グラジオラス

買い物途中のお宅で、グラジオラスの花を見つけた。
小さな鉢に植えられていて、倒れ予防にひもがかかっている。

なんだかとっても久しぶりにこの花を見たように思う。

父は庭いじりの好きな人だった。
高価なものはなかったが、折々の草花、花木を育てていた。
幸いにも社宅にはいつだって広い庭がついていたし、今はもう住む人もいない三重の実家も、ぐるりと庭が家を取り巻いている。

母はもともとあまり花に興味がなかったのか、日焼けや虫を気にしたのか、私の思い出の中では、庭に下りて草をひいたり肥料をやったり、いろんな花を植えたりするのはいつも父の仕事。

それでも思いつきであちこちにいろんなものを植えるものだから、よく言えば、ターシャおばちゃまのイングリッシュ・ガーデンのように、いろんな花が咲き乱れているし、悪く言えば、収拾のつかない計画性のない庭（笑）

グラジオラスは育てやすかったのか、父の好きな花だったのか、どこに引っ越しても夏になるとたくさん咲いていた。　父はグラちゃん、なんて呼んでいた。
ぐらじょ～らす、というように私は発音していたものだけど、グラジオラス、というのが本名なのかしら（笑）　ちょっと、ラテンっぽい。

グラジオラスと、立ち葵と、ひょろひょろの向日葵。見てるだけで暑げな真っ赤やオレンジのカンナも今頃咲いていたっけ。

朝ごはんの支度で母は庭におらず、花と言えば薔薇とチューリップぐらいしか分からない兄はまだ布団のなかだったのか。
日曜になると父の後から庭に下りて花の名前を訊ねたものだった。

よそ様の庭に見えるグラジオラスで、ちょっと泣きそうな思いをするのは、来月が父の誕生日のある月だからかな？
生きていたらいくつになったのだろう。。。