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彼女のこんだて帖 ベターホーム出版局 このアイテムの詳細を見る |
天気 あさから春みたい(土曜参観)
角田光代 著 : 彼女のこんだて帖
を、読みました。
興味シンシンだったこの本を、ラッキーな事に
図書館で借りられました。
お料理レシピが載っているというふれこみだったので
角田光代が作り出した、料理のレシピの本だとばかり
思っておりましたら、お料理はベターホームの管轄で
ひとつのお話しに、ひとつの献立がついているという変わった
お料理の本。
先ず最初のお料理は、失恋をしたある女性が
初めて一人で過ごす週末に、淋しくならないように
手間隙かけてつくる、題して“泣きたい夜のフルコース”
ラム肉のステーキ・野菜と生ハムのパルミジャーノサラダ
そら豆のポタージュです。
一話目の主人公の会社の同僚が、二話目の主人公で
次の話しは二話目の主人公のお姉さん。四話目の主人公は
三話目のお姉さんがウットリ見とれたブティックのオーナーで
五話目はそのオーナーの一人息子の彼女が主人公
というように続いてゆきます。
主人公達はそれぞれの感情や生活の中で、作り食べます。
それぞれの物語はとても角田作品らしくて面白く
でてくるお料理は、どれも旨そうっ!
しかも、材料と作り方が書いてあるので
半分も読めば、お腹がギュルギュルで仕方ありません。
とても面白い本ですが、ダイエット中の方には禁読書です。
物語はもちろん楽しめましたが、実はこの本を読んで
一番グッと来たのは、作者のあとがきにかえてでした。
たいていあとがきには、作者の思いが綴ってあって
いつも感動するのですが、この本のあとがきには
うっかりウルウルしてしまいました。
おふくろのあじ、というものを私は信じていない。
という文章からはじまる、このあとがきにかえては
料理はあくまで作る事よりも、食べる事の方が大切と
いう視点を貫きながらも、子ども時代の食体験をとおして
母の姿を語り始めます。
一切の手抜きを、料理に対して行わなかった母は、
作者を台所という聖域に近づけることなく、
ゆえに作者は豚肉と牛肉の区別がつかない女に
成長してゆきます。
現在の作者はたいそうな料理好きですが
それは作者が成人して、一人暮らしを始めてから
料理本を見ながら覚えたものでした。
自分で幾種類もの料理を作るようになり
母との別れを体験し、料理とは単なる食べ物ではなく
「たまたま私の母であった女性と、
たまたま娘であった私との
関係の一つだと思っている。」
そして、これから他の人とも
そういう何かであればいいなと思う。と最後にありました。
とても端的な表現ですが、シンプルな言葉に母に対する
感謝や愛情を感じました。