もし、あなたなら ～６つの視線

IF YOU WERE ME／０３年／韓国／１１０分／劇場公開
監督：イム・スルレ、チョン・ジェウン、ヨ・ギュンドン、パク・チンピョ、パク・クァンス、パク・チャヌク
出演：イ・ソリ、ペク・チョンハク、キム・ムンジュ、キム・セドン、チ・ジニ、チャンドラ・クマリ・グルン
＜ストーリー＞
韓国の現状を鋭い視点で描いたオムニバス。教師に馬鹿にされた太めの女子高生が危険な決断をする「彼女の重さ」、おねしょの罰でおつかい中の少年が、性犯罪者の家に迷い込む「その男、事情あり」、ある障害者が横断歩道のない交差点を渡ろうとする「大陸横断」ほか全６編で構成する。
＜感想＞
面白い作品じゃないな。
この映画を観れば韓国事情が全て分かる、教科書的な作品です。

整形大国で有名な韓国ですが、一話目の「彼女の重さ」を観てしまうと、韓国という国は本当に変わっているな、と。
授業で美の大切さを教え、生徒たちは我先にと、整形したりダイエットしたり。
抜き打ちの体重検査なんてものもあり、これじゃあ完全に人権侵害ですよ。
また、就職面接では、美人最優先だとか。
メガネをかけていたり、体重が５０キロ以上あると即ＮＧ。
こんな状況じゃ、そりゃあ子女が整形に走るわけです。

また第四話「神秘的な英語の国」では、狂信的に英語教育を受けさせる親が、発音を良くさせる為に、子供に強制的に舌の去勢を行う。
この時の手術シーンは下手なホラーを見せられるよりグロテスクで直視出来ません。そこまでして、英語を喋らせたいのか？ここでも子供の人権無視です。

最終話の「N.E.P.A.L. 平和と愛は終わらない」はパク・チャヌクがドキュメンタリー・タッチで異国の人が受ける差別を克明に描いています。
ここで面白かった（笑っちゃいけないのだろうが）のが、ネパール人の発音が、精神病患者の喋りと似ているというだけで、警察に保護されたネパール女性が強引に精神病院に入れられてしまう。
片言の韓国語で話す彼女の言い分は完全無視され、彼女は６年間もタライ回しに。
韓国人が他国の人に抱く差別と偏見をユーモアを交えて描いた、ちょっとシュールな作品でした。

この映画でもまた、人権と差別というものを深く考えされた一本でした。

オフィシャル・サイト（日本語）

評価：★★☆
０８／０６／２２ＤＶＤ鑑賞
パク・チャヌク　社会派ドラマ　人権　人種差別　障害者　整形　韓国人権委員会　ＤＶＤ旧作

コースト・ガード

COAST GUARD　海岸線／０１年／韓国／９４分／劇場公開
監督：キム・ギドク
出演：チャン・ドンゴン、キム・ジョンハク、パク・チア、ユ・ヘジン

＜ストーリー＞
軍事境界線近くの海岸線を守る韓国海兵隊員が誤って民間人を射殺。罪悪感から精神を病んだ彼は、除隊後も駐屯地を潜入し隊に波紋を起こす。
＜感想＞
昨日観たギドク作品『うつせみ』とはガラッと変わり、セリフも多く、またそれなりの予算もかけている。
テーマは暴力と破滅。
誤射で民間人を殺してしまった上等兵と、目の前で恋人を殺されてしまった（無数の銃弾を体に浴び、最後は手榴弾で人体粉々）女性のその後を生々しく描いている。

ひとつの過ちでこうも人間は変わってしまうのですね。
パラッパ～になってしまった女性と、後悔の念から次第に狂気に走る上等兵。
人生を変えられた二人の姿を生々しく描きながらも、韓国の軍隊内部の暗部にも焦点をあてています。
パラッパーになったのを口実に、彼女を犯しまくる兵士たち。
そして彼女が妊娠したと知った時、彼らは人間として最悪の行為に及ぶ。

監督はすべての人間の愚かさと醜さを、我々観客に伝えたかったのかもしれない。
何が良くて、何が悪いのか。
真剣に考えされるテーマ性が、この映画の中には深く切り込まれています。

過酷な訓練の中、耐えて耐えて、そして民間人にとっての象徴的な存在になる事を願う兵士たち。
しかし、本当の心情は蝕まれている事が現状なのだ。
長年の兵役を経験したことのあるギドクだからこそ、本作ような兵士たちの内面を克明に描くことが出来たのだろう。

兵士たちは常に何かに脅え、何かと戦っている。
それは一体何なのか？
この映画を観れば、答えは自然と見えてくる。
そして、観終わった後は何とも憂鬱な気分にさせられるのでした。

情報（日本語）

評価：★★★☆
０８／０６／２２ＤＶＤ鑑賞
キム・ギドク　戦争サスペンス　チャン・ドンゴン　精神異常　スパイ　狂気　殺戮　放尿　レイプ　過酷訓練　R-15　ＤＶＤ旧作