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金魚生活 楊 逸 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る |
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楊逸 著 : 金魚生活
を、読みました。
中国東北部にあるレストランに勤める玉玲は、
自分でも自覚があるほど美しく、50歳の年齢には見えない女性。
長年務めているレストランの、客寄せの目玉である金魚の世話を
押し付けられて始めたものの、次第に金魚への愛情を持ち
細かな世話を続けていた。
夫に先立たれたのは10年前で、一人娘は日本への留学と
日本での就職を果たし、今は亡くなった夫の友人だった
さえない周琳と同棲生活をしている。
そんな折、日本で出産をする娘の産後看病に出かける玉玲。
娘に会える、孫を見れると喜んで出かけた日本で
思いがけない体験をする玉玲の姿を描いた作品。
芥川賞を受賞した作家ですが、名前が示すとおり著者は中国の方で
華僑の末裔というわけでもなく、日本語は完全に第二外国語として
成長してきたかたです。
にも関わらず、こんなに繊細な文章を日本語で表わし
著名な文学賞を受賞するって、どんだけ天才なんでしょ!!
作文2枚書くのだって、必死の思いの日本人がどれだけいることでしょう。
ほんとうに頭がいい人っているんですね。
中国で心血を注ぐ思いで、大切に世話していた金魚たち。
ちなみに、金魚は中国語で【ジンユ】また、お金持ちの意を表す
金余もまた【ジンユ】と発音するため、商売繁盛の縁起担ぎで
中国では金魚が珍重されるそうです。
その金魚たちと、日本に来てからの、いや、夫を失ってからの
玉玲の姿が重なります。
ゆらゆらと漂う、か弱い金魚たち。
しかし水槽の中で、精一杯生きている鮮やかな小さな魚。
どんなに遠くに来たつもりでも、人の一生はお釈迦様の手のひらの中。
人それぞれ、金魚鉢の中でもがき苦しみ、それでも笑って生きてゆくのですね。
この本の装丁・・・もちろん蜷川実花です。素晴らしい!