<作文>
1956年を振り返って
(T・T)
「1年の計は元旦にあり」とよく言われるが、去年も何の意義もない年であった様な気がする。人間は誰でも過ちというものはある。その過ちを振り返り、それを正すか、どうかによって、その人間の善悪が決まると云う。私たちが過ごしてきた1年の間にも、新しい社会が築かれている。
さて、その去年はどうであったかを反省してみよう。人に対して笑われる様な事はなかったか。学校で決められた事は良く守られたか。勉強はしっかりしたか。自分で反省する事は実に多い。去年はあまり意義のない年であった様な気がする。
こういう事は、毎年思う事であるが、どうして守られないのであろうか。やはり、一日一日が、ただむやみに過ごすからであろう。もう一度良く考え直して、これからが楽しい、有意義である様にしなければならない。
今年こそは、悔いのない、そしてむだのない一日一日を過ごして、立派な新しい歴史が築かれる様にしたいものである。
☆ ☆
有意義な一日一日を過ごしているかと、14歳の君には言われたくないな~という気がするが、実際のところ耳が痛い。
いつか、テレビ番組で、「サイナラ、サイナラ」で知られた映画評論家の淀川長冶氏が、一日を終えてベッドに入った時、今日一日、みんなと仲良くできたかな?と、自分に問いながら眠りにつくのを習慣としていたと言っていたが、これ一つとってみても実に難しいことだ。
しかし、日々、反省しながら、それを次に生かしていくことは大事なことだ。初心に帰り、改めて心したい。
ところで、1956年がどんな時代だったかについては、この連載の初めに書いたが、その前後の年はどんな社会だったのか、ちょっと視野を広げて覗いてみたい。
☆1955年(昭和30年)の10大ニュース
①「紫運丸」沈没事件
②保守合同と第3次鳩山内閣成立
③砂川基地闘争
④総選挙と第2次鳩山内閣成立
⑤津海岸の中学女生徒水死事件
⑥日ソ交渉
⑦横浜聖母の園の焼死事件
⑧全国的大豊作
⑨森永粉乳中毒事件
⑩新潟の大火
そして、この頃、電化製品が普及し始めて、「三種の神器」と呼ばれたのが電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビだった。また、ソニーがトランジスタ・ラジオの発売を始めた。
政治的には、自由民主党が結成され、左右両派社会党が統一されたのもこの年。さらに、統一地方選挙で創価学会が政界に進出した。
☆1957年(昭和32年)の10大ニュース
①ジラード事件
②原子炉に太陽の火
③南極基地に日章旗
④石橋首相引退と岸内閣成立
⑤国連安保非常任理事国に当選
⑥宇宙時代への国民の関心
⑦九州大水害
⑧流感猛威ふるう
⑨ネール首相来日
⑩瀬戸内海で「第五北川丸」沈没
ジラード事件というのは、記憶になかったが、群馬県の相馬村の米軍キャンプ・ウェア演習場で空薬莢を拾っていた農婦が米陸軍のウィリアム・S・ジラードに銃で撃たれ死亡した事件だという。
この年は、5,000円札、百円硬貨が登場し、ロカビリーが流行り、フランク永井の「有楽町で逢いましょう」が大ヒットした。そう言えば、高校の修学旅行で有楽町へ行ってみたが、確かに、あの曲がかかっていたことを覚えている。
「美徳のよろめき」(三島由紀夫) 「晩歌」(原田康子)が出版され、世界のトップニュースは、ソ連の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功したことだった。
(以上、読売新聞社 「10大ニュースに見る戦後の40年」から)