さてと・・・A爺さんとマムシの話題だが、あまり勿体ぶるのも何なんで、そろそろこの辺で、本題に入るが宜しいか?
A爺さんは、田圃へと向かう途中度々オイラの所に立ち寄り「頑張っているない」とか「無理するない」とか、何かと声をかけては立ち話をしていく。
年齢を感じさせない程元気とはいえ、そこはホレ、高齢者の特徴でもあるか、立ち話は一昔も二昔も前の同じ話題を何度となく拝聴することになるが・・・
「うちの親戚からお宅の近所へ嫁いだあの○○さんを知ってるかい?」とか、「戦争中、俺がいた部隊でお宅の近所の○○さんと一緒でない」などと、
時代錯誤ともいえる話題の繰り返しには少々閉口するが、まぁ、そこは、爺さん孝行だと思って「ヘイヘイ、そうですかのぅ」と聞き流すことにしている。
そんなある日のこと、偶然というか必然というか、話題はA爺さんの昔話を織り交ぜつつ、先日オイラが退治したマムシの話へと移行するのであった。
正真正銘「赤マムシ」

A爺さんは、ここ数年、この近辺でマムシを少なくとも5~6匹は退治したとかで、何れも草刈中のことで「草刈機で切っちまえばマムシなど屁でもねぇ」と笑う。
「そのマムシは赤か?黒か?」と聞かれたから、「黒っぽかった」と答えると、「そりゃメスだな」と言い、A爺さんによると、珍重される赤マムシはオスであるそうな。
少し前、A爺さんはその貴重な赤マムシと遭遇したそうで、「草刈機で切っちまったからなぁ」と後悔している様子だが、A爺さんにしても素手でマムシひっ捕まえるのは苦手らしい。
そのA爺さんが、ヘビに纏わる興味深い話をしてくれた。「ない(ねぇ)、マムシとシマヘビが戦ったらどっちが強いか知ってるかい?」と。
「そりゃ、まぁ、普通、マムシの方が強いと思いますがのぅ」
「それが、オメさん(君・貴方)、シマヘビの方が強いって話だ」
「へぇえ、そういうもんですかのぅ」
「よく聞いたいよ。シマヘビの対側には縞が4本あってない、マムシを1匹飲むとその縞が1本消えるってわい」
「ヘビがヘビを飲む?・・・気色悪いですなぁ」
「あぁ、シマヘビがマムシを飲み、それがオメさん・・・」と言って間を置き、「4匹飲み、縞が全部消えたシマヘビは白蛇になるって話だ」と仰る。
「まぁ、マムシを4匹も飲み込むシマヘビなんぞ、そう滅多にはいないそうだが・・・」と笑うと「これ、ホントの話だで」と真顔で締めくくった。
「A爺さんとマムシ」のお話は、これにて完結・・・おちまい。