![]() |
おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸 |
楊 逸 | |
文藝春秋 |
楊逸 著 : おいしい中国「酸甜苦辣」の大陸
を、読みました。
2010年1月から4月に、東京新聞に連載されたコラム。
まえがきと、あとがきの他に、著者の幼いころから
大学生までの20数年間の思い出が、
食に絡めて44のコラムが収められている。
本場中国のおいしいお料理のお話が詰まった本と、
勝手に思い込んで、はりきって借りてきた食いしん坊ベリーですが、
タイトル「おいしい中国」という割には、
満漢全席とは対極の、40年前の貧しい貧しい庶民の食卓を
回想する本でした。
私とたった4歳しか違わない、
年上の著者ですが、家族との下放体験があり、
その前後も、今の中国では考えられない苦難の生活がありました。
改革開放前の、食糧の定量供給という制度を覚えている
最後の世代に当たるようで、その頃の苦労を複雑な気持ちで
振り返っていました。
美食を求めるときりがないのでしょうが、
心に残るおいしい食べ物は、すべてが手に張る現代のものではなく、
何もなかった頃に食べた、素朴な食べ物のようでした。
つらい過去が、いつしかおいしいスパイスになるなんて、
著者は、素晴らしい人生を生きているんだなと、思いました。