「親分、てぇへんだ!てぇへんだ!!」
「どした?ハチ、そんなに慌てふためいて」
「そ、そ、それが・・・あわわわわ・・・」
「まぁ落ち着け!幽霊にでも出くわしたか?」
「そじゃありませんや、と、とにかく、こっちに来て見てくだせえ」
「お〜っ!こりゃぁオメェ、お尋ね者のコウタケじゃぁねぇか!」
「でかしたぞ、ハチ! 早くビクを持って来てこ奴等をしょっ引け!」
「でへへへ・・・お褒めを頂き恐縮でやんす、が、生憎こいつ等を入れるビクが無ぇんでげす」
「ビクが無ぇだとぉ?確かオメェ、出がけに大八車にビクを積んでたじゃねぇか」
「それがですね、親分がしょっ引いた下手人どもで満杯で使えないんでやんす」
「そんな雑魚ども、十把ひとからげで大八車の荷台にでもぶちまけて置け!」
「こりゃ1貫目位はあるか?」
「さてと、こいつの天ぷらは実に美味じゃから、半分お奉行に差し上げるとすっか、ハチ、面倒でも届けてくれんか」
「そうじゃ、最近キックバックがどうしたこうしたと世間がウルさいからのう、そぅっとお届けするんじゃぞ、よいなハチ」
「それからのぅ、今晩こいつでいっぺぇ飲るから、届け物の帰り際、ちょいと酒屋に寄って一升買って来てくれ」