言い伝え

『朝右、夜左、良い事ござらん』あさみぎ、よひだり、よいことござらん。

これは、母から聞いた言葉。
朝に右耳、夜に左耳が痒い時は良い事がない。という事らしい。

例えば『夜に爪を切ると親の死に目に会えない』ということわざ。
これはまだ電気のなかった時代に、夜の暗い所で爪を切ると深爪したり思わぬ怪我をすることがあるかもしれないので、明るい時に切りなさい、という意味だとわかるけれど、この朝右、夜左・・・はどう解釈していいものやらよく分からない。

ところが、解釈もよく分からないのに、この・・・小学生で聞いた言葉は私の中に住みついてしまった。
で、何気に朝、右耳が痒かったりすると・・・今日はなんか悪い事が起きるかもしれない・・・と無意識に考えたりする。
多分、悪い事が起きるんじゃなく、良い事がない、というだけのことで、まぁそれだけ心して落ち着いて過ごしなさい、という意味なんだろうと思うけれど、ずっと支配されてきたような部分がある。

学生時代の試験の朝などに右耳が痒かったりするとどんよりしたものだったし、寝る時に左耳が痒いと地震でも来る？なぁんて、ちょっと心配したりもする。

そんな私は、この言葉を息子には伝えていない。
例えば、朝に耳が痒い、なんて言い出した日には言いたくてたまらないのだけれど（笑）　中学受験をはじめとして、定期試験だの大学入試・入社試験・車の運転免許試験の時など・・・息子もこれまでも、これからも試験や試験以外でも何かここぞ！という時が来ると思う。
そんな時に、ふっと私の言ってた言葉を思い出したりすると、それだけで今朝は右耳が痒かったからうまくいかへんかも知れん・・・なんて思われても困るから。

私は、母から聞いたこの言葉で呪縛されてしまったわけだから。

こうして、本当の意味も分からぬまま、私の代で伝わらなくなった言葉も出てきた、という事。
うふふ、これを知らなかった人がいたら・・・ごめんなさい。