蔵「聖なるかたち 後期ゴシックの木彫と板絵展」1994年、の図録を発見したときは嬉しかったですね。でもこれを特集した「聖女たちとやさしいキリスト教」『芸術新潮』1994年7月号の方が写真がはるかに美しいですね。
 いつものように、手に入れた美術館のチラシを見ながら、ゆったりと駅のレストランで食事をするのは至福の一時でした。

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