妹とバスに乗って | |
寺門 孝之,幾島 幸子 | |
早川書房 |
天気 一日暑かったけど夕方はひどい湿気
レイチェル・サイモン 著 : 妹とバスに乗って
を、読みました。
主人公レイチェルと一つ違いの妹ベスは、知的障害を持つ38歳。
自分にできる仕事もせずに、毎日路線バスを乗り継いで
市内をぐるぐる回る日々。
家族を代表して、レイチェルは一年間、一か月に数回の割合で
一緒にバスに乗ることを、決意する。
わがままで、度を過ぎた自己中心的な妹との
心の葛藤と共に、二人とその兄弟と家族の
暗いファミリーヒストリーと、レイチェルの心の傷が
語られてゆくという、実話。
たとえばこれが、小説だとすれば、
まあ、どうってことない物語なのかも知れませんが、
こんな出来事が、実話なんてと驚きの物語です。
妹ベスが毎日乗っているバスの運転手たちは、
6人に一人が、天使のように優しい人たちで、
アクの強いベスと根気強く付き合い、
助けてくれさえするのです。
達観した運転手たちの、高い精神性に感心します。
この物語は、温かい運転手たちとの心の交流のほか、
知的障害を抱える妹と、主人公の心の葛藤も描いています。
知的障害と一言に行っても、いろいろな段階に分かれること、
知能指数が高い、自立が可能なレベルでも
ある一定の能力が、欠落していて
他者の協力が必要な人が多いなど、
私の知らなかったことを、いろいろと教えてくれた本でした。
愛する妹だけど、欠落した能力からなる
自己中心的な言動や、態度に
苦悩する主人公や家族の姿が、
強く心に残りました。