中学受験で疲弊しないために、親子で楽しむ受験になるヒントを綴っていきたいと思います。
中学受験で子どもと普通に幸せになる方法

受験間際に母親が陥る落とし穴
以前、塾で6年生のお母さんを対象にした母親教室の講座を持っていたことがあります。最初はお母さんが子どもの勉強の面倒をみるのに役にたつ方がよいだろうということで、子どもが学習する内容を簡単にまとめて説明していました。しかし6年生も後半になってくると、なかなか内容が難しくなってくるので、どちらかといえば受験に対する準備や親としての心構えをお話する機会の方がだんだん多くなってきました。これはこれで大変人気のあった講座なのですが、受験直前の12月に、私がいつもお話していたことがあります。
受験間近になってくると、お母さんは大変不安になってきます。その一番が
「落ちたらどうしよう」
です。不安というのは、どうしてもおこるものですし、これはある意味仕方がないことなのですが、その結果としてお母さんがじたばた始めると、あまり子どもに良い影響を与えません。突然、家庭教師をやとってみたり、あるいはさらに塾を探してみたり、占いにこってしまったり、神様参りを始めたり。お母さんたち同士の話が、またどんどん不安をかきたてるらしく、いろいろ動いている話を聞くと、自分もじっとしてはいられなくなるようです。
ところが、こういうお母さんの姿を見て、子どもたちはどう思うでしょうか。
「お母さんは心配している。そうか、僕は危ないんだ」
という感じをもってしまうと、これは大変です。中学受験の場合、子どもはただでさえ、プレッシャーがかかります。今までよくできた子どもがミスを繰り返したり、覚えていたはずのことが不確かになったり。これはこれでちゃんと対策を組めば、直るものなのですが、でも子どものそういう姿を見て、さらに慌ててしまうお母さんがいるものです。またお母さんのそういう不安が、かえって子どもたちをそういう状況に追い込んでしまう場合もあるでしょう。
不安は最後まで残ります。なぜかといえば、不安は結果がでるまで解消されないからです。土台、子どものすることですから、いろいろな失敗はつきものです。それをひとつひとつ心配していたら、身が持ちません。
受験直前に、子どもたちが不安に陥った時、私はよく子どもたちを呼んで話していました。
「最近、調子はどう?」
「うん。ミスが多いんだよね。後からやると、できるんだけど」
「どうしてだと思う?」
「あわてちゃうのかな。よく、わかんないけど」
「できるか、不安なんじゃない?」
「それは、いつもそうだけど」
「でもね、君にはもう十分力はついてるんだよ」
「え、そうなの?」
「そうさ。だって後からはほとんどできるんだろ」
「うん」
「後からできるんだったら、解く力はついてるんだ。君の頭の中はもう、準備ができているわけだね」
「うん」
「でも、それが最初から出てこない。なぜかな?」
「・・・・・・」
「自信がないんだな」
「え、ああ、自信ね。自信はないかもしれない」
「合格したいね」
「そりゃ、そうさ」
「合格するのは、君の力だ」
「うん」
「だから、後は心の力を使わなきゃいけない」
「心の力?」
「そう、合格するためには2つの力が必要なんだ。頭の力と心の力。頭の力は解く力だね。これは問題が解けるかどうかという力だけど、君の頭の準備はできている。だって、後からはほとんどの問題は解けるんだからね」
「うん」
「そうすると、その頭の力を最初から出せれば合格できるわけだ」
「うまくいくときだってあるよ」
「そうだ。今までだってたくさん良い点はとってきた。そのときは、どうしてできたのかな?」
「運がよかったんだ」
「ハハハ、運が良かったのか。それは違うな」
「え、そうなの」
「君は何も心配してなかったんだ。問題を解くということに集中していた。だから心の力がストレートに君の頭の力を引っ張り出したんだね。だけど、入学試験は何点とるかよりも、合格点をとれるかどうかにかかってるね。50点足りなくても1点足りなくても不合格は不合格だ。そこで心配が起こる。その分、余分なことを考えてしまって、問題に集中できなくなる。できなかったらどうしようって心配がどこかにあるんだよ」
「うん」
「でもね、考えてごらん。その心配はいつなくなると思う?」
「え?」
「結果を見るまでいつでも心配だ。そうじゃないかい?」
「うん。そうだね」
「落ちたらどうしようという心配はだから、試験の結果が出るまでなくならないんだ。だからさ、心配してもしょうがないと思わない?」
「それはそうだけど」
「落ちたら、くやしいよね。でもね、落ちることははずかしいことではないんだ」
「でも、いやじゃない」
「そりゃ、いやさ。でも恥ずかしいことではないんだから、全力を尽くせばそれでいいんじゃない?結果は自然とついてくるわけだから。君の頭の力がフルにでてくれば、それで十分なんだよ」
「じゃ、どうすればいいの?」
「簡単な問題を解いてみよう。この問題集で丸をつけた問題をやってごらん。これは決して難しくない。今の力からすれば、十分にできる問題だ。でも心の力が変に作用すると、できないかもしれない。それは頭の問題ではなくて、心の問題だ。それを君が意識すればいいんだ。それだけでいい。後はとにかく、ていねいに、きちんと式や計算を書けばいい。やったら丸をつけて、もってきてごらん」
「わかった。やってくるね」
こうやって、何回かやりとりをします。最初は70点くらいかもしれませんが、そのときは
「70点か。合格だね」
「え、でも5つも間違えたよ」
「どんな試験でも70点取れれば合格するさ。この5つはどうして間違えたか、わかった?」
「うん。計算ミスと問題の読み違いだった」
「じゃ、次はそれに気をつけて、やってみよう。計算はその場で見直すこと。問題の条件にはアンダーラインをつけること。そして答えが出たなと思ったら、そこでもう一度問題を見直すこと。この3つを守って、次の問題をやってごらん」
こういって次の問題を渡します。だいたい4~5回繰り返すと、ほとんど満点に近づいてきます。
「ほら、できるじゃない」
「そうだね」
「だから頭の力はできてるんだ。そして心の力もだいぶよくなってきた」
「そう?」
「そうさ。自信はね。どういう意味だかわかるだろう?読んだ字の通りなんだよ」
「え、なに?」
「自分を信じるってことさ。自分はできると思っていれば、いいんだ。できなかったらどうしようなんて考えないんだ。君は今まで勉強したし、頭の中の準備はできてるんだ。あとは力を出すだけさ」
「わかった」
子どもたちの顔が明るくなったらしめたものです。だいたい、スランプといわれるものは、自意識が過剰になって今までできたことができなくなるのですから、できていたよ!と教えてあげれば良いのです。
ところが、こういう過程でまたお母さんが不安になってくると、うまくいかなくなります。相変わらず、お母さんが心配で子どもたちにいろいろなことを言うと、それがまた子どもの心を萎縮させてしまうのです。
ですから、私は母親教室ではこうお話していました。
「ここまでくると、いてもたってもいられないという感じをお持ちになるかもしれませんね。私に何かできることはないだろうか?という気持ちがたくさんおありになるでしょう。この時期、お母さんにしていただきたいことは、2つあります。ひとつは健康管理。そしてもうひとつは、どーんと構えていただくことです」
「お母さんが心配すれば、子どもはもっと心配します。お母さんが子どもたちに一番近いように、子どもたちもお母さんに一番近いのです。お母さんが心配すれば、僕は危ないかもしれないと思うようになります。だから心配してはいけないのです。土台、不安というものは試験の結果が出るまでは、解消しません。でも、どうして不安なのでしょうか。落ちたらどうしよう?ということが漠然とのしかかっているのかもしれませんね。でも、こればかりは、子どものために、追い払わなければなりません。だから
「受験くらいで子どもの人生は決まらない」
とまず、思ってください。私はいままで、たくさんの子どもたちを送り出してきました。でも受験の成功が人生の成功につながるとは限りません。失敗したことがかえって、その子どもたちの人生にプラスになったことはたくさんあります。また成功が後々失敗の原因になってしまったことも多々あるのです。ですから、今回の受験は暖かく見守ってあげましょう。子どもたちは初めて、自分の力で勝負するのです。
「私の子どもだから、何とかする!」
とそう思っていただきたいのです。ぜひお子さんを信じてあげてください。このことに根拠はいりません。自分の子どもをただ信じればよいのです。そして結果が出たら、その結果を次の子どもの成長に役立てれば良いのです。来年の4月になればお子さんは必ずどこかの中学に通うようになります。これは義務教育ですから、必ずそうなります。そしてその学校にいくことが、あとで振り返ってあの子にはベストだったと思えるようにすればいいのです。そういうようにお母さんに自信があふれてくると、これはまた子どもの自信につながってきます。かえってよい結果がでてくるでしょう。占いにこったり、神様参りをするのではなく、子どもたちが自分の力を思い切り出せるように信じてあげてください」
おもしろいもので、1月も半ばを過ぎると(東京の中学受験は2月です。)お母さんたちもだいぶふっきれてくるようです。
「本当にいい受験をしてもらえればいいと思えるようになりました」と笑うお母さんになれたら、本当にいい結果が出ると思います。
受験間近になってくると、お母さんは大変不安になってきます。その一番が
「落ちたらどうしよう」
です。不安というのは、どうしてもおこるものですし、これはある意味仕方がないことなのですが、その結果としてお母さんがじたばた始めると、あまり子どもに良い影響を与えません。突然、家庭教師をやとってみたり、あるいはさらに塾を探してみたり、占いにこってしまったり、神様参りを始めたり。お母さんたち同士の話が、またどんどん不安をかきたてるらしく、いろいろ動いている話を聞くと、自分もじっとしてはいられなくなるようです。
ところが、こういうお母さんの姿を見て、子どもたちはどう思うでしょうか。
「お母さんは心配している。そうか、僕は危ないんだ」
という感じをもってしまうと、これは大変です。中学受験の場合、子どもはただでさえ、プレッシャーがかかります。今までよくできた子どもがミスを繰り返したり、覚えていたはずのことが不確かになったり。これはこれでちゃんと対策を組めば、直るものなのですが、でも子どものそういう姿を見て、さらに慌ててしまうお母さんがいるものです。またお母さんのそういう不安が、かえって子どもたちをそういう状況に追い込んでしまう場合もあるでしょう。
不安は最後まで残ります。なぜかといえば、不安は結果がでるまで解消されないからです。土台、子どものすることですから、いろいろな失敗はつきものです。それをひとつひとつ心配していたら、身が持ちません。
受験直前に、子どもたちが不安に陥った時、私はよく子どもたちを呼んで話していました。
「最近、調子はどう?」
「うん。ミスが多いんだよね。後からやると、できるんだけど」
「どうしてだと思う?」
「あわてちゃうのかな。よく、わかんないけど」
「できるか、不安なんじゃない?」
「それは、いつもそうだけど」
「でもね、君にはもう十分力はついてるんだよ」
「え、そうなの?」
「そうさ。だって後からはほとんどできるんだろ」
「うん」
「後からできるんだったら、解く力はついてるんだ。君の頭の中はもう、準備ができているわけだね」
「うん」
「でも、それが最初から出てこない。なぜかな?」
「・・・・・・」
「自信がないんだな」
「え、ああ、自信ね。自信はないかもしれない」
「合格したいね」
「そりゃ、そうさ」
「合格するのは、君の力だ」
「うん」
「だから、後は心の力を使わなきゃいけない」
「心の力?」
「そう、合格するためには2つの力が必要なんだ。頭の力と心の力。頭の力は解く力だね。これは問題が解けるかどうかという力だけど、君の頭の準備はできている。だって、後からはほとんどの問題は解けるんだからね」
「うん」
「そうすると、その頭の力を最初から出せれば合格できるわけだ」
「うまくいくときだってあるよ」
「そうだ。今までだってたくさん良い点はとってきた。そのときは、どうしてできたのかな?」
「運がよかったんだ」
「ハハハ、運が良かったのか。それは違うな」
「え、そうなの」
「君は何も心配してなかったんだ。問題を解くということに集中していた。だから心の力がストレートに君の頭の力を引っ張り出したんだね。だけど、入学試験は何点とるかよりも、合格点をとれるかどうかにかかってるね。50点足りなくても1点足りなくても不合格は不合格だ。そこで心配が起こる。その分、余分なことを考えてしまって、問題に集中できなくなる。できなかったらどうしようって心配がどこかにあるんだよ」
「うん」
「でもね、考えてごらん。その心配はいつなくなると思う?」
「え?」
「結果を見るまでいつでも心配だ。そうじゃないかい?」
「うん。そうだね」
「落ちたらどうしようという心配はだから、試験の結果が出るまでなくならないんだ。だからさ、心配してもしょうがないと思わない?」
「それはそうだけど」
「落ちたら、くやしいよね。でもね、落ちることははずかしいことではないんだ」
「でも、いやじゃない」
「そりゃ、いやさ。でも恥ずかしいことではないんだから、全力を尽くせばそれでいいんじゃない?結果は自然とついてくるわけだから。君の頭の力がフルにでてくれば、それで十分なんだよ」
「じゃ、どうすればいいの?」
「簡単な問題を解いてみよう。この問題集で丸をつけた問題をやってごらん。これは決して難しくない。今の力からすれば、十分にできる問題だ。でも心の力が変に作用すると、できないかもしれない。それは頭の問題ではなくて、心の問題だ。それを君が意識すればいいんだ。それだけでいい。後はとにかく、ていねいに、きちんと式や計算を書けばいい。やったら丸をつけて、もってきてごらん」
「わかった。やってくるね」
こうやって、何回かやりとりをします。最初は70点くらいかもしれませんが、そのときは
「70点か。合格だね」
「え、でも5つも間違えたよ」
「どんな試験でも70点取れれば合格するさ。この5つはどうして間違えたか、わかった?」
「うん。計算ミスと問題の読み違いだった」
「じゃ、次はそれに気をつけて、やってみよう。計算はその場で見直すこと。問題の条件にはアンダーラインをつけること。そして答えが出たなと思ったら、そこでもう一度問題を見直すこと。この3つを守って、次の問題をやってごらん」
こういって次の問題を渡します。だいたい4~5回繰り返すと、ほとんど満点に近づいてきます。
「ほら、できるじゃない」
「そうだね」
「だから頭の力はできてるんだ。そして心の力もだいぶよくなってきた」
「そう?」
「そうさ。自信はね。どういう意味だかわかるだろう?読んだ字の通りなんだよ」
「え、なに?」
「自分を信じるってことさ。自分はできると思っていれば、いいんだ。できなかったらどうしようなんて考えないんだ。君は今まで勉強したし、頭の中の準備はできてるんだ。あとは力を出すだけさ」
「わかった」
子どもたちの顔が明るくなったらしめたものです。だいたい、スランプといわれるものは、自意識が過剰になって今までできたことができなくなるのですから、できていたよ!と教えてあげれば良いのです。
ところが、こういう過程でまたお母さんが不安になってくると、うまくいかなくなります。相変わらず、お母さんが心配で子どもたちにいろいろなことを言うと、それがまた子どもの心を萎縮させてしまうのです。
ですから、私は母親教室ではこうお話していました。
「ここまでくると、いてもたってもいられないという感じをお持ちになるかもしれませんね。私に何かできることはないだろうか?という気持ちがたくさんおありになるでしょう。この時期、お母さんにしていただきたいことは、2つあります。ひとつは健康管理。そしてもうひとつは、どーんと構えていただくことです」
「お母さんが心配すれば、子どもはもっと心配します。お母さんが子どもたちに一番近いように、子どもたちもお母さんに一番近いのです。お母さんが心配すれば、僕は危ないかもしれないと思うようになります。だから心配してはいけないのです。土台、不安というものは試験の結果が出るまでは、解消しません。でも、どうして不安なのでしょうか。落ちたらどうしよう?ということが漠然とのしかかっているのかもしれませんね。でも、こればかりは、子どものために、追い払わなければなりません。だから
「受験くらいで子どもの人生は決まらない」
とまず、思ってください。私はいままで、たくさんの子どもたちを送り出してきました。でも受験の成功が人生の成功につながるとは限りません。失敗したことがかえって、その子どもたちの人生にプラスになったことはたくさんあります。また成功が後々失敗の原因になってしまったことも多々あるのです。ですから、今回の受験は暖かく見守ってあげましょう。子どもたちは初めて、自分の力で勝負するのです。
「私の子どもだから、何とかする!」
とそう思っていただきたいのです。ぜひお子さんを信じてあげてください。このことに根拠はいりません。自分の子どもをただ信じればよいのです。そして結果が出たら、その結果を次の子どもの成長に役立てれば良いのです。来年の4月になればお子さんは必ずどこかの中学に通うようになります。これは義務教育ですから、必ずそうなります。そしてその学校にいくことが、あとで振り返ってあの子にはベストだったと思えるようにすればいいのです。そういうようにお母さんに自信があふれてくると、これはまた子どもの自信につながってきます。かえってよい結果がでてくるでしょう。占いにこったり、神様参りをするのではなく、子どもたちが自分の力を思い切り出せるように信じてあげてください」
おもしろいもので、1月も半ばを過ぎると(東京の中学受験は2月です。)お母さんたちもだいぶふっきれてくるようです。
「本当にいい受験をしてもらえればいいと思えるようになりました」と笑うお母さんになれたら、本当にいい結果が出ると思います。
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